50話 二人目の協力者
5月のパリ、今夜は15℃、日が暮れると、グッと寒くなってくる。フランスは日本と同様四季があるが、国土が広いため、地域によっては気候状態もだいぶ違う。
マリ達はフランスに来た初日からもめごとに巻き込まれ、夜ご飯も食べれない状態で国土監視局の取調室にて、女性の尋問に立ち会っていた。取調室にはクロード警部補とポーラ巡査部長が軍から助けた女性に質問した。
「あなた、お名前は?どこに住んでいるのですか?」
女性同士の方が話しやすいこともあり、ポーラ巡査部長が丁寧に尋ねた。女性は返事をすることもなく、黙ってポーラを見つめていた。マリやユウキや葉子とポール局長は隣の部屋のマジックミラー(取調室からは鏡、隣の部屋からは取調室が見える)から、その様子をじっと見ていた。
「ふ~、話していただかないと、ここから出ることはできませんよ。それでは、なぜ、軍に追われていたんですか?どこかで、犯罪行為を働いたんですか?」
ポーラがいくら話しても、その女性は答えることすらしなかった。
ポーラは困りはてた様子で、クロード警部補もため息をついた。ポーラは負けじと質問を繰り返した。
「あなたは、どうしたら、質問に答えてくれるのですか?このままでは、ずっとここから出れませんよ」
そう言った、その時、女性はニコっと笑い、
「マリ・トビシマはまだいるの?」
やっと、その重たい口を開いた。
「え~、近くで待機していますよ」
「ぜひ、直接会って、話がしたい」
ポーラとクロードは少し驚いた様子で
「この取り調べが終わらないと、会うことはできませんよ」
その女性は二人を睨みながら
「わたくしは、マリ・トビシマとしか話したくない」
クロードは隣の部屋にいるポール局長のところに行き、
「局長、マリさんを取調室に来てもらってよろしいですか?そうしないと、話が進まないので」
「マリさん、よろしいですか?」
「はい、かまいませんよ」
「マリだけだと、心配なので、僕も一緒にいきます」
ユウキはこの得体の知れない女性にものすごい警戒心をいだいていた。
そして、二人は取調室に入った。室内ではマリ、ユウキがその女性の前に行き、クロードとポーラは取調室の壁際に立って、立ち会っていた。
マリがその女性の前に来た途端、その女性がイスから急に立ち上がり、マリの目の前に行き、
両腕を広げながら、片膝をついて、頭を下げ、こう言い放った。
「マリ・トビシマ、先ほどは、わたくしを救っていただき、ありがとうございます。あれだけの人がいたのに、危険をかえりみず、マリ・トビシマだけが、唯一、あの愚かな者たちに立ち向かい、その雄姿と多くの者たちを従える姿に感動を覚えました」
マリ達は急な態度の転換に驚いた。
「立ち上がってください。困った人を助けることは人として、当たり前のことですから」
それを聞いた時、その女性は顔を上げて、マリを見て、ニコっと笑った。そして、再び頭を下げ、両腕を広げた状態で手の平を上に向けて
「わが一族の誇りにかけて、恩を報いるためにこれから、あなたに従います」
「そんな、大げさな、大丈夫ですよ。そんなことをされなくても、わたしはあなたが無事だっただけで、すごくうれしかったんですから」
また、その女性はマリを見て笑顔になり、
「いいえ、礼節を重んじるのは、わが一族の誇り、決して、この想い揺らぐことはありません、
マリ・トビシマはこれから、どのようなことを望み、生きていかれるのですか?わたくしにできることなら、手助けをさせていただきます。せめて、その望みがかなうまで、わたくしを従者として、お使いください」
マリはずいぶん古風な考えをお持ちの方だな~と感心してしまった。だが、マリも一、武道家として、礼節を重んじる者として、その女性に真剣に話をした。
「私の望み、願いは、この世界の人類が平和で滅亡することがないようにしたいと思っています」
その女性はびっくりした顔で
「マリ・トビシマ、どんな生物も永遠に滅亡しないようにするのは不可能です。どれくらいの時間のスパンで平和と繁栄を維持することをお考えですか?」
マリはそんなことを考えたこともなかったので、どうやって答えてよいか、考えてしまった。
それを見ていたユウキが
「マリ、人間はその人が生きる時間を精一杯生きて、その人ができることをすれば良いと思う。そして、また、その後、若い人たちに受け継いでいけば良いと思う。ヤエさんやマツさんから、マリが受け継いだようにね」
「そうだね。自分が生きている間、精一杯、平和を守り続けることが大事だよね」
「そうですか。マリ・トビシマがご存命の間ということで、よろしいですね。承知しました。
わが一族の全てを駆使して、この人類をお守りいたします」
