私には何が正しいのか分からない。
すいません、深夜の一時からハイなテンションで書いたので色々おかしい部分があるかもしれません。作者が好きなものをそのまま小説にしました。
「もしもし、雅?」
シンプルで機能性の高い物を揃えた、私の為に作った自分だけの空間。滅多に友人を招き入れ無ければ、元彼氏の中で私の部屋に入った事のある者は居ない。唯一家族と今の彼氏だけが入ったこの部屋に、全く無縁の他人が入り込んでいる。その人物は目の前で電話する私を威圧しながら、スーツの襟を直す。
『もしもし、唯花?』
「あの、私別の人と結婚する事にしたから。別れて。連絡先も全部、消しておいてね」
『え、は?ちょ』
電話で手短に要件を告げ、直ぐ様切る。目の前に居る男は、これで用が済んだとばかりに帰ろうとする。それを引き止める事無く、机の上にあるお札で膨らんだ封筒を投げつけそっぽを向く。
「受け取ってください。楽な生活が出来ますよ」
「そのお金も、そんな生活も要らないわ。どうせ雅が現れなかったら、独身を貫こうと思ってたし」
「私も仕事ですので、受け取ってください。嫌なら寄付にでもどうぞ」
「こんなお金でも、向こうの人々にとって無いよりかはマシかしらね」
弁護士だと言うその男は、雅の父親から遣わされたらしい。曰く、私が邪魔らしい。綺麗な言葉で物凄く遠まわしに言っていたが、言いたいのはこういう事なんだろう。そのお陰で私はかなり冷静だったが。
「では、私はこれで」
私は見送りもせず窓の外を見ていたが、弁護士は律儀に一礼してから帰って行った。仕事もまだ全然続けられそうだし、しばらくは衣食住には困らない。御曹司の雅と別れたからって、別に何かが変わる訳じゃない。胸に疼くこの寂しさだって、きっと直ぐに忘れる。ただ、今すぐが無理なだけで。
「ふ・・・っ、うぅ、あああっ」
羞恥心を覚えた大人は、みっともない泣き方は出来ない。だからこうやって、一人で涙を流すしか無い。大丈夫、絶対に忘れられるから。今だけは泣いてしまおう。
「あー、目が痛い・・・・・・」
泣き腫らした瞼が痛みを訴えるが、とりあえず今の時間を確認する。あの弁護士が来たのは昼過ぎだったが、今はもう日が落ちて暗くなっている。お腹も空いた。正確な時間が知りたくて携帯を見れば、ゾッとする数の不在着信と新着メールの数。結婚というワードがまずかったか、と思いながら今夜はコンビニで夜ご飯を買おうを考える。こんな日でも、私は冷静な判断が出来るのかと少し関心してしまう。
「どうせ雅も、すぐ忘れる」
そう思うとやはり涙が浮かぶが、くよくよもしていられないのだ。明日も私は笑顔でお客様に対応をしなくてはならないから。
(今日はほんの少しだけ、贅沢をしてしまおう)
そう考えながらコンビニへ向かえば、美味しそうな物が並んでいる。いつもと変わらない日常に、少しだけ胸が晴れる。
『わぁー、もうクリスマスの時期かー』
『今年は絶対、雪の降る場所に行ってホワイトクリスマスにしよう』
『北海道とか?』
『国内も良いが、折角なら国外にしよう』
『うわ、流石ボンボン』
『なんだと?』
街はイルミネーションとクリスマスカラーで彩られていて、ふと雅との思い出が蘇る。今年は海外に行くって言っていたのに、一人寂しくスーパーのシャンパンか。前を向こうとする度、雅を思い出して涙が浮かぶ。どうして、私は雅と向き合う事無く逃げてしまったのだろうか。向き合っていたら何か変わっていたかも、しれないのに。
「ただいまー」
返事が返って来る筈も無いが、こればかりは癖で抜けない。誰かに迷惑を掛けている訳でもないので、直そうともしていないが。だから、返事が返って来るのはおかしい。
「おかえり、唯花」
照明のついていない真っ暗な部屋から、にこやかな笑みを浮かべて雅がこちらへ歩いてくる。合鍵は大家さんにしか渡しておらず、コンビニへ行く時も鍵を掛けた。なのに、どうして?
「唯花、結婚するのか?誰と?」
「あんたに関係ない」
私はどうしても逃げたいらしく、雅の目を見て話せないし本心も言えない。そんな自分が嫌になってしまうが、ここは突き放したほうが身の為と保身に走ってしまう。
「ねぇ、唯花。誰かに何か言われたんだろょ?だからだよな?」
「それもあるけど、私あなたに飽きちゃった。お金持ちって面倒なのね、今回よく分かったわ」
「唯花、そんなに俺を怒らせたいか」
精一杯嘘を吐いて、虚勢を張って、冷静を装うので限界だった。先程から空気が冷たく、肌もピリピリする。これはきっと冬のせいだけじゃない。鼻先に居る雅が、本気で怒っているのだろう。今までとは全く違う、怒りに満ちた表情。私は一体どうすれば良いのだろう。
「ふん、さっさと出て行ってよ。いい加減不法侵入で警察呼ぶわよ?」
「可哀想な唯花、しばらくは外に出られないな」
全く噛み合わない返事をした雅は、私を寝室へ連れて行き翌日の昼まで開放されなかった。確実に赤ん坊は出来ているだろうな。体力の限界から意識を手放し、次に気がついた時。私は鎖に繋がれ、全く知らない場所に居た。
「もう俺しか見れないぞ、唯花。お前が他の男と結婚するなんて言うから。俺に助けを求めないから。俺に弁解しないから。俺を拒み、振ろうとするから。だから唯花はこんな目にあうんだ。次生まれ変わった時は、もう少し賢くなるんだな。そうしたら俺も、もっと優しい対応をするかも、・・・・・・な」
そうか、私はそうすれば良かったのか。なんて斜め上の事を考えながら、私はまともに考える事を放棄していた。どうせこの先一人じゃ何も出来ないんだ。だったらもう何もかもどうでもいい。
「来世でもあなたと一緒なのね」
「当たり前だ」
雅が少し泣きそうな顔をして、私に抱きついた。