1 2属性の令嬢
王国の大神殿は、荘厳な雰囲気に包まれていた。それは光属性の貴族が大神殿に赴いたからである。この世界では五つの魔属性が存在する。光・闇・風・火・水、この五つの属性は貴族の社会的地位にも大きく影響する。主人公であるリディアの両親とその家系は全員光属性だった。大理石の床には、五つの属性を象徴する紋章が刻まれ、中央には透き通った水晶玉が静かに輝いている。
両親に手を繋がれ浮かれた気分で重厚な扉の前に案内役の神官と一緒に立っていたのは高貴な血筋の家系に生まれたリディア・サンダルウッド・ハレスだった。彼女の両親、特に母親は、リディアが「光属性」を持つことを強く願っていた。その理由は光属性は王族や高貴な家系に多く見られ、社会的地位を高めるためには最適な属性とされているからだ。家系全員が同じ属性といえどそれには例外も含まれる。何せ魔属性に血筋はほとんど関係ない。何故なら魔属性は偉大なる女神から授けられる物であるからだ。
両親と一緒に神官が扉をゆっくり押し開けるのを眺めていたリディアは扉が開くとその綺麗な水晶玉に目を輝かせた。。水晶玉の隣に立っている年老いた司祭が優しく声をかける。
「リディア・サンダルウッド・ハレス嬢、ご両親殿、今宵はお越し頂きありがとうございます。それでは早速リディア様の魔属性判定を行いたいのでリディア様、水晶玉の前にお立ち頂いてもいいですか?」
「はい!司祭様!!」
「これはこれは大変お元気なお嬢様でいらっしゃる!」
司祭がニッコリ微笑みながらリディアの両親を見遣ると、二人はため息を吐きながらこう言った。
「いえいえ、元気すぎて毎日困ってますよ。」「えぇ、私なんかそのテンションについていけなくて五歳の娘に心配される日々を送っていますから。」
「ほぅ、元気なだけでなく心優しいとは将来が楽しみですな。」
「もったいないお言葉、ありがとうございます。」
すると魔法陣の中央に立っていたリディアがその様子を見て可愛らしく抗議の声を上げた。
「もぅ!パパもママも司祭様と何を話しているの?そんな事してたら明日になっちゃうよ!」
「ハハッ、確かにリディア様の言う通りですな。無駄話はこれくらいにしておきましょうか。」
「そうですね。うちの娘が拗ねるとめんどくさいですし。」
父親がそう言うと司祭は再び笑い、リディアの方へと歩き水晶玉の前で立ち止まった。
「リディア様、この水晶玉に手をかざして頂けますか?」
「分かったわ!」
リディアは満面の笑みで手を水晶玉にかざす。しばらくの静寂の後、水晶玉が淡い光を放ち始める。最初に現れたのは、純白の光。母親の顔がほころぶ。しかし、次に現れたのは、深い闇を象徴する漆黒の光。大神殿が一瞬静まり返る。
司祭は驚きの表情を隠せない。何故ならここ数十年間はこの様子を見た事がなく、大変予想外の出来事だからである。
「これは・・・光と闇、二つの属性をお持ちです。」
リディアの両親は顔色を変え、母親は手を震わせながらも、冷静を装おうとする。
「リディア、あなたは特別なのよ。それもいい意味と悪い意味の両方でね。光と闇、二つの力を持つなんて、前代未聞だわ。」
父親は眉をひそめ、低い声で言う。
「だが、これは…」
母親は父親の言葉を遮り、リリアの肩を優しく抱く。
「大丈夫、リディア。あなたはどんな力を持っていても、私たちが守るから。」
その後、リディアは家族と共に帰路につく。道中、彼女は心の中で自問自答する。
「私は、どうして二つの属性を持っているのだろう? それは、私が特別だから?」
家に帰ると、両親はリディアに向かって言う。
「リディア、あなたは光と闇、二つの属性を持つ特別な存在よ。でも、このことは他の人には話してはいけません。特に学園では、気をつけなさい。」
リディアは頷き、心の中で誓う。
「私は、どんな力を持っても誇りを持って生きる。」