暗闇
はあ、はあ、はあ
秀美の息が上がる。
どこまで走ればいいの?それにここはどこ?でも逃げなきゃ!何から?わからない。行かなきゃ!
秀美は走る。暗闇の中を。
怖い!何故走ってるのかわからないなんて……!でも、あいつが来る……!あいつって?わからないのに逃げてるの!?私、おかしくなっちゃった!?
コツン
足音!?誰かいる!?とにかく逃げなきゃ!
はあ、はあ、はあ
もうダメ。足が動かない。どこへ行けばいいのかもわからない。私はここで死ぬのかしら……。
秀美は座り込んでしまった。そんなとき、足音が近づいてくる。
コツン、コツン、コツン
足音は秀美の前で止まった。
「秀美ちゃん、見ぃつけた~。逃げるなんてダメだよぉ~。契約なんだからね」
男の声がした。秀美の頭上から降ってくる声。秀美は恐る恐る顔を上げた。そこに見えたのは、真っ赤な唇。帽子を被っているので顔はわからない。
秀美は男の問いかけになんとか声を出した。
「……契約……?」
「恋敵がいなくなればいいって言ったよね?ちゃんと処分してあげたよ。その代償を秀美ちゃんにもらわないとね~」
「そ、そんな契約なんてしてない!万里が死んだのって、あなたがやったの!?」
「君の願い通りにね~。満足でしょ」
「そんな、そんなこと……!」
「彼を慰めるのは君だよね~。万里ちゃんの代わりになれるかもね~」
「わ、私は……」
「代償はもらうよ」
男は右手を秀美の前へ突きだしたと思ったら、秀美の左目をくりぬいた。
「きゃああああ!痛い!痛い!」
秀美はのたうちまわった。
「万里ちゃんも痛かっただろうねぇ」
ピピピピピピ
朝?今までのは夢……?
秀美はベッドから降りようとしたが、バランスを崩して倒れてしまった。
左目が見えない!
秀美は慌てて脱衣所の鏡を見た。そこには、左目の眼球が飛び出した秀美の顔が映っていた。