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作者: 冬野祭火

 人と人との距離は、離れてきているのだろうか。それとも、近づいているのだろうか。

 核家族化、放任主義の親、プロ任せの介護、セックスだけの関係、いじめを見て見ぬふりをする教師。人間の距離は、離れてしまっているようにもみえる。

一方、インターネットの発達、携帯端末の高性能化によって、人との連絡の取りやすさは異常ともいえる程の発達を遂げた。

 休日でも会社の人間から溢れるほどメールの山が届く。浮気しようと女に声をかけると、妻から電話が掛かってくる。ネット上で全く見知らぬ人間と議論に白熱する。人間の関係は距離を超えたようにも見える。

 社会が変わり、道具が変わり。それでも、心の距離は変わっていないように思う。人に抱く感情はいつの時代も変わらない。距離も関係なければ、連絡の取りやすさも関係ない。相手が魅力的ならば……。

 ――見知らぬ人間と、恋に落ちることだって、ある。


 私がユイとやりとりをし始めたのは、丁度一週間前のこと。ソーシャルネットワークサービスという、いわばネット上での集会所のような場所で出会った。私が登録していたサイト『エバー』では、趣味ごとに誰でも作ることの可能なコミュニティを形成し、話題ごとにやりとりをする。気の合う者がいれば、お互いの合意の元、個人的な連絡を取るも出来る。携帯の機能も満足に使いこなせず、PCを全く使わない仕事をしている私だが、簡単に登録をすることが出来る程、分かりやすいサイトだ。

 

 私が登録をしたコミュニティは、内緒の恋、である。主に既に家庭を築いているものが、不貞の恋愛をしようと集まる場所だ。私にも、妻子がいた。退屈な日常に刺激が欲しかった。

 ユイの投稿は、すぐに私の目を引いた。プロフィールの写真が、まるでモデルのように可愛い。ユイのプロフィールページに行くと、数枚の写真を見ることが出来るのだが、どれもハリウッド女優も顔負けの抜群のスタイルである。

 「20歳の短大生です♪しっかりして落ち着いた男の人が好きなのに、回りの男は全然ダメ。誰か素敵なおじ様、私とメールしませんか?」絵文字で装飾されたメッセージの隣で、ユイがピースをした写真が掲載されている。

 私はすぐにユイにメッセージを送った。

 「46歳の会社員のタカシです。俺みたいなおじさんじゃ、ダメかな」

 少し恥ずかしい気持ちになったが、もしこんな可愛い子と付き合えるなら、と思うと自然と送信ボタンをクリックしていた。

 返信はすぐに来た。

 「メッセージありがと♪でもこのサイト、有料だから、ここに連絡ちょーだい♪私のブログだよ。恥ずかしいけど、貴方はカッコいいから、見られてもいいかな♪」

 メッセージとともに、ウェブサイトのURLが送られてきた。一体どんなことが書かれているのだろう。私は緊張してウェブページを開いた。

 ユイと思しき女の子が、色々な商品を試してみる、という趣旨のブログが開かれた。記事には、必ず生足や指、唇などが写った画像が掲載されている。どの記事を見ても面白く感じる。今時の女の子の生活を盗み見ているような気になって、興奮してしまう。私は、メッセージ、と書かれたボタンを押した。

 「ユイへ。ブログ、面白いね。どの写真を見ても綺麗だ。ユイは、今何してるの」

 しばらくして、返信が来た。

 「アドセンスクリックお願いします」

 私のようなネットに疎い親父には、意味が良く分からなかったが、可愛いユイのお願いだ、聞いてやろうじゃないか。

今でも私は、毎日ユイのブログをチェックしては、手あたり次第に、ページ画面をクリックしている。

 

 


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