マリは、あまり深く考えずに、手を差し出して、
「よろしく、お願いします。え~と、お名前はなんというんですか?」
「イブと申します」
「イブ?本名ですか」
「はい、本名です」
クロードやポーラはマリの質問にはテキパキと答えるこの女性の態度にも驚いたが、マリがこれだけ、この女性に好かれてしまっていることに、もっと驚いた。
「フランス人でしょうか?」
「違います」
「どちらの方でしょうか?」
「はい、フ~・・・私は、今から1万2千523年前にこの地球にやってきました。この世界でいうとクジラ座にある恒星で、その星の名はサターンと言います」
「サターン?」
「はい」
「わたくしはサターン人です。ご存じなのですか?私がいたアトランティス大陸は地殻変動でこの世界から消滅しましたから、知っている者など存在するはずがないのですが」
「え~と、ユウキくんから聞いたんですけど」
マリは無意識にポロリとユウキの話をしてしまった。
「ユウキ?」
「はい、わたしと行動を共にしてくれる同志です」
「マリ、失礼します」
そう言って、イブは立ち上がり、マリの隣にいるユウキをじ~っと見つめた。
「マリ、このユウキというのは、球を持っていますか?」
「え~と、男の人だから、持っていると思いますけど・・・」
マリは少し天然のところがある。
「違います。そんな下品な球じゃありません。丸い水晶のような球のことです」
「あ~、ごめんなさい」
マリは顔を真っ赤にして、謝った。
「はい、いつも持っていますよ」
「ユウキと言いましたね。わたくしにその球を見せてごらん」
ユウキは嫌そうな顔して
「その手には乗らないぞ、サターン人、水晶を渡せば、僕の力の根源が損なわれるのを知っての言動だろ」
「ふ~ん、やっぱり、また、こいつか、どこの星にも現れて、相変わらず、無責任な考えをまた、押し付けているんだろ」
マリは信頼しているユウキをかばうように
「イブさん、ユウキくんはこの世界を平和に導く、私が最も信頼している人なんですよ」
「信頼?自分では何もしない、このムー人がですか?」
「そうですよ。いろいろな危険回避や瞬間移動など、いつも協力してくれるんですよ」
「マリ、ムー人は自分達がこの銀河系で一番優れた存在でこの世界のバランスと調和を整える神のような存在だと思っており、あらゆる種族に自分達の考えを耳元でささやく、悪魔のような存在なんですよ」
マリはそんなことはないと強く思っているが、たしかに自分では何もしないなとも思った。
「こんな無責任な者は排除して、わたくしにすべてお任せください」
「マリ、気を付けて、そうやって、たくさんの星を侵略してきた種族だから」
「は?我々は隕石の衝突や、自然現象で消滅してしまう種族に限って、その世界に滞在するようにしている、しかも消滅前に子供達が苦しまないようにその種族の子孫を増やさないように避妊ウイルスを使用して、現在生きている人が、その寿命を全うし、幸せに生きれるようにサポートもする。我々は、決して、暴力的な種族ではない」
マリはユウキから聞いているサターン人のイメージとはだいぶ違うように思えてきた。
「ねえ、ユウキくん、今まで、サターン人に会ったことあるの?」
「いいや、今が初めてだけど」
「イブさんはどう?、ムー人に今まで会ったことあるの?」
「いえ、直接会うのは初めてです」
「なら、話は簡単じゃない。お互いこれから、理解を深めて、それぞれができることをしていけば、強力なんじゃんない。へんな、うわさや、偏った考えを捨てれば、案外、いい友達になれんじゃない」
「友達!」
ユウキとイブは嫌そうな声を同時に出した。
「無理だよ、マリ絶対に」
「マリ、こんなムー人と一緒にいるなんて、考えられないです」
マリは二人をギロリと睨んで、
「もういい加減にして!私は二人を信じるわ、だから仲良くして、高度な知的生命体なんでしょ。くだらない争いはやめて!これは私からの命令なんだから」
マリはめずらしく、大きい声を出した。その様子を見ていた、ポール、クロード、ポーラ、葉子は自分たちの想像を超える話に驚き、ただただ、その3人のやりとりを聞いているだけだった。
地球から遠く離れた銀河系で
「ブ~ブ~、こちらエクセル銀河連邦宇宙艦隊司令官オキシム、さきほど、約1000光年離れた、恒星系からサターン人の亜空間送信を受信、ただちに殲滅に向かう」
「了解した。サターン人は5千年前にすべて殲滅したはずだが、まだ、生き残りがいたようだな。シールドを張り、絶対に探知されないようにして、注意して向え」
「ワープ航行でおよそ1年後に到着予定、任務を実行する」
イブが発信した、亜空間送信により、遠い宇宙のかなたから、本当におそろしい敵が動き出した。




