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平和への使者  作者: DAISAKU
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8話 はじまりと出会い(英雄伝記編 1 )

いよいよ受験シーズンが近づいてきた、マリが近くの公立高校に

行こうかと悩んでいた。


自宅で両親に相談したら母に


「あなたの人生なんだから、自分で考えて決めなさい。」


父も

「マリがやりたいようにやればいい。私はいつも応援するよ」


いつもながら、親の手本のような回答だが、いつもの会話のようにあまり感情というか

気持ちがこもっていないような気がする。本当に自分のことを思ってくれているなら、

周辺の高校や私の成績やどんなことが具体的にやりたいのかを聞いてどんな高校に行くのがよいか、真剣に考えてくれるはずだ。だいたい、中学3年生の私にどの学校が良いかなど、細かくわかるわけがないのに、だから両親には


「私、普通の高校に行って、普通の高校生になりたい、無理に勉強して進学校に入っても毎日大変になりそうだから、うちからも近い須地伊留高校に行く」


「マリが決めたなら、そこでいいと思うわ。うちからも歩いて30分はかからないしね」


「歩いて行けるなら、近いし便利でいいな」


母も父も私にはいつも

優しくしてくれるのだが、やっぱり、

こんな感じなんだなあと思ってしまった。

もし、今、おばあちゃんが生きてたら、こう言うだろうな、


「マリ、自分の力の限り努力しなさい。本当に生きるということは、常に真剣に向かい合い、戦うことよ」


3年前に亡くなった祖母のことがいつも頭をよぎる、

ユウキからは山梨県内トップの進学校私立美波高校に行くように何度も言われている、

私の成績では無理そうだし、そんな学校に行ったら勉強漬けの生活になるからいやだと言っているが、

聞く耳を持たない、マリは、ユウキの言われた通りの勉強をしてきたが、

公立須地伊留高校本命で私立美波高校は記念受験として受ける気持ちでいた

マリがそんなことを考えている中・・・


私立美波高校を創設した女性マツが残り少ない寿命の宣告を医者から告げられていた。


「マツさん、もう無理なことはしないでください。普通に生活しても、あと1年持てばいいほうです。」


マツは病院の窓から見えた小さなツバメが飛び立つのを悲しい目をしてながめていた。

付き添いの息子、竜彦が担当医に


「先生、永い間、色々とありがとうございます。母も今年で87歳です。これからはゆっくり

と家で過ごしていきます。」・・・


自分の息子が担当医の先生と話している言葉を全く聞かず、かつて、自分が憧れ、

そして、自分がこれだけ充実した人生を送れた、尊敬できる、女性のことに思いを巡らせていた。


70年以上前、大戦中、貧乏な家で生まれた自分が乞食のような生活をして、毎日、明日も生きられるかどうかの瀬戸際の日々を送っていた。


ある日、親の指示で内職した、籠を背負って、町のお店まで運ぶように言われ、大雪がすごく、視界も悪い中、行く道の途中で、倒れ動けなくなってしまった。

そんなところをその女性に助けられた。


「しっかりして、起きて、起きて・・・」


マツは声は聞こえるのだが、反応することはできず、もう体を動かすことできないほど衰弱していた。

だんだん、声が聞こえなくなり、意識を失った。

マツは1日、全く起きることができず寝込んでいたが、暖かい部屋の中で静かに重い目をあけた。


「私、どうしちゃたのかしら、ここどこ?」

大きな暖炉があり、洋風の造りの家の中にいた。

部屋の奥の大きな扉があり、そこから、外へ出れそうだったため、静かにその扉を開けた。


「ぎい~」と大きい音が鳴り、


「あれ、目覚ましたんだ」


自分と同じくらいの年の女の子がそこに座っていた。


「よかったね。無事で、たまたま、私が近くを通ったから、助けることができたけど、あんな吹雪の中、歩いたら危ないわよ」


「私、どうしてここに?」


「あれ、覚えていないの?あなた、あの雪の中、道に倒れてたのよ。私と連れが歩いていたところ、声をかけたけど、起きなかったから、私の連れがかついで、ここまで連れてきたのよ。ちょっと、今、その連れは用事で出かけているけど」


「そうだったんですか。私みたいな者を助けていただき、本当にありがとうございます」


「私みたいな者?何それ?あなたは人間でしょ、私と同じでしょ。そんな言い方やめてくれる!」


「でも、私、こんな身なりで貧乏で、本当に何の価値もないような人間なんですよ」


急にその女の子は立ち上がり、助けた子のほっぺたをかるく叩いた。


「あなたの価値はあなたが決めるんじゃない。もちろん、私でもない。生きている人間すべて価値があるかなんかわからない。でも自分自身が価値がないと言ったら生きる意味が

なくなってしまうでしょ。だから、価値ある人間になるため努力すればいいだけよ」


マツはキョトンとした顔をしてその話を聞いていた。

しばらくして、マツは思った。


こんな自分に対して、真剣に話してくれるなんて。

自分の親ですら、まるで奴隷のように扱われてきたのに・・・






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