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服って何? side:志乃

side:志乃


「ねぇ、紗栄子……服ってどうすればいいの?」 

「……何故私に?」

「だって、頼れそうな人が他にいないから」

「気持ちはわかるが……」


 特徴的な赤髪のポニーテールが揺れるほどうーんと考え込む女性。

 彼女は冴島紗栄子。

 同じ学園に勤務する同い年の体育教師で、私と唯一仲の良い同僚だ。


「私の好みはパンク系だぞ? 志乃の好みに寄り添えるかどうか……」 

「そ、それでも頼りたかったの……大事な日だから」

「あー……デートか?」 

「……うん」

「まあ、志乃らしい服装がいいんじゃないか?」

「それがわからないから、頼ってるのよ」


 今までオシャレにこだわりがなかった。

 無難に社会人として恥ずかしくない格好なら、なんでもいい。

 どうせ私に恋人なんてできやしない、と勝手に思い込んでいたのだが


「わかった、大事な親友の頼みだ。ショッピングモールにでもいこうか」

「あ、ありがとう……」

 

 自分のセンスに不安があったから助かった。

 私は変なのを絶対選ばないと自信はあるが、無難すぎるものを選びそうだし。


「……志乃も随分明るくなったな」

「え? そう?」

「あぁ……そこまで感情を出すなんて。よっぽど彼氏の事が好きなんだな」

「へ……あぁ、うん……」

「随分と幸せそうで……これは気合い入れないとっ!」


 優馬くんとの初デート、絶対いいものにしたい!!


「さてと、早速いこうじゃないか!」

「えっ、もう?」

「善は急げ、だ!!」

「ま、まって」


 休みとは言え行動が早い。

 こうして二人の服選びが始まった。



「はぁ、はぁ……紗栄子、早い……」

「あーすまない……いつものペースだった」


 体育教師ということを自覚してよ……

 二人が集まったのはショッピングモールの服屋。

 なんだけど、周る前から私はもうヘトヘトだ。


「うーん、志乃はいつもより少し大人な感じにした方がいいかもな」

「大人?」

「あぁ。志乃は落ち着いた雰囲気だから、変に攻めすぎずにシンプルに行くべきだと思う」

「なるほど……」

 

 凄く参考になる。

 基本なんだろうけど、私はそれすらも知らないから。


「まあ志乃が攻めたいって言うなら全然いいが……スリットのあるタイトミニとか」

「……か、彼が喜んでくれるなら」

「おぉ!? 志乃が攻めた!?」


 そんなに驚く事? 

 確かに恥ずかしいけど、優馬くんが喜ぶなら私だって……


「ま、まぁデート中はシンプルにいかないか? 攻めるのは夜とかに……」

「よ……!? うーん……」

「あー、初めてで恥ずかしいのか?」

「それも、あるけど……」

「……まさか未成年?」

「っ!?」

「え」


 あ、まずい。


「志乃って交友関係多くないから、恐らく生徒……で、志乃と仲のいいのは」


 思わず目をそらす。


「真島か……」

「はい……」


 完全にバレた。

 紗栄子も優馬くんのクラス教えてるもんね。

 しかも優馬くんとの放課後勉強会も紗栄子には話してるし……ね


「はぁ……恋愛は自由だと私は思う」

「……うん」

「ただ、まぁ……押し倒すのは卒業してからにしろよ?」

「覚悟してるわわ……」


 ちょっと危ない雰囲気になりそうだけど、流石に一線は大人になってからにしないと。

 仮にも私、先生だし。


「さて、服に戻るとして」

「うん」

「ミニはやりすぎだけど、ロングとかはどうだ?」


 そう言いながら、手に取ったのはロングのタイトスカート。色合いはシンプルな黒。


「あ、いいかも……あまり露出もないし」

「志乃はスタイルも悪くないし、多少身体のラインが出ても問題ないと思う。大人っぽい雰囲気も出るし」

「ありがとう……じゃあこれを」

「まった」

「え?」


 さっ、と手に持ったタイトスカートを私から離す。


「他にも見てからだ。体力は無限だが、お金は有限だからな」

「……私はどちらも有限なんだけど」

「色々見た方がいいってことさ。で、次はトップスを……ああ、これもいいな」


 それから服選びは何時間もかかった。

 私は全然平気だが、服に興味がない人は苦痛に感じるかもしれない。

 服選びとは奥が深いのだと、私はこの一日で学んだ。

 


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― 新着の感想 ―
[一言] 教師と生徒なので、余程慎重にやっていかないと退職になりかねないですしね。 殺人未遂騒動で身辺に注目がいってる時期でしょうから余計に。
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