第96話 セーフハウス
「ユウキ、お前は病院に入らなくて大丈夫なのか?」
イブは少しだけ心配して、ユウキの様子を見た。
「あ~、大丈夫だ。自己診断でも異常ないし、少し時間はかかるが、自動治癒機能が働き、通常の人間の10倍の速さで良くなるから」
「そうか」
病院のロビーで残りのチームが、3人のケガが心配で、待機していた。そしてマリが、
「あと、4人のフランス諜報部の人たちも心配だね」
「そうだね、たぶんトニーは今日、入国したから、見つけやすかったのかもしれない。残り4人はどうやって探すかな。さっきサーチした時にも銃や武器を所持している人はこの安全区域だけでもざっと200人はいたからね」
ユウキが困った顔をしていると、ダニエル中尉が
「ユウキさん、フランス諜報部が使用している、セーフハウスに行って、情報収集すれば、たぶん、見つかりますよ」
「セーフハウス?」
「はい、カミーユ大尉が諜報部の長官にあの時、聞いておいてくれたんです。そこは、最新式のPCや機材、武器、お金など、諜報活動をするのに必要な物がそろっています」
「そんなところがあるの?」
「はい、世界中にありますよ。ここムセビアにもあります。ここからなら、車で15分ぐらいですかね」
それを聞いたユウキやマリ、イブは目を合わせて頷いて
「よし、それじゃあ、そこに行こう。ベルナールは病院で待機していて、なにかあったら、連絡をちょうだい」
「了解、それと、セーフハウスにお金があるようでしたら、戻る時に持ってきてくれないですか。さっき病院の人に治療費をあとで、払ってくれと言われてますから」
「ふ~、まったく、爆発事故でけがして、こっちは被害者なのに、ちゃっかりしてるな、わかった、戻る時に持ってくる」
ベルナールは皆を見て心配そうに
「みなさん、気をつけてください。あいつら、普通じゃないですよ」
マリは真剣な顔で
「もう絶対、誰もケガはさせないわ。こんなことをした犯人を私、許さないから!」
マリは震えるぐらい、怒りまくっていた。そして、病院の外に止まっていた、大きめのバンを見つけてイブが
「マリ、ちょっとこの車を借りよう、どうせ夜だし、また、ここに戻ってくるんだから、大丈夫よ」
イブは扉に手をかざし、手が赤く光った途端、車の扉がガチャと開き、また、エンジンに手をかざしたら、車のエンジンが動き出した。
「よし、みんな乗って、ドニーズ中尉、運転お願い」
「わかりました」
6人は車に乗り込み、安全区域のセーフハウスに向かった。中心地から少し離れた、雑居ビルに着いた。
「こんなところにあるの?」
「はい、それでは入りましょう」
1階の扉を開けて、うす暗い、地下1階に通じる細い階段を降りた。そこにも古い木製の扉があった。ダニエル中尉が壁のブロックを2カ所押すとそこから、タッチパネルが飛び出してきて、暗証番号と網膜スキャンで、扉が開いた、その中は、最新式の設備が整った30㎡ぐらいの室内だった。
みんなは、室内を見渡し、マリが
「すごいね~新しい機械がいっぱい、ウチの局よりすごいんじゃない」
ダニエルは室内に入るとすぐに機器の電源を入れて、起動した。
「それでは、安全区域の防犯カメラ、また、衛星からの映像で、諜報部4人を探します。
フランスのサーバーにもアクセスして、顔認証機能で探していきます。イブさん、僕は衛星の方をいじりますので、防犯カメラの方はお願いできますか?今、アクセスコードもそちらに送りますので」
イブはやっと役に立てると思い
「よ~し、わかった。任せておけ、そうだ、ダニエル、4人もそうだが、あのキールという男もどうせなら、探そう、今、私のPCから、画像データを抽出して、お前に送る」
「わかりました」
マリは捜索は2人に任せて、これからどのように動くかユウキ、葉子、ドニーズと打ち合わせをした。
ユウキは
「ダニエルとイブはここで、捜索と指示をしてもらい、我々は現場に行って、この指示書を4人に渡し、任務中止させよう」
それを聞いていたマリは、
「ねえ、ある程度近くまでは、みんな、同行してもいいけど、現地に着いたら、私一人で、行くよ。
もう、これ以上、みんなを危険な目に合わせたくないから」
それを聞いていた葉子は
「マリさん一人じゃ、危険ですよ。警護官として、お供します」
「そうだよ。マリ、そのために、みんなここに来たんだから」
マリは少し考えて
「いいわ。でも、諜報員との接触は私が行くわ。中尉、その指示書、私にちょうだい」
ドニーズ中尉は指示書をマリに渡した。
葉子は室内にある防護服があるのに気づき、
「マリさん、危険ですから、このベストを洋服の下に着てください。何があるかわかりませんので」
マリは言われた通り、ベストを着た。
「みんなも、まだ、あるから、着てください」
「了解」
「マリ、諜報部の一人を見つけたぞ。さっきの爆発騒ぎで危険を感じたのか、移動しているぞ」
「わかったわ、それでは、4人で行ってくる」
ダニエル中尉は
「皆、ウォッチに位置情報を随時送信するから、諜報員には、ウォッチのナビ機能にしたがえば、たどり着けるはずだから」
皆、ウォッを見て、現在地と対象者の点滅を確認した。
「確認した。じゃあ、行ってくるね」
「みな、気を付けてくれ、危険があったら、すぐに逃げろよ」
イブとダニエルは、少し心配そうな顔で見送った。




