私が一番あなたを、
あなたはどんな最期がお好きですか?
今回は、共依存する少年と少女のお話。
少女の方は、もう後が長くないようです。
まるで世界にふたりぼっちな少年少女、最後に選択するものは何でしょう。
あなたはどんな2人の過去の物語を想像しますか?
みんな死んでしまえ。
私と同じ思いを味わって、苦しんでしまえ。
最期の願いがそんなだなんて、とっても惨めね。
でもね、私、思うの。
そもそもあなたと出会わなければ、こんな苦しみを味わうことなかったって。
それでも出会ってしまったものはしょうがないけど。
あの時はあなたがいなければ私の命なんて、自分のため息だけでかき消えてしまうほどに軽かった。
それでもここまで生きて来れたのは、あなたを1人にしておけなかったから。
自分は死のうとしながらあなたのためになんて、図々しい考えでしょ?
それでも。
いつも無愛想な私に笑顔で話しかけてくれて。
おっちょこちょいだけど、みんなに愛されたあなた。
いつも周りには友達がたくさんいて、みんなの中心にいたなあ。
好きなサンドイッチを頬張って幸せそうに目を細めるあなた。
こっちまで笑顔になるような、そんな優しい雰囲気。
社会のノートを借りに、わざわざ離れた席の私のところまで来たあなた。
本当は社会科得意だったくせに。
写真撮ろっか、ってなるといつも急いで髪を整え始めるあなた。
ふわふわした黒い髪、ちょっと寝癖がつきがちだったな。よく直してあげたっけ。
帰り道に繋いだ、あなたの大きくて温かい手。
冷え性な私の手を何度も何度も温めてくれてたな。心地良かった。
本当に幸せそうな、愛おしそうな目で私を見つめていたあなた。
別れ際にぎゅって抱きしめて、渋々と寂しそうに手を離すよね。それを上塗りして隠すように笑ってさ。
休日はよく一緒に出かけて遊んだね。
柄でもないくせに恋愛映画観に行こうとか言って、恥ずかしくなってやめたあなた。
私の体調を気にしながら歩幅をそろえていてくれてたあなた。
何かの行列に並んで待ってる時は絶対にくっついてきて、甘えてくるあなた。
そんなあなたが、本当に好きだった。
全部全部かけがえのない、宝石のような日々。
私にとって、死んでも忘れられない程明るく照らしてくれる、強烈な光だった。
いつだってあなたは真っ直ぐで、眩しくて、愛おしかった。
私になんか、勿体無いほどに。
だから、これでよかったはずなんだ。
あなたはみんなに愛されている。だから、私がいなくたって。
私が消えてしまっても、他にあなたのことを愛してくれる人がいる。
だから。
……そう思いたいはずだった。けど、できない。
だって、だって。
だって!
私があなたを一番知ってる!
私があなたを一番好きで、私があなたを一番愛してる!!
あなたの隣にいるのは他の誰でもなくて、私なの!!!
あなたが一番愛しているのも私なの!!!
……私はあなたのもので、あなたは私のものでしょう?
ほら、今だって、眠っている私の手をずっと握っているでしょう?
あなたを誰にも譲りたくない。
このまま終わりたくない。
でも、それはもう叶わない。
いっそのこと、あなたを道連れにできたらいいのに、なんて。
せめてもの悪あがき。ふざけたことだと言われるかもしれない。
あなたは、言葉を大事にしていた。いつだって、誰かを傷付けないように慎重だった。
そんな優しさにつけ込む私はとても醜いだろう。
それでも、言う。
今まで全てを他の人に委ねがちだった私が、絶対に譲りたくないと思えた唯一の人。
「あなたが一生で会うどの人よりも、私があなたを一番愛してるから。」
だから、私のこと、
忘れないでね。
「ありがとう。」
病室に長い電子音が小さく響く。
でも不思議なほどに静寂だ。
彼女が、僕の目の前で眠るように死んだ。
僕に触れていた手はまだ、いつもの少し低い体温を残したまま。
……実感が、湧かない。
だって、君はまだ目の前にいる。
穏やかな顔で眠っている。
今さっきまで言葉も交わしていた。
それなのに、『死んだ』?
ありえない。
だって僕は君を心の支えに生きてきた。
どんなに苦しくて辛くて死にたくなっても、君がいるからここまで生き延びれた。
学校だって、君がいるから行ったんだ。
食事だって君と食べるものしか味がしないし、映画だって君がいないと何も感じない。
夜だって君の声を聞かないと上手く寝付けない。
依存しすぎだってわかってる。
でも、それぐらい君が大好きで、愛してる。
君を誰にも譲らないし触らせたくない、僕だけのものだ。
そして僕は、君のもの。
君が行きたい場所ならどこにでも連れて行くし、行かなきゃならない場所なら、どんな所へだってついていくよ。
ねえ、僕を置いてかないで。
君といられない世界なんて要らないんだよ。
だからさ、僕もそっちに行くよ。
待ってて、あと少しでそっちに行けるから、待っててよ。
会えたら、困ったようなあの笑顔で僕を抱きしめて。




