序章
新しい朝日に私の毎日は、再始動する。
世界に照るあの光にまた徒労するのみの毎日が、ひたすらに繰り返す。それでも日々は、変化をしていくのであった。
今、日本の5分の4の人口が都市に集中している。それによって、今の時代、結果としてだが、物資の供給は秒を読まず、移動にかかる時間は、もはやスマホを起動するよりも早い。
しかし、利点があれば必ず影もできる。街にはゴミが溜まり、収集がつかず、電車では乗った車両が人の重みで加速せず、ダイヤの10分遅れもざらにある。
個人情報はサーバーの容量を超え、バックアップをとっていない役所は、困り果てている。
どこにいようが目に付くのはひと。窓を覗いても、自然公園に行こうと、トイレに行っても、ひと、人、ひと。人の周りに必ず人がいる。その割には、物静かな今時分であった。
そんなふうな日常に、私は飽き飽きしていた。もっと、なにか非日常的な、なにか刺激的な出来事はないのかと日々彷徨っていた。
もっとも、自分がなにかしようかと企むようなものではなく、周りがなにかしてくれないのかと、ひたすらに待っていたのであった。
それだから私は、この味気なく無味無臭で彩りのないこの、社会に適応してしまい、不満や文句が飛び出す前にはもう、諦めている自分がいたのかもしれない。
あの事件さえ、起こらなければ。
なぜ、死ぬことになったのか。
それは、人々から消し去られた記憶である。