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君にもう1度こいねがう。取引の魔女から1番安い能力しか買えなかった少年のその後  作者: 雪月花
こいねがうもの リラ編

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48/66

48:秘密


 空は青く晴れ渡り、穏やかな風が吹くある日のこと。

 出掛ける支度を終えたカミールが、玄関で家の奥に向かって言葉を投げかけた。


「ちょっと出掛けてくる!」

 大抵は母親の返事があるのに、今日はしなかった。


 家に誰もいないのか……


 そう判断したカミールは、外に出ると玄関の扉の鍵をきちんと施錠した。



 

「ふわぁぁぁあ。眠い……」

 カミールは大きなあくびをしながら、目尻に反射で出る涙を浮かべる。

 数時間前まで、彼はリラの世界に遊びに行っていた。

 帰ってくるとこっちは明け方だったため、半端な時間しか睡眠が取れていない。

 だからか眠くてしょうがなかった。

 

 ……聖石の影響でリラはすぐ疲れやすくなるって言ってたけど、それもあるのかな?


 そんなことを考えながら、半ば目を閉じて歩いていると、角から出てきた誰かと軽くぶつかってしまった。


「きゃっ!」

「あ、すみま……なんだイルゼか」

 相手は偶然にも幼馴染のイルゼだった。


「なんだって酷いわね」

 むくれたイルゼがプイっと顔を背ける。

「……どこかに行く所だったのか?」

 カミールも気まずくて目をそらした。

 彼女とは告白を断ってきり会っていなかった。


 イルゼは顔を逸らしたまま、頬を赤くしてカミールに答える。

「特にどこって訳じゃないけど……」


「「…………」」


 2人の間に気まずい沈黙が流れた。

 

「…………最近、仕事変えた?」

 その沈黙を破ってくれたのはイルゼだった。

 けれど少しだけ、その情報を何でイルゼが握っているのか怖くなる。


 カミールはそんな気持ちを出さないために、やんわり笑顔を浮かべた。

「変えたよ。商会で働いたり……慈善活動をしているんだ」

「え? どういうこと?」

「あれだよ、俺の特別な魔法で、傷跡を消せることが出来るかっ、……ら…………」


 カミールはセリフの途中でフラリとよろけた。

 慌てて彼の腕をイルゼが支える。


「大丈夫!?」

「……あぁ、うん。ありがとう」

 カミールは(ひたい)に片手を当てながら、体勢を立て直した。

 そしてあくびをしながら続ける。

「もう少し寝ていた方が良かったかも」

「……もうお昼近くなのに?」

 イルゼが不思議そうに眉をひそめた。


「ちょっといろいろあって……」

「カミールは今からどこかに行くの?」

「うーん、オリバーの所に顔を出そうと思ったけど、今日は帰る」

「それがいいと思うよ。送ってあげる」

 イルゼが支えていた腕を引っ張るようにして、カミールの家へ向かい始めた。


「…………」

 カミールはまた目を閉じながら、大人しく彼女についていった。




 ーーーーーー


 自室に帰って来たカミールは、倒れるようにベッドに潜り込んだ。

 そして、ここまで付き添ってくれたイルゼに顔を向ける。


「ありがとな。思ってたよりしんどくなってきたから、助かったよ」

 青い顔をしたカミールは、もう目を閉じて半分眠りに入っていた。


 イルゼはベッドの近くに椅子を持ってきて、座っていた。

 ひどく体調が悪そうなカミールを、痛ましそうに見つめている。


「大丈夫? お医者さん呼ぶ?」

「……だいじょうぶ。寝たら治ると思う……から」

 カミールは半分意識が無い状態で、イルゼに答えた。

 

「本当に?」

「あぁ…………これもリラの為だから……」

 ムニャムニャとうわ言かのようにカミールが囁く。


「…………」

 そんなカミールの様子に、イルゼは複雑な気持ちを抱いた。


 


 ーーーーーー


 あっと言う間に寝息を立て始めたカミールを見届けると、イルゼは椅子から静かに立ち上がった。


「絶対おかしい。怪しい」

 声を抑えるのも兼ねて、口元にゆるく握った手を当てて考え込む。


 イルゼは、カミールのここ最近の急な仕事の変更、そして体調不良を怪しんでいた。

 

 ……多分、カミールも言っているように、あのリラという女性がどれも絡んでる。


 そう考えた彼女は、何かヒントになるものは無いかと、カミールの部屋を見渡した。

 ポニーテールが右に左にと忙しく揺れる。

 

「相手は高等な魔法使い。何か幻惑魔法でもかけられてるんじゃ……?」

 ブツブツと呟きながら思案していると、机の上に置かれた一冊の本が目に止まった。

 

 ……カミールが集めている本の1つかぁ。

 昔から好きだよね〜。

 古書を集めるの。


 何気なしにイルゼがその本を手に取る。

 それはリラが以前に借りていた、ファビエンヌが書いた本だった。


「……魔女?」

 本の表紙を見たイルゼは、そこに書かれている単語を繰り返した。

 それからハッとして本棚を見る。


 カミールは、魔法について調べることが好きなんだと思っていた。

 その証拠に、古代の魔法についてや、歴史上の魔法使いの本などが並んでいる。

 けれどその中にちらほら混じる、魔女についての本。


 ……改めて見ると、魔女についての本が多い?


 イルゼの中で、1つ1つの小さな出来事が噛み合っていった。


 魔女。

 禁忌の魔力。

 見たことのない高等な魔法が使える女性。

 

 そして子供の時に、突然使え始めたカミールの特殊な魔法……




 ーーリラという女性は魔女!!



 

 イルゼはしばらく本を眺めると、チラリと眠っているカミールを見た。


 そして元の場所に本を戻すと、静かに部屋を去っていった。




 

 

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