ひき逃げ
俺たちは男二人で車に乗って横浜に出掛けるところだった。
「隼人、お前免許とりたてだろ?気をつけろよ」
「義弘は心配性だなあ。俺、成績良かったんだぜ。任せろよ」
隼人は夜の道をどんどんスピードアップさせていく。
「隼人、他に車がいないからって飛ばし過ぎだろ」
「他に車がいないから出来るんだろ」
隼人には何を言っても無駄だな。
そんな時だった。黄色信号から赤信号に変わろうとするとき隼人が無理矢理突っ込もうとした。すると、横断歩道に小学生くらいの女の子が立っていた。
「うわっ」
隼人はバンドルを右にきった。
キュルルルル!!ガン!!
車はガードレールにぶつかった。
「隼人!大丈夫か!?」
「ああ、大丈夫だ。お前は?」
「ああ、俺も大丈夫だ」
「義弘!俺子供をはねちまった!」
「きゅ、救急車だ!」
「ばれちまうじゃねえか!」
「……隼人、まさか……」
「逃げちまえばばれねえよ!」
「隼人!」
車は急発進した。女の子を道路に残したまま。俺たちは横浜へ行かずに急いで東京の自宅へ戻った。
「なあ、隼人、今からでも警察へ行かないか?」
「逃げた意味がねえだろ!サツになんか捕まりたくねえよ!」
隼人には何を言っても無駄らしい。俺は翌日早朝に事故現場へと行ってみた。すると、既に警察が現場検証した後だったようだ。生々しく白い線が引かれていた。そして現場に花が供えられていた。俺は花屋で花を買って、事故現場に供えた。女の子はどうなったんだろう。
一週間後、俺はまた事故現場へ行ってみた。するとそこには立看板が立っていた。ここで子供の死亡事故があり、目撃者を探しているという内容だった。俺の心臓は跳び跳ねた。俺はまた花を供えた。それしか出来なかったのだ。だが、隼人を説得するべきだとも思った。俺は隼人の家へ行った。すると隼人が明らかに具合が悪そうに出てきた。
「隼人、どうした?具合が悪いのか?」
「……義弘、毎晩夢に女の子が出てくるんだよ!俺、殺される!」
「隼人!落ち着けよ!やっぱり警察へ行こう」
「嫌だ!嫌だ!」
「……隼人。明日また来るから」
俺はその日は帰り、次の日また隼人の家へ行った。すると昨日よりも具合の悪そうな隼人が出迎えてくれた。
「隼人、また夢を見たのか?」
「……どんどん迫ってくるんだ。毎日少しずつ。目がなかった……義弘!俺、殺される!」
「隼人、警察に……」
「絶対行かねえ!」
「……隼人、また明日来るから」
翌日俺はまた隼人の家へ行った。すると人が出入りしていた。隼人は一人暮らしのはずだ。俺が近づいていくと、中に入っていた人に止められた。
「ああ、君、入らないで」
そこにいたのは隼人の変わり果てた姿だった。目は飛び出し、腹からは内臓らしきものが飛び出し、血だらけだった。
隼人の「殺される」という言葉通り、隼人は車にはねられたような死に様だった。




