第123話 いじめと嫉妬
ハーバード大学、ここはアメリカマサチューセッツ州ボストン近郊のケンブリッジに位置する総合私立大学でその偏差値の高さは世界最高峰で、アメリカの大学で最古の大学でもある。
この大学に入学できるだけでもすごいことだが、ハーバードは休みが多い大学で8月の今は、新学期の9月まで時間があり、教授にも生徒にもけむたがられているレナードの孫クラークは一人さみしく、大学の図書館の窓から外をボーっと眺めていた。
「おい、あれ、クラークだぜ、いやだね~何をやっても、完璧な能力があるのに、図書館でお勉強かよ。これ以上、頭が良くなって、どうするつもりんだろうな」
『ふ~、おじいさんはこの大学に入れば、社会勉強になり、もっと自分を磨くことができると言っていたが、結局、得る物はほとんどないし、毎日毎日、むなしく時間だけが過ぎていくだけだな~』
「コラッ、ガリベンくん、また、こんなところで、お勉強ですか?」
クラークは後ろから急に声をかけられて驚きながら
「なんだ、オリビアか、大きな声を出すなよ。ここは図書館だぞ」
「いいじゃない、別に、あなた以外、誰もいないんだから」
「君は、最近、僕のところに近づいてくるけど何か用でもあるのかい。みんな、僕のことなんか気味悪がって近づきもしないのに」
「あら、用がないと近づいてはだめなの?」
「普通、そうだろ、君みたいにきれいな人なら、僕なんかよりも、ここにはいい男がいっぱいいるだろ」
「そうかしら、ここにいる人はこのハーバードを無事に卒業することしか考えていない人が多いじゃない、大学がこれから、何をしてくれるっていうの、こんなのただ、高いアクセサリーをいつも付けているようなもので、肝心は中身じゃないかしら」
「そういう君も、しっかりハーバードの人間だけどね」
「あら、そうね、用と言えば、あなた、数学でも化学でも常人をはるかに超える能力を持っているんだから、何か、発明でもして、お金儲けでもすればいいじゃない」
「う~ん、あんまり興味ないな、お金にはそんなに困っていないし、これと言ってやりたいことがあるわけでもないしね」
「ふ~ん、もったいないわね。そういうの宝の持ち腐れっていうのよ。じゃあ、あなたはこれから、何がしたいのよ」
「そうだな、色々なところに行って、話したり、問題を解いたりしてきたけど、僕より賢い人には会うことができなかったから、何か刺激がほしいかな、今は」
オリビアは薄ら笑いをして、
「それなら、政府のある機関で、科学技術の発展を目的とした施設があるけど、紹介してあげようか」
「科学技術の発展かあ」
「そう、あなたみたいな、天才がたくさんいて、あらゆる分野で、資金も惜しみなく出してくれるし、きっと気に入ると思うわ」
「なんか面白そうだな。でもどうして、君はそんなところを知っているんだい?」
「え、え~と、父がそこで働いている技術者なの、だから、頭がいい人がいたら紹介してくれって言われてるの」
「そうかあ、それなら、安心だね」
「じゃあ、善は急げよ、今から行かない?そこに、どうせ、暇なんでしょ」
クラークは少し考えて
「そうだな、いい刺激が受けられそうだしな。行くとするか」
オリビアは笑いながら、クラークの手を取って、図書館から、足早に歩いて出た。
「クラーク、学校の外に、私の送迎の車がいるから、それに乗って行きましょう。ほら、あそこに止まっているわ」
オリビアはさらにクラークの手を強く引っ張って車に乗せようとした。
「オリビア、痛いよ。引っ張りすぎだよ」
「ごめんなさい、早くあなたと行きたかたっから」
そう言って、クラークとオリビアが学校から出ようとした時にオリビアのもう一つの手を別の人が握り、学校側へ引っ張り返した。
「痛い!何をするの」
オリビアは手を引っ張った人を睨みつけた。そこにはかわいい日本人の女性が一人立っていた。
「あなた、誰?」
その女性はオリビアを無視して
「クラークでしょ。あなた?」
