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平和への使者  作者: DAISAKU
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第90話 棺の謎

「あ~、もう、あれから、1カ月以上は経つのに、なんの手掛かりもないなんて、もう、ため息しかでないな」


考古学で主に古代文字を専門としているミッシェルは1万2千年以上前の海底の地層から出てきた棺のことについて、調査をしていたが、全く進展はなかった、発見者のモーリスからも多額の援助をもらい、世界での似たような発見や棺に描かれていた文字の解明に必死に取り組んできたが、ほとんど、解明できなかった。

強いて言えば、棺に描かれている、人とその背中に生えている羽、まるで、天使か鳥人間のような模様がエジプトやメソポタミア、インカ、マヤ文明など、かつて栄えた古代文明に共通する絵柄と類似している点ぐらいだった。


「ため息ばかりついていてもしょうがない、もう一度、博物館の現物でも見て、原点から、調査しなおすか」


ミッシェルは、まるで、自分自身を元気づけるかのように、独り言をつぶやいた。

ミッシェルは独身で普段は大学の講師や、塾の先生など、不定期に仕事を入れて生活しており、自由気ままなほうが、誰にも、邪魔されず、自分の調査研究に集中できる時間ができることもあり、案外、この生活を楽しんでいた。


「おっと、いけない、今日はモーリスに定期連絡をする日だったな」


ミッシェルは思いついたら、すぐに行動をしたがる性格ですぐにモーリスに連絡を入れた。


「モーリスか」


「ミッシェル、どうしたんだ、こんな朝早くから、まだ、7時30分だぞ。私が、朝が弱いのを知っているだろ」


「すまない、今日は定期連絡をする日だと思いついたから、すぐに連絡をしてしまった」


「まあ、いいが、何かわかったのか。ふわあ~」


モーリスは大きなあくびをした。


「すまない、何もわからずじまいだ、それで、今日、もう一度、あの棺の現物を見て、何か見落としているところがないか博物館に行ってみようと思うんだ。もう最近は前みたいに並ばなくても案外すぐに入れるみたいだしね」


「そうかあ、私も、今日はなにも予定もないし、久しぶりに博物館も悪くないな」


「本当か、じゃあ、10時ぐらいに、現地で待ち合わせをしよう」


「いいぞ、どうせなら、ランチも一緒にどうだ。私も今後のことをお前と話したいと思っていたからな」

「わかった、じゃあ、あとで」


1カ月ぶりに会う約束をしたミッシェルは援助を受けていることもあり、とりあえず、調査した、膨大な資料を持って、博物館に行くことにした。

そして、ミッシェルはパリ郊外に住んでいるため、小型車(免許のいらない車)で博物館まで行くため、必要な物を積み込み、家を出た、この車は高速は乗れないし、一般道でもあまりスピードを出せないため、家を早めに出ることにした。


パリは今日も天気が良く、湿気も少ないため、いつも通り、7月だというのに快適な温度で、郊外にある、国立博物館は、日曜日ということもあり、かなりの人が来場していた。


「なんだよ。結構、人が多いじゃないか。あれから、1カ月過ぎたというのに、まだ、古代の棺展の看板が出ているな。まったく、発見者の名前もどこかに入れてくれりゃあいいのに」


モーリスも早めに来て、博物館の前でウロウロしていた。


「お~い、モーリス」


博物館の入り口にミッシェルが声をかけた。二人は握手をして、挨拶をした。


「まだ、開館したばかりだから、中はそんなに混んでないぞ」


「なんだよ。もう中にも入ってたのかよ」


「そうだ、なんか、入り口でじっと待っているのも、退屈だからね」


「どうだ、棺の方は、なにか、気が付いたか?」


「う~ん、まだ、じっくり見てないんだけど、外気にさらされたせいかな、なんかブロンズっぽい色に変わっていたな」


「はあ~?色が変わるわけないだろ、ここは温度や湿度など、最高の環境になっているんだから」


「そうだな、光の加減でそう見えたのかな」


「まあ、とにかく、行ってみよう」


二人は、ゆっくりと1階の大ホールに展示しているところまでゆっくりと歩いて行った。そして、棺のところまで、来た。


そこでモーリスも


「本当だ!なんかブロンズに見えるし、以前は少し赤くて、もっと光沢があったように見えたが」


「そうだろ、やっぱり、見間違いじゃないよな」


「天井や壁からの光も変な色でなく、その物の本来の色彩がわかるようになっているから、

たしかにおかしいな」


そう言って、しばらく、2人で棺を見ていたら、ミッシェルが大きい声で


「あ~!」


「おい、ここは博物館だぞ、少し静かにしろ」


「モーリス、この棺はお前が発見した物じゃないぞ!」


「何を言っているんだ。こんな精巧に作られた物が違ううなんて何を言っているんだ」


「違うんだよ」


「色だろ、たしかにちょっと違うけどな」


「違う!文字が全く違う形になっている」


モーリスもその声に驚いたように


「本当か、よく確かめてみろ」


「今日は、僕がこの1か月、遊んでいたわけじゃないことを示すためにこのカバンに調査資料をたくさん持ってきたんだ。これを見てもらえば、わかるよ」


そう言ってミッシェルは資料を出した。


「確かに、正面・横・後ろ、上部、ほとんど文字が違うな」


「こんなことがあるのか、もうひとつ棺があったなんて」


「レプリカじゃないのか?」


「それなら、以前と同じ文字の形にすればいいし、わざわざ、ここまで、変える必要はないだろ」


「う~ん、でもな、防犯ガラスで囲われて、しかも、センサーなどもあるから、電源でも切らない限り、交換は無理だろ」


「でも、なんで交換する必要があったんだ?」


「全くわからないことだらけだな」


「とりあえず、政府の担当者に連絡をしておこう」


「でも、連絡をしたところで、どうなるわけでもないだろうがな」


2人は、いろいろと考えをめぐらせたが、謎は深まるばかりだった。

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