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第2話 983日目/日記

[私が結界で怪獣と…過ご]

「ちょっと、思考がただ漏れだから。人の日記を勝手に読まない」私は日記を覗き込んでくる左肩に乗った生き物に言う。

[怪獣って誰のこと?]

 生き物は尻尾をゆらゆらとゆらす。ときどきその尻尾が私の髪の毛に触れる。

「もちろん貴方のことに決まってるじゃない」

 100mを優に超し街を踏みつぶすほど巨大だった怪獣は、私の肩に乗って肩こりをほぐすぐらい小さくなっていた。

「ほんと小さくなったね…。最初はあんなに大きかったのに」

[うん。でもこの大きさも悪くないよ。君に甘えるにはこれくらいがちょうどいい]

 怪獣は私にそう伝えると、尻尾を私の右肩に乗せ、角を私の左のこめかみに密着させる。最初はあんなに恐ろしかった尻尾も角も今は愛おしい。

[君はあの頃と何も変わらないね]

 怪獣は無邪気にそう伝える。私は何も答えない。


 私の身体はこの結界世界に閉じ込められてから成長していない。14歳の姿のまま。肩にかかるぐらいの髪と少し深く切った爪、そして小さな胸。ちゃんと測ることができていないけれど、おそらく144cmの身長と41kgの体重もそのままだろう。

 背中を半分隠すぐらいの長い黒髪、ネイルでキラキラの綺麗で可愛い爪、平均より少し大きな胸。身長も160cmは欲しかった。体重は…今のままでいいけど。

 この結界に閉じ込められてからもう2年半以上経つ。本来なら17歳になって、少女より女性に近づいてる年齢のはずなのに。


[それより日記なんて書いていたんだね]

 私が何も答えないでいると、怪獣は少し驚いた様子で私に伝える。どうやら2年半以上一緒にいたのに気付いていなかったらしい。

「気が向いたときだけね。毎日書いてるわけじゃないよ」

 私は日記の頁をめくりながら答える。

[その割にはだいぶ分厚いね]

「そうだね、貴方と私しかいないけど、思い出はたくさん出来たみたい」

 私が笑いながら答えると、私の右肩に乗った怪獣の尻尾の先が少しだけ巻いた。これは照れているサインだ。2年半以上一緒にいると言葉にされない感情の起伏にも少しは分かるようになっていた。


[でも何で日記を読み返してるの。何かあった?]

「えっ…、そうだねぇー。」

 怪獣の疑問に私は少し言いよどんだ。まだ貴方に伝えてないことがあるの、と怪獣に全てのことを言うには、まだ私の心の準備が出来ていない。

「いや、何となく…っていうの?怪獣の貴方には分からないかもしれないけど、人間の私にはそういうときがあるんですっ」私は適当に誤魔化した。

[そういうものなんだ]

 誤魔化せたというより最初からあまり興味がなかった様子だ。

[じゃ今日はどんな思い出を作る?]

 私の左肩から降りた怪獣は地面についた長い尻尾を左右に振りながら私を見つめる。

「そうだね、今日は何をしようか」

 私も怪獣を両手で持ち上げ立ち上がった。私の日記はあともう少し分厚くなりそうだ。


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