天使は感情を持つ
天使はそれからも死神と度々会い、感情について話し、教わり、恋に沈んでいった。天使は感情を持つようになった。天使は、笑い、泣き、怒り、自分の人生が明るく彩られていくようだった。
そして彩ってくれたのは死神だった。天使は死神に会うのが楽しみで、会えないと悲しくなり、寂しい、と一人で泣いた。そして、人の運命を決めるのが嫌になった。人間が感情のまま生きることを願うようになった。
この様子を神は見ていた。神はすべてを見通すことができ、絶対に間違わないからこそ、神としてあった。
神は天使に感情を与えなかった。感情を与えれば弱くなり、人間の運命を決められなくなることが見えていたから。だから、神はアンナからまた感情を奪った。
天使はまた感情を奪われた。何も思わなくなった。人の運命を決めても何も思わない。人間が感情で運命に抗おうとするのをただただ、冷ややかに見ているだけになった。
あるとき、死神が訪ねてきた。死神はひと目で天使がまた感情を奪われたことを悟った。彼女の瞳には感情について教えるようになってからあった星のようなきらめきがなくなり、ただ穴が空いているように見えるうつろな瞳になっていた。死神は深く深く悲しみ、涙が頬を濡らした。
「貴方、何故泣いてらっしゃるの?」
「!悲しいのです」
「どうして悲しいのですか?」
「愛する貴方にこの気持ちが伝わらないことが、、、!大切な存在である貴方が感情を忘れ去ってしまわれたことが、、、!とてつもなく悲しいのです」
死神も天使を愛していた。死神は絶望し、その場に崩れ落ち、嗚咽した。
天使は不思議そうな顔をして死神の顔を覗き込んだ。
抱きしめた。
「何故、なの?どうして貴方の瞳を見ると胸が押しつぶされそうになるの?どうしてもっとふれあいたいと思ってしまうの?どうして胸が暖かくなっていくの?」
「ああ、貴方は、、、!貴方のことを、、、愛しています」
「何で?胸が一杯になったような感じがするの?これは何?」
「また、、、1から教えますから。その感覚は何なのか、何故なのか、何度でも、教えますから、、、!」
神は、またアンナが感情を取り戻しかけていることに気づいた。このままでは危険だ、消滅させなければ、そう判断した神は、せめてもの情にアンナとタイキを両方とも消滅させることにした。
死神は天使を抱きしめ、泣いていた。その時、自分と天使の体が徐々にほどくように消えていってることに気づいた。死神は神によって消滅させられることを本能的に理解した。そして最後に愛した天使に囁く
「アンナ、愛してる」
二人は光がほどけるように消え、夜空に溶け沈んだ。
静寂だけが残った。
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