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君にもう1度こいねがう。取引の魔女から1番安い能力しか買えなかった少年のその後  作者: 雪月花
こいねがうもの カミール編

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20/66

20:意外な出会い


「今日は背中の上にあるホクロを取って下さる? 背中を見せるドレスを着ると、目立って嫌なのです」



「今日は二の腕に出来たアザを取って下さる? 不注意でぶつけてしまって……今夜は他国の王族を招いてのパーティがあるのに」



「今日は頬に薄っすらあるシミを取って下さらない? お化粧で隠しても目立ち始めて憂鬱ですわ」



 テレージアの美への飽くなき要求は続いた。

 王宮の雰囲気にも慣れて、落ち着いて対応出来るようになったカミールは、彼女の要求を快く応えていく。


 何よりガッポガッポとお金が手に入った。

 そして王妃様に魔法をかけている噂が貴族達にも広まり、カミールに仕事が舞い込む量も増えた。

 

 カミールは(せわ)しなく仕事をこなす中、ニヤニヤ笑いを抑えるのに必死になっていった。




 ーーけれどある日、テレージアがひょんなことを言い出した。


「カミール、お願いがありますの。わたくし以外の方からの依頼を断ってくれませんか?」

 いつものように優雅に椅子に座っているテレージアが、カミールを真っ直ぐに見つめた。


「え? ……それは……」

 カミールは固まってしまった。


 他の貴族からの依頼が絶好調な今、全て断ってしまうとお金が儲けられなくなる。

 せっかくの書き入れ時なのに、それを逃してしまうのは残念すぎる。


 そんなカミールの思いが伝わったのか、テレージアが更に切り出した。

「他の方の分まで、わたくしが褒美を上乗せしましょう」

 彼女が口の端を上げて笑みを浮かべる。


「っ…………」

 驚きと共にどう返事をするべきか、カミールは詰まってしまった。

 テレージアはすごい金額を支払うと申し出たのだ。

 

 他の貴族の分も補填(ほてん)するなんて、どれほどの金額になるのか理解しているのだろうか?


 考えあぐねているカミールを見て、テレージアが扇を手に取った。

 手首を滑らかに振ると、バサッと華やかに広がったそれで口元を隠しながら、クスクスと笑う。


「だって、美しくなるのはこのわたくしだけで十分でしょう?」


 テレージアが目を細める。

 その蠱惑(こわく)的なオーラは、有無を言わせぬものがあった。

 




 **===========**


 結局テレージアの申し出を受け入れるしか無かったカミールは、多忙だったスケジュールにゆとりが出来るようになった。


 王妃が莫大な金額を支払ってくれるから、仕事量が少ないのは嬉しいのだけれど……

 

 ……うまく行きすぎてる?

 まぁ、この調子で目標金額を達成出来たら、姿をくらませばいいか。



 

 少し不安もあるけれど、取り敢えず久しぶりの余暇を満喫することにしたカミールは、1人で街を歩いていた。

 

 すると通りの向こうに見知った人が。


「おーい、カミールー!」

 幼馴染のイルゼが、ピョンピョン跳ねてカミールに手を振っていた。

 トレードマークのポニーテールも楽しげに跳ねている。


「久しぶりだなー」

 カミールも軽く手を挙げて答える。

 イルゼはキョロキョロと首を振って、通りの安全を確認すると、カミールの元へと駆けてきた。


「偶然だね。何してるの?」

「そりゃもちろん、古書巡り?」

「相変わらず渋いねー。向こうに行くんだよね? 私もそっちに用事があるから一緒に行こうよ」

「あぁ。そうだな」

 

 そうして2人は連れ立って歩き始めた。




「カミール、最近忙しそうだね。久しぶりに街で見た気がする」

「まぁなぁ。稼ぎ時って感じだからな。イルゼはどうなんだよ?」

「私はいつもと変わらないかな? この国は平和だから、有事の時とかあんまり無いからね」

 イルゼが眉を下げて困った笑顔を浮かべた。


 彼女は攻撃魔法にとてつもなく秀でていた。

 そのため国が抱えている警備隊の、魔術師部隊に所属している。

 要するにメチャクチャ強い。

 

 魔法学校での攻撃魔法の実技授業で、何度もコテンパンにやられたのを思い出す。

 その時のことを考えると、カミールの心の中で〝イルゼを怒らせてはいけない〟という気持ちが湧き上がるほどだった。


「なんかカミールが、王妃のテレージア様相手にも仕事してるって噂を聞いたんだけど……本当?」

 イルゼが笑いながら聞いてきた。

 

 ……どこからそんな噂を聞いたんだろう。

 それとも、そんなに有名になってしまっているのか?

