助けて
寒い。寒いよう。
順子は雪山登山に来ていた。しかし吹雪が凄く、仲間からはぐれてしまったようだ。幸いにも吹雪を避ける岩穴に逃げ込む所があったからよかったが、いつ止むのかもわからない。
暖かくするために、順子は寝袋を出して、その中へ入った。少しはマシだが、寒さには耐えられない。他に人がいれば身を寄せ会うことも出来るが、それも無理だ。
「どうしたらいいの……? このまま死ぬの……?」
順子は誰に話すでもなく呟いた。
しかし、吹雪の中へ出ていくのは危険だ。順子は吹雪が収まるのをひたすら待った。だが、止む気配はない。順子は非常食のチョコレートを食べながら考えた。
はぐれてからどれだけの時間が経ったのだろう。順子は激しい眠気に襲われた。寝ても大丈夫だろうか。いや、そうしたら死ぬだけだ。順子は必死に眠気に抗った。
順子がふと外を見ると、吹雪が先程よりも収まってきている。
「これで助かるわ!」
順子は嬉しくて、寝袋から出て、外の様子を伺った。すると、仲間がそこにいた。
「順子! 探したぞ! さあ行こう」
「ああ、皆ありがとう!」
順子は寝袋をしまい、準備を整えると、外へ出た。皆の後ろを歩いていく。だが、おかしい。下山するはずではないのか。皆は上へと上っていく。
「ねえ、皆、下山しないの?」
順子は皆に聞いた。
「順子、こっちなんだよ」
おかしい。順子はもう一度呼びかけた。
「ねえ、皆……」
すると、皆が順子を振り返った。すると、顔がなかった。雪のように真っ白だった。
「ひっ」
「さあ、順子」
順子は白い顔に囲まれ、崖へと連れていかれた。
「や、止めて!」
「順子、一緒に行こう」
順子の仲間は既に死んでいたのだ。
彼らは順子の腕を掴むと、崖から飛び降りた。
「いやあああ!」
順子の声は吹雪にかき消されていった。