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平和への使者  作者: DAISAKU
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11話 引き継いだ力(英雄伝記編 4)

しばらくしたら、恰幅の良い、ひげを生やした男が入ってきて、奥の上座に腰を下ろした。


「ほれ、三人とも、頭下げてあいさつや」


マツ達は好きで来たわけでもないので、黙っていた。


「なんじゃあ~。あいさつもできんのか。こいつらは」


とても大きな声で地主の佐竹が怒り出した。番頭の佐吉はこれはまずいと思い、


「すんません。さっき急に家から連れてきたんで、緊張してるんでしょ。え~と

隣から、マツ14歳でタエ10歳、それと太郎8歳になります。身売り先が決まるまで

しばらくうちであずかりますんで、これから、よく教育しますんで今日は勘弁してください」

「ほうか。まあ、身売りしても借金が全部なくなるわけじゃあないが、少しでも、

金になるように、よく教えたってや、それと、おまんら、このうちでは、使用人じゃ、

子供でも朝から晩まで、よ~働いてもらうからな」


そういうと、さっさと地主は出て行ってしまった。


「三人とも、しっかり挨拶できるようにならんと、この家にもいらんなくなるよ、

これから、仕事をしっかりとしてもらうよ」


そう言って番頭の佐吉は台所に連れていき使用人サキに3人を任せた。


「これから、サキの指示に従って家の仕事をしてもらう。まあ、農家の娘などは、

字も書けんし、計算もできんのだから、掃除・洗濯・手仕事などをやってもらうから」


マツはなんでも命令口調の佐吉に言い返した。


「私も妹たちも字も書ける、計算だってできる。うちのじいちゃんに厳しく教えてもらった」

「わかった、わかった、ちょっとできる程度やろ、

ここにいるもんはみんなそれくらいできるわ、威張って言うな、生意気な娘やな」


そう言って佐吉は出て行った。


マツ達はサキに毎日の仕事を色々と教わった、

マツは洗濯や毎日のように蔵からの荷物の出し入れの力仕事、

食事の準備、妹達は掃除や片付けが主な仕事になり、

朝は4時すぎから夜は食事の片付けなどが終わる9時すぎまで毎日働かされた。

そんな中、10日が過ぎ、夜寝る時に妹たちが


「姉ちゃん、もう、手も足もひび割れて、痛いよ」

「おなかも空いて、おなかがすごく痛い」


タエと太郎の手や足を見たら、しもやけでぱんぱんになって

手や足の指先はひび割れて少し血がにじみ出てていた。こんな寒い中、

ろくな服もないまま働かされ、食事もろくなものも与えられていない、

こんな生活をしていたら、妹たちは身売り先が決まる前に死んでしまうかもしれない。

じいちゃんが生きてくれていたらとマツは思った。


マツのじいちゃん大介はその昔、帝国軍人だったが大きなケガをして訳あって、

この村にきて当時この村が大変な飢饉だった時に、この村を救ったことから、

大きな家と畑をもらい、じいちゃんが生きている間は小作料を免除されていた。


あのころは良かったな~と物思いにふけっていた。


じいちゃんが死んでちょうど2年になる、じいちゃんの一人娘のオカンは

少し知恵遅れで障害者だったが、放浪者だったオトンと出会い結婚した。

思えばオトンはじいちゃんの加護があったからオカンと結婚したのかもしれん。

そんな時、隣の寝床で痛みで震える妹達を見てマツは何とかしなきゃいけないと思い、

何かないかと考えていた。そういえば、じいちゃんは、

私にだけ読み書きの他に体術や剣術を朝早くから毎日教えてくれてた、

なんでやろと1回聞いた時に、じいちゃんは元会津藩士の長男として生まれて

新政府に家もみんな壊されたと言っていた。

だけど、代々伝わるこの体術や剣術を絶やすわけにいかんと女のうちに

一生懸命たたきこんでいた、じいちゃんにはお世話になっとたから、

文句も言わず必死に7年ぐらい頑張ったな。

その時マツは

「はっ」


と思い、記憶が蘇ってきた。


「マツ、この7年よう頑張った、おまんは本当にすごい娘じゃ、

見たもの、聞いたものを瞬時に覚えてしまう。こんな短い期間でわしの知識以上のもんを

習得してしまったのお。剣術に体術、数学、語学(英語・中国語)・教養、」

「じいちゃんだって、すごいよ。こんなにいろいろなことを教えられるんだから」

「ははは・・・」

「マツよ、わしゃ、たぶんもうすぐ寿命が尽きる、医者に言われた」


マツは急に眼を真っ赤にしてじいちゃんを見た。


「竹は知恵遅れじゃから、悪いが面倒みてあげてくれ。小吉のやつは冷たい男じゃが、

竹だけにはなぜか優しくしてくれてはいるがな」

「じいちゃん、死んじゃ、やだよ」


マツは泣きながらじいちゃんの体にしがみついた。


「マツ、お前は特別な娘じゃ。この力を使って、女だけんど、

必死になってこの世の中が少しでもよくなるように頑張ってほしい。」


マツは泣きながらウンウンと頷いた。


「最後にマツに問題を出す。ちょっと泣くのはやめい」


マツはじいちゃんの顔を見た。


「人が人であるためには何をする?」

「命あるかぎり、世のため、人のため、義をつくす」

「具体的にはなんとする?」

「弱き者にほどこしをする時は相手を見て応ぜよ」

「財を成した時、価値ある者にその財を託せ」

「他人をすぐに信じるべからず」

「己の能力をすべて見せるな、与えるな、適材適所で応ぜよ」

「よくできたのお、マツ、おまんはもう卒業じゃ。」

「マツよ。わしがおらんようになり困った時があった時は裏山の上にあるお社の裏に

松田家家紋が記してある、そこにおんしに教えた剣術水切りをすれば助けになるもんが

入っとるから、役立てろ。じゃが、そこには必ず一人でいくんじゃぞ」

「うんわかった」


マツはすくっと立ち上がり、一歩下がって、軍人のようにきりっとした姿勢で


「わが、おじい様、永きに渡り、わたくしに教えをいただき、誠にありがとうございます。

おじい様の魂はわたくしの中に常に宿っております。これから、どんな困難があろうと

立派に生き抜いてみせます」


大介はマツの光輝くその姿を見て、初めてマツの前で涙を見せた。日本男子はいかなる時も

人前で涙は見せないと言っていたのに・・・


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