 

 カミールは地面を見つめながら固まった。

 足がもつれそうになるのを、なんとか防ぎながらイルゼに苦笑を向ける。


「うーん、顧客の情報は伝えられないから……」 

 カミールはこんな時用の言い訳を述べた。

 オリバーの入れ知恵だった。

 

 さすが悪巧みのオリバー。

 細かい所まで、あいつと練っておいて良かった。

 

 カミールは心の中で安堵した。


 近所の幼馴染達は、カミールが何をして生計を立てているのか薄っすら知っていた。

 けれど貴族相手に商売をしていることは、基本的に秘密だった。

 カミールの両親ですら詳しくは知らない。


 目が眩むほどの大金を持っていると近所の人たちにバレたら、いつどこで襲われるか分からないからだ。


「そっかぁ。テレージア様は絶世の美女だから、どんな感じなのかな? って気になったんだ」

 イルゼはこれ以上カミールから聞き出すことは諦めたように、遠くを眺めながら歩いた。


「確かに出回っている肖像画は、めちゃくちゃ綺麗な人だよなぁ」

 カミールはテレージアと出会っていない(てい)で喋った。

 肖像画でしか見てないぞと遠回しにアピールする。


「けどなイルゼ。絶世の美女ってのは、どこもかしこもこう……フワフワしてるんだ」

 カミールは真剣な表情をイルゼに向けた。


「フワフワ?? どこかの女神様の絵みたいに、髪も服もふわふわってしてる感じ??」

 イルゼが〝訳わかんない〟というように、しかめっ面をした。


「違う。もっとこう……豊かで……あでやかで……」

「はぁ」

「それでいて引き締まるところは締まってるんだよなぁ……」

「…………何の話?」

 イルゼが怪訝(けげん)な目を向ける。


「分っかんないかなー。あ、ほらあんな感じ!」

 カミールは、丁度通りの向こうにいる男女を指差した。


 キリッとしたカッコいい男性の隣を歩く女性は、黒いヒラヒラしたワンピースを着ていた。

 ノースリーブのそれは清楚な感じだけれど、胸下から背中にかけて帯状の切り替えパーツになっており、後ろでリボンにすることによって絞れるようになっていた。

 

 キュッと引き締まったその部分の上には、たわわな胸が乗っている。

 襟ぐりからのぞく谷間も、がっつりではなく控えめに見えており、一種の奥ゆかしさがあった。

 その立派なものをユサユサさせながら歩いている女性からは、そこはかとなく色香がもれているけれど。


 ほほぅ。

 とカミールがある意味感心しながら女性の顔を見ると、まさに絶世の美女として話題に出していた本人だった。


「リラ??」

 カミールが驚いて立ち止まる。

 道の向こうで楽しそうに喋っているリラ達は、彼に気付くことなくすれ違っていく。


 カミールに釣られて立ち止まったイルザが、首をかしげた。

「え? どうしたの?」

「イルザごめん、用事が出来たから……じゃあなっ」

「あ、ちょっと……」

 突然のことで戸惑うイルゼと別れて、カミールはリラの元へと向かった。




 ーーーーーー


「リラ! 何でここに?」

 男性と並んで歩くリラに追いついたカミールが、彼女の肩を掴んで引き止めた。


「あ、カミール? へぇ〜ここカミールの国だったんだ」

 振り向いたリラが呑気に笑った。

 

 そばにいる男性がカミールを睨みつけながら、リラに向けて聞く。

「リラの友人?」

「そうだよ。こんな所で会うなんてすっごい偶然」

 リラがその男性にもニコニコと笑いかけた。


 今度はカミールが、冷ややかな目線を男性に向けてリラに聞いた。

「誰?」

「お買い物してたら、道案内してくれた親切な人だよ。せっかくだからって一緒に見て回ってるの」

 彼女が無邪気にエヘヘ〜と笑う。

 

 カミールはそんなリラの腕を掴んだ。

「そりゃあ良かったね。そこの人もありがとう。今からは俺が案内するから」

「いきなり出てきて何だよ。リラは今オレといるんだから、邪魔しないでくれるかい?」

 興奮気味の男性がリラの肩を抱き寄せる。


 (らち)が開かないと感じたカミールは、思わずリラを見た。

 きょとんとしていたリラだったけど、その視線を受けて宙を見ながら考え込む。


「……高価なものを買ってもらったしなぁ……」

 彼女は悩みながらも男性の方にチラリと目を向けた。

 

 ……まずい。

 こいつとのやりとりが〝取引〟にちょっと引っかかってるんだ。

 

 カミールは慌てて男性に告げた。


「リラに払ったお金は俺が建て替えるよ。だから、彼女との今からの時間は俺の物だ」

 リラにも聞こえるように、カミールは声を少し張った。

 すると男性が怒りを露わにしながら叫ぶ。


「そんな即物的な言い方はリラに失礼だぞ。オレは君とは違う。リラとの出会いに運命を感じたんだ。彼女こそオレの愛する人だ!」



 

 ーーそれを聞いたカミールは、ニヤリとほくそ笑んだ。



 


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