35話 調査の条件
「どうしたんですか?マツさん、急にこちらに来られて?久しぶりにお会いできたのはうれしいですけど」
「来る前に一度、ここに連絡したんだけど、あんたの部下なのかね。私の電話を一方的に切ってしまって、事前に話ができなかったから、いきなり来るようになってしまったんだよ」
「あ~、それはすみませんでした。まさか、マツさんやヤエさん、ユウキさんにまた、会うことができるなんて、夢にも思っていなかったものですから」
アベルはユウキとマリをじ~っと見つめて、近寄り
「ヤエさん、ユウキさんお久しぶりです。あれから、60年以上経ちますが、お二人はは全く変わらないというか、特にヤエさんはかなり以前より若返ったようですけど」
隣でマツは笑いながら
「アベル、その人はマリさん、姐さんの孫だよ」
「え、そっくりじゃないですか。はあ~、こんなにそっくりな孫がいるなんてビックリですね、それとユウキさんはご本人ですか」
「アベル、久しぶりだね。60年ぶりぐらいかな、僕は本人だよ。知ってのとおり僕は年を取らないからね」
「そうでしたね、ユウキさん本当にお久しぶりです。また、お会いできるなんて本当に信じられません。できれば、ヤエさんにもお会いしたかったな~ そうだヤエさんはお元気ですか?」
「アベル、ヤエさんは3年ほど前に亡くなったそうだよ」
「そうでしたか。残念です」
アベルは急に元気がなくなり、目に涙を浮かべた。
「私はあれから、死に物狂いでこの国の発展に尽力してきました。ヤエさんに
たくさん話をしたかったな~」
「なんだい、私じゃ、ダメなのかい」
「え、そうですね、ダメじゃありませんよ・・・
もう黙っている必要もないから、打ち明けますが、僕はヤエさんのことがずっと大好きで、とても尊敬していたんです。あれから、いろいろな女性と出会いましたが、ヤエさんへの想いを超えるような出会いはありませんでした。今までどんなに苦しいことがあっても、ヤエさんのことを思い出すだけで、信じられないような力が湧いてきて、こんな老人になっても、その想いは消えず、僕の力の源になっているんです」
「ヤエさんが相手じゃ、たしかに私じゃ、物足りないよね、私もあんたに負けないくらい、ヤエさんのことが好きで好きでたまらなかった。その気持ち、私もわかるよ」
「マツさんはそっち系だったんですか」
「違うよ。私はノーマルだよ。ただ人として好きだったと言ってるんだよ。あんまり、二人の前でおかしなこと言うんじゃないよ」
「おっと、お二人ともすみませんね。雑談をしてしまって、挨拶が遅れましたが、フランスの国防大臣をしているアベル・オルクレールです」
マリはきょとんとした顔でアベルを見つめていた。
「マリ、そうか、フランス語はわからないよね」
「困ったな、フランスに来ても、言葉がわからないいじゃ、私、役に立てるかな」
「今まで、マリのために黙っていたけど、ヤエさんからもらったお守りをマリは今、持っているかな」
「丸い球のこと?」
「そうだよ」
「えー持っているわ。おばあちゃんに肌身離さず、持っているように言われてたから」
「良かった。そのクリスタルを見つめてこの場所の言語について自分が会話できるようになりたいとイメージして」
「わかった」
マリはユウキに言われた通り、そのクリスタルの球を見つめて念じた、すると球が白い光を発して、マリの頭にめがけて飛んできた。数秒ぐらいして、その光は徐々に消えていった。
「マリ、フランス語で話すイメージでアベルさんに挨拶をしてみて」
マリは半信半疑でアベルに話しかけた。
「こんばんは、飛島マリといいます。これから、フランスで赤い球体について調査して原因を究明します。お力を貸していただきたいのです。よろしくお願いします」
アベルは驚いた顔をして
「すばらしい、完璧なフランス語だ。さすが、ヤエさんの孫だね。もちろん、今、僕があるのはヤエさんのおかげ、どんなことでも、惜しみなく協力するよ」
マリはフランス語が通じたことにびっくりした。
「ユウキくん、すごい。フランス語が通じた」
「今は緊急事態だから、特別に万能翻訳機能を活用するけど、この件が終わったら、マリ、ちゃんと勉強してよ」
マリはユウキを見て、渋い顔でうなづいた。
アベルは今日のニュースになっていた、赤い球体のことを思い出し
「世界中で今、大騒ぎになっている赤い球体のことだよね」
「そうです。どうやら、この国から発せられたようなのです」
「う~ん、まだ、どこからかは確認もされていないし、どこの国も、これといった被害も出ていないから、あまり、重要視されてはいないけれど、何かこの件で、重大な秘密でもあるのかな」
「はい、ユウキが言うには、人類に取って、重大な危機が迫っていて、一刻も早く、原因を究明しないと大変なことになります」
「なるほど、ところでマツさん、もしかして、こんなにお若いマリさんがユウキさんと世界の危機に干渉するということは、マリさんは、もしかして、平和への使者なのですか?」
「そうだよ、その通りだよ。だから、協力してほしいんだよ。私はこの通りの老人でとても昔のように動き回れないからね」
「わかりました。ユウキさん、世界の危機というのは間違いないのですか?」
「間違い、ありません。信じてもらえるかわかりませんが、これは1万年以上前に消滅したサターン人の技術です。とても恐ろしい種族です」
「なるほど、ユウキさんがそういうんじゃ、間違いないですね、これから、関係者と連絡を取りますから、マリさん、また、今日の10時に国土監視局に来てくれますか。有能な人材を
ご紹介できると思います。」
「ありがとうございます」
「ただし、条件があります」
「なんでしょう?」
「この件は特に、大きな被害などもでていませんし、まして、宇宙人の仕業だと言っても
おそらく、ユウキさんと関係したことのない人がこの話を聞いてもすぐには信じてもらえません。そのため、当面は秘密裏に動いていただきたい、必要以上に事を大きくすれば、国民にもパニックが起きるかもしれません」
「わかりました」
「アベル、私は病気もちで、マリさんと一緒には行動できないから、マリさんとユウキさんが
しばらく、このパリで留学という形で滞在して、ごく普通の高校生として生活をして、他の人から見ても、おかしくないようにしてほしいんだよ。どこか良い学校はないかね?」
「わかりました。そちらも探しておきましょう」
「私共の機関で調査は十分にできますし、随時、お二人には報告を入れさせるように指示しておきます。それとユウキさん、平和への使者としてマリさんのそばにいつもいる役目もわかりますが、若い男女が同じ家で住むのはできませんので、できるだけ近くの家も探しておきますから」
「よろしくお願いします」
そして、三人は、一度、日本に戻って行った。




