田舎のトイレ
田舎のトイレは、ぼっとん式だ。それもあって、一度部屋から出て靴を履き、外へ出る。
夜中、トイレへ行った。すると、何かが聴こえる。
「ウォー、ウォー」
何の声?怖い。でも確かめなければもっと怖い。僕はそっとトイレへ近づいた。だんだん大きくなる声。そっとトイレの扉を開ける。誰もいない。
僕は便器に近づいた。とその時便器から枯れ枝が飛び出してきた。
「!」
枯れ枝は僕の足に絡み付く。
……枯れ枝ではない。痩せ細った人の腕。便器に引き寄せられる。僕の必死の抵抗。扉の近くまで退いた。
便器から何かが出てくる。丸いもの。少しずつ出てくる。眼が二つ出てきて僕を見ている。顔が出てきた。鼻がない。いや、潰れているのか?そして、口。舌がだらりと垂れている。
少しずつ僕に近づいてくる。枯れ枝のような手は、僕の足に絡まったまま。僕の体は硬直したように動かない。
全身枯れ枝のようなモノが僕に迫る。だらりと垂れた舌が頬に触れる。そして、もう一方の枯れ枝のような手が首に絡み付く。枯れ枝とは思えない力。
僕は気絶することも出来ずにトイレの中に引き込まれた。
そして、誰も知らないままトイレは封鎖された。