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君にもう1度こいねがう。取引の魔女から1番安い能力しか買えなかった少年のその後  作者: 雪月花
こいねがうもの リラ編

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61:わちゃわちゃ


「リラ! やっと会えた! てかその服!」

「ごめんね。ぐっすり眠ってたから……やっぱり言われちゃった。フフッ」

「魔女が来た!? 絶対倒してカミールを守るんだからっ」

「リラさん、久しぶりですね。あれからなかなか来てくれなくて、寂しかったんですよ」

「カミール、この女性は誰なんだ?」

「あの時の高等な魔法を扱っていたリラさんですね? ぜひお話をーー」


 リアリーン教会に集った面々が一斉に喋り始めた。


「…………うるさーいっ!!」

 イルゼが力の限り叫びながら、また空に向かって右手を掲げた。

 そして再び黒い稲光が一筋イルゼに落ちる。


 リラ以外の全員が身をすくめた。

 魔女の登場で寄って来ていたみんなは、再びイルゼとカミールから離れる。

 



「そこの魔女! カミールを(たぶら)かす悪い魔女! 私と勝負しなさい!!」

 イルゼがリラを指差した。

 リラはその時初めて悪魔と融合したイルゼに気付いたようで、途端に目をキラキラさせて近付いた。


「すごーい。悪魔の魂が体の中に入ってるんだ。へぇー。何か古い魔法書でも読んだ?」

 リラが馴れ馴れしくイルゼの腕をペタペタ触る。

 右腕に入っている紋様が気になっているようだ。


「…………魔女について調べる時に読んだかな……って、話聞いてる!?」

 イルゼが怒りながらリラに掴み掛かろうとした。

 それをヒラリと横へかわした魔女は、フワリと宙に浮く。


「あちゃー。魅入られたのかな? 古い魔法書には、人を惑わして取り憑く悪魔が潜んでいることがあるの」

 それに警備隊のクルトが返事をした。

「その悪魔を払うことは出来ますか?」

 

 するとリラがクルトの近くにすとんと降り立つ。

「うーん。どうだろう? 私はエクソシストの類いじゃないから……って、わわっ!」

 イルゼがいきなりリラに向かって攻撃した。

 黒い紋様が入った手から、さっきから受け止めていた黒い稲光が放たれる。


 リラは顔を逸らして間一髪で避けた。

 的を外した黒い稲光は、遠くの木にぶつかるまで飛んでいく。

 命中した木は一瞬で真っ白になり、ボロボロと崩れ落ちると、風に吹かれて跡形もなくなった。


「悠長に話してないで、さっさと戦いなさいよ! カミールがどうなってもいいの!?」

 イルゼがそう言って右手をカミールの顔に向けた。


「え? 俺に危害を加える系? 一緒に住もうとか言ってるのに?」

 カミールは動揺して、イルゼから離れようと身をそらす。

 けれど、がっちり抱え込まれている腕を振り解くことはやっぱり出来なかった。

 力が強すぎて。


 きょとんとしたリラが追い討ちをかける。

「カミール大丈夫だよ。攻撃されても命は私が預かってるから……死にはしないと思う」

「いや、そういう話ではなくて……」

 カミールが思わず突っ込むけれど、あまり聞いていない魔女は、魔法で三角帽子を出現させて被った。

 

 そしてムンッと意気込んだ。

 リラなりに、きちんとした魔女の正装に身を包んで、気合いを入れたのだった。

 一応、カミールのために戦ってくれるらしい。


「あっ…………ファビエンヌ先生に教えてもらっている時ぐらいしか、戦ったこと無いんだった……」

 けれどヘナヘナと脱力すると、眉を下げて心底不安そうにイルゼの前に踏み出した。

 

