63話 与えられた時間
「葉子、どうやら電源は博物館1階裏側の管理室内にあるようよ。ご丁寧に壁にサイン標識にそう書いてあるもの」
「なるほど。そこに入ることができれば、2分間は照明を消せるというわけね」
「クロードも、もうすぐ、ここに到着するから、ここは私達に任せて、葉子と如月は棺の展示室そばで待機していてくれる。これ、ここの係員の証明カードを手にいれたから、首からぶらさげておいてね」
「さすが、国土監視局、いろいろと便利なのね」
「本当はこんなことをしては、いけないんだけど、このパリをイブの怒りから救ってくれたマリさんのお願いだから、これぐらい、どうってことないわ」
「ありがとう、たしかに今、展示している棺を1回移動して、別の棺をそこに置かなくてはいけないから、その時に人手は必要だしね」
如月が難しい顔をして、
「しかし、もうすぐ深夜の0時だというのに、入場者は減るどころか、なんか増えているように感じるね」
「そりゃあ、あれだけ並んでいるんだから、まさか、入場拒否もできないでしょ、とにかく、あと30分しかないんだから、急いで行って待機しましょう。それじゃあポーラよろしく頼むね」
「任せて、それと葉子、移動後に、旧日本軍情報局支部の場所を私のスマホに送っておいて、これから、そこが拠点になりそうだから」
「わかったわ」
そして、別々に担当する場所に分かれた。葉子と如月は係員用の通路を通り、急いで会場に向かった。そして、1階展示室についたが、予想通り、ものすごい人の数だった。しかし入場者と別の関係者用通路を通ったため、棺の裏側になんなく近づくことができた。そして、棺のすぐそばまできたが、二人は棺の廻りを見て驚いた。棺の廻りには強化ガラスで覆われ、しかも、天井からは防犯用センサーが棺に向かって働いており、照明を切っただけではとてもすぐには移動できそうになかったのだ。
「葉子、僕たちは、どうやら、軽く考えていたようだね。こりゃ~」
「そうね、これでは、ユウキさんがここに棺を持って移動してきても簡単にはすり替えが難しいわね」
2人は時間がせまってきている中、あれこれ考えはじめた。
「フランスもさすがに大金をはたいて購入したものを簡単には盗ませないようにセキュリティー対策は万全といったところだね」
そして、しばらくして葉子が
「そうだわ、さっき、通った通路に倉庫があったわ、ユウキさんがここに移動してきたら、一度、この展示してある棺を倉庫に瞬間移動して隠して、アメリカから持ってきた棺をもう一度、瞬間移動でこの強化ガラスの中に入れればいいんじゃないかしら」
如月は葉子の考えたことに頷きながら
「それはいい考えだね。でも、一時的とはいえ、防犯センサーが働き、警報が鳴るのはしょうがないな」
「それはしょうがないわよ。一時的な停電による、誤作動ですとその時に放送した方がいいわね」
「そうだな。こっちは棺を倉庫に入れた後、すぐに運び出す準備をしなければならないから、ポーラに行って、放送室から、入場者に言ってもらえるように動いてもらうしかないね」
「すぐに連絡してみる」
「プルル・・・ポーラ」
「どうしたの葉子、あのね、こちらの棺の廻りに強化ガラスと防犯センサーが働いて、簡単にはすり替えが難しいの、だから、すり替え時に防犯センサーが働いて一時的に恐らく、警報が働くと思うんだけど、入場者向けに停電による誤作動で警報がなったと放送してほしいの。私達はその関係で車で情報局まで棺を運ぶようになるから、そっちに行けそうにないから、お願いできるかしら」
「わかったわ。運のいいことにこの管理室に放送設備もあるから、大丈夫よ。クロードもこちらに着いたから、任せておいて」
「本当!それはラッキーね。よろしくね」
葉子と如月も倉庫に行き、棺の移動先の場所を確保した、葉子は人数分の暗視用のスコープを
手に握りしめ、時間が来るのをそこで待った。
そして、23時58分になり
「もうすぐね」
葉子が小さい声でつぶやいた。
棺の展示室そばが赤く光りだした。23時59分になった。会場の照明が落ちて場内は真っ暗になった。
「シュ~」
と赤い光が輝いたと思った瞬間、3人と棺が展示室に到着した。
「うわあ~、真っ暗で何も見えないわ」
「マリさん、葉子です。このスコープを付けてください。ユウキさんとイブさんもこれをつけてください」
「これは、いいね、はっきりと見える」
「ユウキさん、時間がないので簡単に説明します。今、展示してある棺の廻りに強化ガラスがあります。なので、すり替えができません。そこで、あそこで如月が手をふっていますが、その横に倉庫がありますので、そこに一度、この展示してある棺を瞬間移動で移し、アメリカから持ってきた棺を同じく瞬間移動でこの展示室の強化ガラス内に収める、そして倉庫にあるイブさんの棺を後で車で運び出す。こんな感じです」
「了解!」
そして、展示してある棺が赤く光りだした。入場者は停電に驚いていたが、0時になり赤く光っている棺に主催者側の幻想的な演出だと勘違いをした。それだけ赤く光った棺が美しかった。
そして、瞬間的にその赤い光は消えて、防犯センサーによる大きな警報サイレンが鳴った。しかし、また、10秒後に赤い光が輝きだし、元の位置に棺が戻った。そして、警報サイレンが止まった。この動作はマリ達からすれば、とんでもないすり替え作業だったが、入場者達はその手の込んだ演出に大騒ぎで喜び、皆で拍手をした。そして、何事もなかったように会場の電気が点いた。ポーラ達もその様子をモニターで見ていたため、放送をする必要はないと思い、足早に管理室を後にした。葉子達はとんでもないことをして、会場がパニックになると思ったが、逆に入場者を喜ばせ、その演出に博物館に対して拍手喝采をするなんて夢にも思わなかった。
その喜び興奮している入場者のおかげで、倉庫にある棺をシートでカバーをして、台車でなんなく、外にある車に運び出すことができた。建物裏側に駐車されていたワゴン車と乗用車は
静かに博物館を後にした。




