2 あり得ない事
リディアの魔属性判定があったその翌日、大神殿の紋章で封された手紙がサンダルウッド公爵邸に届けられた。
封筒に書いてあった宛先人は「リディア・サンダルウッド・ハレス様」だった。
これを見た公爵は首を傾げながら娘にその手紙を渡したのだった。
「神殿が用済みの幼き公爵令嬢に何用だろうか?」
そう1人誰もいない部屋で言葉を漏らし考えていた頃、リディアは近くにあった短剣でその封を目を輝かせて切っていた。
「司祭殿から私に手紙だなんて、私に会いたくなったのかしら?」
なんて言葉を弾ませながら浮き足だった気持ちで取り出した手紙の内容はこうだった。
ー「リディア様へ、先日は大神殿にお越し頂きありがとうございました。実はリディア様が受けられたのは『魔属性判定のみ』になっておりまして本当はそれとは別に『魔力量判定』と言うものがあるのです。ですが、私共が慌てていたせいでその事をすっかり忘れていました。大変なご無礼があった事をここにお詫び申し上げ上げます。付きましては本日中に再度大神殿までお越しただ来ますようお願いします。皇室から『魔属性判定』と『魔力量判定』をした者の記録は直ちに報告するよう言いつかっております故、何卒お願いします。」ー
「魔力、量?」
リディアが魔力とは何だろうか?食べられる者であればそれは美味しいのだろうか?そして、それには量というものが存在するのかという事を考え込んでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「リディア?司祭から一体何のお話だったの?」
「あっ、お母様!なんか『魔力量判定』?って言うものをしにもう一度大神殿に来て欲しいって書いてあったの!『魔力量』ってなぁに??」
「あら、確かにそんな儀式もあったわね。」
「リディア。『魔力』は決して食べるものではないぞ。だが、それが大きい程その人の武器になる。」
「あら。貴方、いつからそこにいたんですか?」
「お前がリディアに声をかけたあたりからだ。そういう趣旨の手紙を貰ったのであれば今すぐ大神殿に向かうぞ。支度をして馬車に乗っておけ。」
「・・・・・」「・・・・・」二人して母親と一緒に固まって黙っていると父親がこちらを振り返った。
「どうした?何故動かない?」
「ねぇ。お母様、お父様っていつもこうなの?」
「えぇ、そうよ。そうなんだけど、私もすっかり忘れていたわ。」
「ふーん。なら、いいや。」
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「再び足を運んで頂きありがとうございます。お手を煩わせてしまって申し訳ありません。」
「いえいえ、何も予定がなかったので全然構いませんよ。それに娘はこの神殿が気に入ったようですし・・・・」
そう言ってサンダルウッド公爵が見つめているのは目を輝かせて神殿内を元気に駆け回っているリディアだった。
「それは大変様ございました。」
「司祭様!今回はどうしたらいいですか?」
「おやおや、リディア様はやる気に満ち溢れておられる様ですな。」
「だって、楽しみだもん!」
「では、昨日とは違うこの水晶玉に手をかざして頂けませんか?」
「はい!」
リディアが返事したその数秒後司祭の顔はあっという間に青ざめて「この様な事が・・・・・」と呆然と呟いていた。
「公爵様、リディア様の数値は皇太子であるガルナレオ殿の二の次です。それもニ属性だからではなくどうやら個々の属性どちらも半端ない魔力量です。そしてそれらが組み合わさると皇太子殿下と同等かもしくはそれ以上です。」
「は?」「・・・・私もこの様な数値を見たのは初めてです。皇室の者を超える者などあり得ないのが普通ですから。」
「それは・・・・うちの娘が常識を壊したという事でいいんでしょうか?」
公爵夫人は真っ青な顔でそう司祭に問いただした。
「・・・はい、簡単に言うとそう言うことになります。」
司祭は穏やかで落ち着いた声で公爵夫人にそう返答した。
リディアの頭の中は混雑していて今にもその綺麗な形をした頭から湯気が出そうな程だった。
(二属性で魔力量が皇太子殿下よりも大きい?私が、何で・・・・。)