5話 輝く少女マリ
スミコの廻りに女子高生が取り囲んだ、そんな時、マリが公園にやってきた、
ユウキは笑顔で手を振ってマリを迎えた。
「マリちゃ~ん、遅かったじゃない。急いでっていったでしょ。」
「あのね、私、学校では友達もいないし、呼ばれている意味がわからないんだけど。」
「ほら、あそこ見て、学校の子が大変なことになっているでしょ。」
マリは木の陰からヒョイと顔を出した。じ~っと見てみると
スミコが好地留高校の生徒に取り囲まれていた。
ユウキがなんで自分をこんなところに呼んだのか、全く意味が分からなかった。
「ねえ、あれスミコだよね。なんかしちゃったのかな、中学でのいじめだけでなく、高校生にもいじめしちゃったのかな。」
見学者になっているマリに
「マリちゃ~ん、大チャーンス!ここでスミコちゃんを助ける。
そしたら、学校でのいじめもなくなるんじゃな~い。」
マリはため息をついて
「何言ってるの。いい気味じゃない、助けるなんて、ありえな~い。」
マリが言ったとたん、ユウキは
「えい。」
マリの背中を押した。そこで、マリの声をまねして
「やめなさ~い、スミコに何やっているの。」
言い放った。女子高生達やスミコが一斉にこちらを見た。
アヤコが
「おや、あんたの友達かい。ということはいじめ仲間ということかい。」
「違います、違います、通りすがりの者です。気にしないでください。」
マリは慌てて弁解したが、アヤコ達はそんな言葉は無視して、
「こいつも、いじめ仲間だ、ヤキ入れてやるよ。」
女子高生の一人が言った。
スミコが
「こ~の うじ虫、なんのつもり?」
マリは無視した。心底スミコのことがきらいなのだ。
「おいおい、仲の悪いふりをして友達を逃がそうという魂胆か?せこいね。」
「おい、その子のカバンの中、確認しな、カッターとか危ないもんでも入れてたら困るからね」
アヤコが仲間の一人に命令した。
「リョーカイ」
女はマリのカバンをふんだくって中を確認した。
「危ないもんは入ってないないっすよ。」
その言葉を聞いた途端、アヤコ達はスミコに蹴りやビンタをくらわした。
いくら体付きが良いスミコでも女子高生に囲まれてはなすすべがない。
ユウキはそんな状態ををみて、
「このままじゃ、二人とも、大けがをしてしまうな。」
自分が助けに行くしかないか、本当はマリに自分の力で何とかしてほしかったのだが、その時、
「あれ、なんだ、これ」
女の一人がマリのカバンに入っていた小さい袋を取り出した。マリはそれを見て
「それには、さわらないで!」
大声を上げた。
「金でも入ってるのか。」
女はその袋を開けようとした。その時だった、いつも弱弱しい、
いかにもいじめられっ子といったマリの容姿が一瞬にして変わった。
「さわるなと言ってるだろ!」
瞬間的にその小さい袋とカバンを奪い取った。女がマリの方に向かってきたが、
すぐにマリに吹っ飛ばされた。
アヤコをはじめ残り4人の女子高生は隣で倒された仲間をみて、歯向かってきたマリに
「てめえ、何してんだ。」
大声を出した。4人の高校生が今度はマリに立て続けに向かってきたが、
マリはひらひらとかわしながら、突きのようなものを次々と繰り出し、
瞬く間に4人の高校生を吹っ飛ばした。隣でボロボロになっていた、
スミコもきょとんとした顔でマリを見ていた。ユウキは助けに行こうとしていたが、
あまりのマリの変貌ぶりに言葉も出ず動くこともできなかった。
ユウキはマリの攻撃を見て
「あれは気功波、なぜマリちゃんがあの技を使っている、まさか!」
ユウキは驚きを隠せなかった。昔、この技を使っていた人がいたけど、なんでマリちゃんが・・・
ユウキがそんなことを考えている中、マリは周りを見渡して、
「また、やっちゃった。」
ユウキがマリに近寄り、
「マリちゃん、大丈夫?どうなってるのこれ。」
驚いた声でマリに尋ねた。スミコもその様子を近くで聞いていた。
「わたし、帰る。」
マリはそう言ってそそくさと帰ってしまった。スミコはマリに声を掛けたい様子だったが、
マリはスミコとは口も聞きたくなかった。ユウキは
「スミコちゃんも大丈夫?」
スミコは同級生にかっこ悪いところを見られたことや、こんなに大勢に殴られたことが
よほど怖かったようでただうなずくだけだった。マリを追いかけたいユウキだったが、
スミコやここに倒されている5人を置いて帰るわけにはいかないと、
倒された女子高生一人、一人に声を掛けた。
どうやらみんな軽い脳震とうを起こしただけで、一人もけがをした子はいなかった。
これなら大丈夫と思い、けがをしているスミコを病院に連れていくことにした。
女子高生はマリに吹っ飛ばされたことにとても驚いたようで、しばらくしてから起き上がり、
走るように逃げていった。
ユウキはスミコを病院に連れて行こうと肩を貸して歩きはじめた。しかしスミコは
「一人で歩けるから。」
とユウキの体から離れた。
「大丈夫?病院まで一緒に行くよ。」
「病院には行かない。それとおせっかいなことはしなくていい。
さっきのことは誰にも言わないで。」
いつも元気いっぱいのスミコだが、さきほどの出来事に少しおびえているようで
すごくおとなしかった。
顔も真っ赤になっていたのでユウキは心配だったが、スミコとここで別れることにした。
帰り道、ユウキはマリがあんなに強いのにどうして学校でいじめられているのか
不思議でしょうがなかった。