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冬と宝石  作者: 環多有再
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こんなはずじゃなかったのに。

あなたはどんな最期がお好きですか?


本日の結末は、とある少年と少女。

2人は何者かに襲われて逃げてきたが、少年はすでに手遅れ。それを認めたくない少女。思い出が走馬灯のように流れ、感覚が錯誤し始める。


『愛』を自分の腕の中で失ったとき、人はどうなってしまうのだろう。

あなたはどんな2人の過去の物語を想像しますか?

「はぁ、はぁ…..っ。」


幾つもの星が明るく瞬く紺色の夜、吐息がこだまする。

あれからどれほどの時間が経っただろう。手足の感覚はとうに無かった。今あるのは霞んできている意識と、愛している人だった何か。

頬をするりと撫で、瞼に唇を落とす。目を覚ますことはもうないと分かってはいるのに、習慣とは皮肉なものだ。

縋るように見上げた、いつに無いほどに美しい空。仰ぐようにして伸ばした右手には赤色の鉛が滴っている。街灯の光を反射するそれはルビーのようだった。


「きれい……。」


自分の口から呟いておいて、もはやどちらのことか分からなかった。

白くなった息が視界を遮るように風に流れる。


こんなはずじゃなかったのに。


音にはならなかった言葉を飲み込む。彼の傷口を押さえていた左手はすでに錆びた鉄の匂いが染み付いている。

塞がることのない傷を、もう一度その手で覆う。何の希望もないと知っていても。


「ねえ見て。今日の月、めっちゃきれいだよ。」


当然返事はない。

それでも。

『そうだね、きれい。』と、一緒に見てくれている気がするのは私の願望だろうか。

彼の手が暖かいように感じてしまうのも、明日になれば『おはよう』と笑って私を起こしてくれるように思えてしまうのも全部、そうなのだろうか。


「明日はさ、いろんな所へ写真…撮りに、行くの。…それで、オシャレなカフェで、ご飯を食べて…。」


夜、2人で布団の中で立てた計画が、声に出すたび崩れ落ちていくような気がする。

どうしようもない欠落を抱えた虚しさと悔しさ、寂しさが胸で乱雑に混ざって、混ざって、苦しい。

生暖かい水が頬を伝い、すぐに冷えて落ちる。それでも止まらずに溢れてくる。


「夜は、観覧車に乗って、…君が好きな夜景を…見るんだ……。ね、良い、でしょ……。」


普段は行き先なんてちゃんと決めてもいないけど、それにしては結構良い案でしょ?


彼の手を残った力でぎゅっと強く握る。大きな手が私の手を包む。冷たいはずなのに、温かい。

真冬の屋外、氷点下のせいで肺が凍るよう。息は切れ切れだ。

周りの音が聞こえなくなった。強く風が吹いても、何も感じなくなった。ただ、世界の時間がゆっくりと流れていく、そんな幻想を見ているような。


不意に、手を引かれているような気がした、どこか遠く、知らない方へ。それは本来、生物としての本能が拒否する場所。

私はそれを受け入れた。

もうこの場所に私を引き留めるものが何も無かった。

視界が滲んで、霞んで、闇に沈む。

……あの日の声が聞こえる。




寒さはもう、どこにもいなかった。

新参者ですがよろしくお願いします。

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