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君にもう1度こいねがう。取引の魔女から1番安い能力しか買えなかった少年のその後  作者: 雪月花
こいねがうもの カミール編

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23/66

23:取り調べ


 イルゼたちに連れられて、カミールは警備隊の本拠地である建物に来ていた。


 一応、犯罪者ではないカミールは、応接室のような小綺麗な所に通されており、椅子に座って紅茶を振る舞われていた。

 向かい側にはイルゼと、彼女の先輩にあたるクルトという男性が座っている。

 3人で顔を突き合わせ、カミールは事情聴取を受けている真っ最中だった。

 

 クルトはカミールより3歳ぐらい年上の、垂れ目で柔和な顔立ちをした、いかにも優しそうな青年だった。

 ちょうど公爵家のマティアスと同じぐらいの年なのに、全く正反対の人種だ。

 

 

 

 カミールはひとまず紅茶を口に含んでゆっくり飲み込むと、目の前の2人を見据えながらカップをソーサーに戻した。

 そしてさっきから説明しているリラとの関係を、再びかいつまんで話す。


「だーかーらー、何度か会ったことがあるだけで、悪いことなんて一切してないんだ。彼女も、俺も!」

 カミールが怒り気味に告げると、すかさずイルゼが身を乗り出して言い返した。

「嘘! 確かにあの人とはお金だけの関係っぽかったけど……お金だけの関係っぽかったけど!!」


 くっそー! 

 2回も言うなよ。


 カミールが心の中で愚痴をこぼす。

 ある意味真実なため、人知れず傷ついていた。


 ……よし。

 もうその流れでいこう!


 開き直ったカミールが、得意げにフフンと笑う。

「そうだ。だから俺たちはお金だけの関係。リラはお金を払うと一緒に居てくれるんだよ。ただそれだけで、俺は何も悪いことをしていない」


 ……あ、ダメだ。

 言ってて(むな)しくなってきた。


 作戦は失敗で、勝手にダメージをさらに負ったカミールは、途端にしょげてしまった。

 真顔になってテーブルのある一点を見つめる。


「「…………」」

 イルゼとクルトも顔を見合わせてから、カミールに可哀想な人を見る目を向けた。


「やっぱり、悪い女の人に騙されてる……」

 イルゼがボソリと追い打ちをかける。

 

 すると今まで成り行きを見守っていたクルトが、ゆっくりと口を開く。

「……イルゼはその女性の魔力を禁忌の魔力と言ったけれど、僕たちにとって得体の知れない魔力だったんだ」

 彼は穏やかな声で続けた。

「それが良いものか悪いものか分からない。ただ、得体の知れない魔力は、悪用されてきた歴史があるからね」


「…………」

 カミールがのろのろと顔を上げてクルトに目を向けると、それを待っていた彼が優しく視線を受け止めた。


「カミールくんは何か知らない? そのリラさんという女性が、あれ程までに高等な魔法を使える理由を」

 クルトが朗らかにほほ笑んで、カミールの返事を待つ。


 人の良さそうなクルトからは、イルゼと違って悪意を全く感じなかった。

 



 ーーだから、聞いてみたくなったのかも知れない。

 

 カミールは誰にも言ったことがない、リラの秘密の一部を慎重に打ち明けた。

「…………冗談だと思うんですけど、1度だけ聞いたことがあります。リラは『特殊な魔石の光を浴びている』と……」


「…………特殊な魔石…………」

 クルトが笑顔を無くして黙り込んでしまった。

 神妙な表情で顔を伏せる。

 隣のイルゼも、様子が変わったクルトを心配そうに見つめていた。




 しばらくすると、考えがまとまったクルトが顔を上げた。

「これは、カミールくんの話を聞いて、僕が思ったことなんだけど……」

 彼が申し訳なさそうに笑いながら話す。

「特殊な魔石という言葉と、リラという女性のすごい魔力から連想したのは〝聖石〟の話」

 

 イルゼが息を呑みながら相槌を打つ。

「〝聖石〟って……あの?」

 

 クルトがイルゼに向かって頷いた。

「うん。この世のどこかにあると言い伝えられている神秘の魔石。でもそうなるとリラさんは…………聖女リアリーンの子孫ってことにでもなるのかな?」

 クルトが苦笑した。


 イルゼがそれに返事をする。

「〝聖石〟は聖女リアリーンの力の源と言われているからですか? そんな神話レベルの話…………その、信じがたいです……」

「そうだね。僕もそう思うよ」

 優しいクルトは正直なイルゼに同意した。


 それを聞いたカミールは「フッフッフッ」と不敵に笑い始めた。


「クルトさんも俺と同じ考えなんですね!」

 はしゃいだ様子のカミールが、勢いよく椅子から立ち上がる。


「カミール?」

 イルゼが〝訳わかんない〟というように、しかめっ面をした。


 呼ばれたカミールはイルゼを指差して演説する。

「そう。リラが〝特殊な魔石〟と言っているのは〝聖石〟のこと。リラの力は聖女と同じ!」

 言っているうちに嬉しくなって、カミールは高らかに叫んだ。


 リラが何故違う世界にいるのか。

 彼女を不老不死にした〝特殊な魔石〟とは何なのか。


 リラに聞いてもはぐらかされるから、カミールなりにずっと考えていた。

 その考えがクルトと見事に一致したことで、彼はテンションが上がっていた。




「「…………」」

 

 イルゼとクルトが顔を見合わせてから、またカミールに可哀想な人を見る目を向けた。



 

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