「そうだけど。君は誰?」
「わたしは、おじいさんから、あなたを教育するために来たものですよ」
「ハハハ、僕を教育?」
「そう、教育」
「何を言っているんだい。僕に教育ができる人なんて、いるわけないよ」
「そうかしら?私の知っている人よりは、あなたずいぶんバカそうだから」
「バカ!君は僕のことを知らないんだね。だから、そんなことを言うんだね」
「知っているわよ。テキサス大学を12歳で卒業して、19歳からこのハーバード大学に入学、
生徒はもちろん、この大学の教授だって、あなたにはかなわないんでしょ」
「なんだ、わかっているじゃないか。だから、ぼくをバカと言ったのを取り消せ!」
「取り消さないわ、だって本当のことだもの、それに、あなた、今、この女に誘拐されるところだったのよ」
「誘拐?まさか!オリビアはここの生徒で、いつも僕に話しかけてきてくれる数少ない人なんだ。そんなことをするわけないだろ!」
「やっぱり、バカね。相手をよく見て、そんなことも感じることもできないなんて」
オリビアは妙な日本人の女の子が割り込んできて、怒った様子で
「あなた、なんなの一体、私達は忙しいのよ。邪魔しないで」
そう言って、また、クラークの手を握ろうとしたところ、
「バチン」
と払いのけた。
「誘拐するつもりでしょ。あなた」
「何を言っているの?この子、頭がおかしいんじゃない」
「そうかしら、あんな、防弾装備の重厚車でお迎え?大統領だって、あんなすごい車乗らないわよ。しかも、一度乗ったら、扉を開けることすらできないようになっているみたいね」
「最近は、危ないから、父が手配してくれたのよ」
「よく、ウソをベラベラと言うね。あなた」
「クラーク!私とこの女の子とどっちを信じるの?」
「そりゃあ、こんないきなり現れた、知らない女の子より、オリビアを信じるに決まっているじゃないか」
マリは頭を抱えて
「はあ~、本当にお坊ちゃんなんだね。クラークは、悪い人と良い人の区別もつかないなんて」
「お前こそ、いきなり現れて、僕たちの邪魔を急にして、信じられるわけないだろ」
「さあ、クラーク、あの車に乗って行きましょう」
オリビアは勝ち誇った笑顔でクラークと歩き始めた。
「クラーク、今、その子と一緒に行ったら、自由を奪われて、もう、外に出ることも、
できなくなるわよ」
「そんな話、信じられるか!」
「本当にあなたは、『特攻野郎レナード』の孫なの?本当にバカなんだから」
その言葉をクラークは聞いて、顔色が急に変わった。
「特攻野郎・・・・」
オリビアと歩いていた足が急に止まった。その途端、クラークはオリビアの手を振り払い、
その女の子の方へ歩き出した。そして、目の前に立って笑いながら
「おじいちゃんは親しい昔の戦友しか知らないはずの『特攻野郎レナード』の言葉、
あなたを信じます」
クラークは急に態度を変えた。オリビアはもう後には引けないと思い、
迎えの車に手で合図を送った。そして、屈強な男が3人降りてきた。
「フフフ、私のボディーガードよ。あなたのような、あぶない犯罪者から私を守るために
いつも、近くにいるのよ」
「はあ~誘拐する時の仲間でしょ。全くさっきから、よく、平気でウソがつけるね」
ボディーガードに取り囲まれてクラークは怖くてたまらなかったが、その女の子はケロっとした顔で、少し笑みを浮かべていた。そして、すぐに屈強な男が3人、クラークを連れ去ろうした時に
「バ、バ、バ」
と妙な音がしたと思ったら男達は一瞬で、吹き飛ばされ、気を失ってしまった。
その子はオリビアを見つめて
「あなたも、私と戦う?」
オリビアは何が起きたか、よく把握できなかった。クラークもびっくりした顔でその子に
「君は誰なんだ?」
「私は飛島マリ、レナードに頼まれて、あなたを教育しに来たわ、しばらく、私達と一緒に行動してもらうわ」
クラークはこんなかわいらしい女の子のとてつもない強さに驚き、抵抗しても無駄だと思った。




