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第5話 夢と現と。魔法少女と魔獣と。



「ねむ。お疲れのところ悪いんだけど1時間後に魔獣が出るよ。」

「ん。」

「魔獣はC級。猪型だ。場所は羽田空港。頑張ってね?」

「...分かった。」



影からちょこんと顔だけを覗かせるヤミとご飯を食べている私。それだけ見ると和やかだが、話していることは物騒である。



「...よし。」



皿を洗い終わって、白髪ロングに黒コートの姿に変身し、屋上にワープする。もちろん《夢》の力だ。今はまだ半径50mしかないから短距離転移しか出来ないけどいずれ距離も伸びるだろう。



そして私の姿は消えた。



────

──



『──到着便のご案内を致します。大阪からのHOL15便はただいま到着致しました。...HOLfifteen from O-saka is now flying.』

「あ、もしもし...はい...はい...。もうすぐ乗ります。...はい。」

「ママー早く飛行機乗りたい!!」

「ちょっと待っててねーまだ時間かかるから。」



空港内部では今日もいつも通りだった。だが、どうにも空は曇っている。ねむはそんな曇り模様の空を見上げながら空港の屋根に座って待っていた。



「...後何分?」

「2分後だね。」

「ありがと。...それで?他の魔法少女達は来ないの?」

「ん?あぁ。そんな事ね。結論から言うと暫くは来ないよ。」

「なんで?」

「契約妖精...つまり僕達のことだね。その妖精が僕よりも弱いからさ。」

「...。」

「弱いと魔獣の気配を察知するのが遅れるからねぇ。その点僕はどんな魔獣でも最低1時間前には出現場所、ランク、種類が分かるのさ。」

「...へぇ。」

「見直した?僕のこと見直した??」

「いや全然。」

「...。とりあえず頑張ってね。...っていっても直ぐに終わりそうだけどねぇ。」

「今日はちょっと解剖してみたいなって。」

「ヒェッ...!気でも狂ったか──いてっ!?」

「失礼な。ただ魔獣について知りたいだけ。」

「...そう。あ、もう来るよ。じゃあ僕はまた見守ってるよ。」

「...ん。」



白髪ロングの魔法少女はようやく重い腰を上げ、もうすぐ来るC級魔獣に対抗する為に《夢》を展開した。



──ブォン...!



前回と変わらず半径50mの半球状の膜が張られる。これは私以外には見えないものである。そして...



──ピシャッ!!...ドゴォォォォォォンッ...!!



曇った空からなんの前触れも無く黒い雷が落ちる。本来、空港では従来の雷を落とす避雷針とは違い、雷を発生させない避雷針が使われている為、落ちるはずが無いのだ。

その不可解な黒雷が落ちたことによって空港の管理棟は騒然としていた。



「──まさか!魔獣か!!」

「嘘だろ!?なんでこのタイミングで!!」



そう。タイミングが悪すぎたのだ。それは何故かと言うと今夜、この国の三大財閥の内の一つである四ツ谷一家がここ...羽田空港に帰ってくるからだ。

よりにもよってその羽田空港に魔獣が襲来してくるなんて...。



「くそっ!一体どうしたらいいんだ!!」

「...いました!猪型の魔獣です!」

「猪か!...魔法少女がくるまで突進でもしなければいいんだが...。」


窓に手を当て、1人愚痴る。


「...失礼します!報告します!魔獣の様子がおかしいです!」

「様子がおかしいだと?」

「はい!何故か跳ね回って暴れているのです!...まるで見えない何かと戦っているかのような...。」

「...うーむ...。もうすぐB級魔法少女が来るはず...。それまでそのままでいてくれれば此方としては有難いな。」

「...ですね。」

「「...はぁ...。」」



ため息が被る。今まで遭遇したこともない魔獣をこの目にするとは思っても見なかった。大事にならなければいいが...。



─────


──



突然だが、『夢』と聞くと皆は何を思い浮かべるだろうか。将来の『夢』?寝ている時に見る『夢』?まだまだあるでしょう。例えば...『正夢』。夢で起きたことが現実でも起きること。私がスキルで1番使用頻度の高い『夢』はこの『正夢』だろう。自分の作り出した夢の空間で空を飛ぶという夢を見てそれを正夢として現実で起こす。夢と現の狭間ならば同時にそのようなことも可能である。

私のスキル《夢》はそういったことも出来てしまうのだ。そう...『夢』と付くものならば...。



今、私は実験と称してC級魔獣である猪型魔獣に『悪夢』を見せている。どんな夢なのかは知らないがあっちこっち跳び回っていることから相当なものだろう。




そうして暫く観察していたら、体の調子というか、元気が無くなってきているように感じた。



「...それはマナだよ。」

「マナ?」



神出鬼没なヤミにはもう驚かなくなった。

ヤミが言うには契約した魔法少女には元から備わっているマナを感知することが出来るそうだ。

だから、普通の人も感知出来ないだけで持っている人は持っているのだ。

ただ、私のマナは相当多いらしい。歴代のS級魔法少女と並ぶかそれ以上な程に。



「──見つけたぞ魔獣め!覚悟しなさい!!」


急に背後から現れた1人の少女にピクっと肩を上げるが直ぐに冷静さを取り戻す。私がバレている訳では無い。だってここは夢と現の狭間。



「ロックアーマー!」



──ピキピキピキ......。



地面が割れ、固まったコンクリートが宙に浮く。少女は叫び、魔獣に肉薄する。そんな少女の体にさっき浮かせたコンクリートが形を変えて少女の腕にくっついていく。そしてあっという間に腕だけごつくなった少女はそのまま...



──ドゴンッ!!


「ブギィッ!?!?」



少女の姿からは想像もつかない程吹っ飛ばされる猪。そんな猪を見て私が思ったことはただ1つ。



「...悪夢見た後にこれ...絶対病む...。」



悪夢を見せた本人が言うことでは無いが名も知らぬ少女にボッコボコにされている様子を見るとそう言わずにはいられなかった。




「...今回は実験しすぎて獲物取られちゃったけど魔法少女の戦いを間近で見られる機会なんて無いでしょうからこれはこれで...。」

「...いや倒しなよ。」

「...。」



私は隣で浮くヤミを無視した。





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