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平和への使者  作者: DAISAKU
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13話 勇気と力(英雄伝記編 6 )

早朝になり、いつも通り、掃除や、朝ご飯を作るために働いていたが、

この家では朝ご飯だけは地主の佐竹を上座として、

全員で食べるのが毎日の習慣になっていた。

もちろん、下にいくほど、料理は簡素になり、マツ達にいたっては

サツマイモの切れ端だけで、座るところも畳ではなく土間の上にござを

敷いたところに座らされていた。

食事が始まり、しばらくして、

マツは急に立上り、タエと太郎に声を掛けた。


「いくよ」


タエと太郎は頷き

マツを先頭に三人で上座の佐竹のところにスタスタと歩いて行った。

佐竹や番頭の佐吉や、その他20人ほどの者が3人を見て驚いた顔をした。

すぐに3人の目付け役のサキが


「これ、なんで、呼ばれもせんのに座敷に上がるんじゃ、はしたない」


とマツを掴んだが、

すぐにその手を振りほどき、佐竹の方へまた歩き始めた。今度は佐吉が止めに入った。


「これ、マツ、お前のようなもんが、ここに上がってはいかん。もどれ」


マツは佐吉を睨みつけ、袖を引っ張るその手を振り払った。

そして、マツ達とは比べ物にならないほどの朝食を食べている、佐竹がマツを睨みつけた。


「なんじゃ~貴様は、おまんのようなやつが、こんなところに来るんじゃない」


マツの顔を平手打ちで思い切りたたいた。マツはわざと大きく倒れ、思いっきり笑った。


「ハハハハハ・・・」

「たたきましたね。この私を・・・」


いつも、おとなしく、素直でやさしい顔をしていたマツが鬼のような形相をして、

また、体も女性らしい、しなやかな容姿だったのが、まるで、武士のような姿勢とういうか

骨格というか、急に変貌した。


「おい、こいつは頭がおかしゅうなったんじゃないか、早う取り押さえて、あっち連れてけや」


佐竹がそいった、その瞬間、


「待て~い、みんなそこから動くな」


大広間に鬼のような声が響き渡った。あまりの大声で一瞬、皆、動けなくなった。

そして、マツがまた大きな声で


「我ら、3人、なんの理由があって、ここに働かせておる」


佐竹が笑いながら


「アホか、親の借金があるからに決まっておるじゃろ」

「私ら、子供を奴隷と等しくして、どの法律が奴隷として認めておるか、答えてみよ」


すぐさま、佐吉が


「お金を払わんで消えた親が悪いんだろ、子供が返さんでどうする」

「アホはおまんらじゃ、佐吉さん、あんたは私のことをアホ、アホというが、日本の法律で

人身売買を認めてはおらん、まして、いつ、どこで、誰に、どれくらいのお金を貸したかも

説明せんで、なにをいうか」


マツはみんなの前で大声で叫んだ。

佐吉はすぐさま、書斎に行き、証文を持ってきた。


「ほれ、見ろ、ここに書いてあるじゃろ、全部で2500円(現在約300万円)じゃ」


マツはその証文を見て、


「なんで、最初にそれを言わないか」


マツは懐から100円札の束を出し、25枚を佐竹に渡した。

佐竹はびっくりした顔で


「どこから、そのお金を持ってきた」


と大きい声を出した。


「このお金はじいちゃんから私に受け継いだ物、そして、これが遺言書だ」


マツは皆に見えるように見せた。


「私達を奴隷として、むりやり連れてきて働かせたこと、家も勝手に没収したこと、

これから警察に誘拐と物取りとして、訴えに行く。佐竹さんと佐吉さん、

あんたら刑務所に入ってもらうよ。それと、それを分かっていて、黙っていた、

あんた達もそれなりに償ってもらうよ」


佐竹が大きな声で


「何を言ってるか。おまんがこんなところで騒いだって、どうなるわけでもないわ」

「おまんら、こいつらを早う捕まえろ、もう身売り先も決まってるからな、早うしろ」


皆が一斉にマツ達に向かってきた、


「タエ、太郎、こいつら全部、悪もんじゃ、じいちゃんに習った通り、思い切り、暴れたれ」


そうマツがいった途端、二人もみるみると容姿が変わり、

「姉ちゃん、分かった、行くぞ」と言って大人達に立ち向かい、次々となぎ倒していった。

マツには大きい男が3人向かってきたが、1瞬ですっ飛ばしてしまった。

地主の佐竹はみるみると自分の使用人達が倒されていくのを見て、逃げ出そうとした。

その時だった。


「マツ、もうその辺にしとけ」


警察隊の隊長の清水が数人の警察官と共に入ってきた。

マツは昨晩、帰る途中に計画を練ってすぐにじいちゃんの腹心の部下であった、

清水の家に駆けこんでいた。清水はじいちゃんがその昔、

乞食のような生活をしていたのを救い、仕事を与えてあげた男で、時々、

じいちゃんのところに来ていた人で、いつも


「マツ、なんか困ったことがあったら言えよ。大介さんは本当に無欲な方だから、

恩を返そうにも、なんもいらんのいってんばりだからな・・・」


と言っていたことを思い出した。


「佐竹さん、話は我々、ずっと聞かせてもらったわ。堪忍せえ。おまんも本当にアホじゃな、

大旦那が生きていた時に何度も言っておったじゃろ。昔、大介さんにこの村は助けてもらった

絶対に裏切るようなことはするなとな」


佐竹は知るかといった顔でそっぽを向いた。


「とりあえず、みんな、しょっぴけ、本庁にも連絡してある、本庁にも大介さんには、

お世話になった人がぎょうさん、おるからな、おまんら、

本当に大介さんの孫にアホな事したなあ」

「それにしても、マツ、おまんは声がでかすぎるわ、外におっても、よ~聞こえたわ」


清水は感心したようにマツを見て笑った。

マツもタエや太郎と青い大きな空に向かって思い切り笑った。

そして、マツはふと、あの時、ヤエさんに助けてもらわなかったら、

こんな爽快な気持ちは味わえなかっただろうと思った。



あのあと、姉さん(ヤエ)と再開して、すさまじい日々が始まるなんてあの時は

夢にも思わなかったけど・・・



病院のベットで眠くなってきたマツはゆっくりとその目を閉じた。



その時代、日本帝国は昨年末にアメリカと開戦し、戦勝ムードで大騒ぎをしていたが、

国民生活は疲弊し、資源に乏しいこの国は破滅への道に突き進んでいた・・・

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