 その様子にカミールも……周りの人達も一緒に不安になる。

『え? 悪魔になったイルゼは、この魔法をバリバリ使えそうな人でも救えないの?』と。



 イルゼは進みでたリラを見て、満足そうにニィッと笑った。

 そしてそれを合図に、2人の戦いの火蓋が切って落とされたのである。

 少なくともイルゼの中では。




 ーーーーーー


「ちょこまかと逃げてないで、こっちに来なさいよー!!」

 イルゼが夜空に向かって、黒い稲妻のような攻撃魔法を連発する。

 そこにはさっきからフヨフヨ浮いて、攻撃をかわしているリラがいた。


「攻撃してくるから近付けなくって……」

 リラが困った顔をして、もっともな事を言う。




 2人から離れた場所には、ただ見守るしかないギャラリーたちがいた。

 その中に混じり、手錠をしたまま空を見上げるカミールが苦情をこぼす。

「どうせなら、こう……もうちょっと可愛い感じのキャットファイトをして欲しいんだけど」


 それに隣のオリバーが答えた。

「俺に言うなよ。それにしても……()()はどうなるんだ?」

 

 オリバーがリラとイルゼの戦いの行方を聞いて来た。

 彼も悪魔に取り憑かれた幼馴染(イルゼ)が、どうなるのか心配していた。

 

「イルゼの魔力が尽きて終わりかな? そのあとは……専門の人に悪魔をどうにかしてもらうしか……」

 カミールは遠くにいる警備隊のクルトをチラリと見た。

 リアリーン教会の騒ぎに駆けつけた他の警備隊たちと合流したクルトは、難しい顔をして何やら報告を聞いている。


 …………

 さっき、クルトがリラに聞いてたぐらいだから、警備隊では悪魔(イルゼ)をどうにか出来ないかも……


 カミールはクルトたちの様子を見てそう思った。




 一方、なかなか攻撃が当たらないイルゼが、歯がゆそうにリラに向かって叫ぶ。

「そもそも、あなたは何なの!? 何でカミールに近付くの!? お金? まさか好きって言うの!?」

「うーん……好きとかじゃなくて……」

 聞かれたリラが素直に答え始めた。

 

 けれどまさかの否定はじまりに、カミールは思わずリラを凝視した。

 彼女は宙を見上げながら首を傾げていたが、ニコニコと幸せそうに笑って続きを喋る。


「私のためにいろいろ尽くしてくれるカミールが、可愛くって仕方ないの」


 胡乱(うろん)な目をしたイルゼがたてつく。

「……それって愛情? ペット感覚なんじゃ……」

「そうかなぁ? 初めての感情でちょっと戸惑ってるんだよ」

 リラがマイペースに、笑いながらはにかんだ。




「……リラ」

 カミールが顔を赤くして、夜空に浮かぶ魔女を見つめていた。

 彼女なりの愛情表現を、こんなに言葉にされたのは初めてだった。

 

 リラが俺のことを可愛い可愛いと言っていたのは〝好きだよ〟と言っていたんだな。

 

 あの時も、この時も……


 『カミールって可愛いね』とリラが言った光景が、『カミール大好きだよ』に変わっていく。


 カミールの幸せな頭は、記憶の改竄(かいざん)に忙しくなった。




 ある種の感動で呆然としていると、カミールの腕が両サイドから肘でグリグリされた。

 気付くとカミールの両隣には、馴染みの友人たちが立っていた。


「あの美人な魔女さんがカミールの彼女?」

「意外に愛されてるじゃん。このこの」

 2人がニヤニヤしながらカミールを小突く。


「フランツ! ヨハン! ……カトリナも? みんな集まってどうしたんだよ?」

 後ろを振り向くと、ハンスとユリアのそばにカトリナが来ていた。


「リアリーン教会が騒がしいからって様子を見に来たら、ユリアやカミールたちが居て……心配で近くに来てみたの〜」

 相変わらずおっとりとしたカトリナが、笑みを浮かべて返事をした。

 

「わぁー。みんなが集まるなんて久しぶりだな」

「カミールがしばらく店に顔見せなかったから心配してたけど、元気そうだな」

「あ、ハンスとユリアは近々結婚式をあげるんだよねぇ」

「そうなんだ!」

「「「おめでとー!!」」」

 

 一斉に揃った幼馴染たちが、和気あいあいとし始める。

 こんな時だけど、せっかくだからとみんなで話に花を咲かせた。




「これでイルゼが来れば、いつものメンバーが揃うのにな」

 誰かがそう言うと、みんなで遠くで戦っているイルゼに目を向けた。


 リラとイルゼは盛り上がるカミール達をよそに、死闘を繰り広げていた。

 ……少なくとも、イルゼの中では。




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