ナナ
その昔、200年ほど前まで不可思議な力や人間以外の種族を魔のものとし、それらを排除することに誰も疑問をいだいていなかった時代がありました。
暗黒期ともよばれ、その排他行為は見るに耐えぬ程の凄まじさだったと
ある時、その処刑場から黒い靄のようなものが発生し、やがてそれは空に上り禍々しい暗雲をよんだのです
そして暗雲は黒い雨を十月十日降らせ続けました
田畑は枯れ、多くの民が死に飢饉に苦しめられました
問題はそれだけではなくその雨をうけた石や土塊、羽虫の一部が意思を持ち凶悪化したのです
最初のうちは統率力のないそれらを各国々のもつ兵力で押さえることもできましたが、黒い雨が降り始め最後の十月十日目にそれは産まれました
いままでのどの個体よりずる賢く力を持ったモノ
そしてその個体が産まれてから他の個体にも変化がおきました。人の形に近いモノや頭脳をもったものなど進化を遂げたのです
私たちはそれを魔族と呼びそれを束ねる者を魔王としました。
そして神は私たちにそれらに対向する、魔力を与えてくださった
しかし魔族らは強力で数多の犠牲を出しながら国を守って来ましたがそれもいつか限界が来る。
そんなとき御告げがありました
魔のものを打ち倒す勇者を呼び、かの者を支え魔を打ち払え、と
「どうか私達を、民をお助けください!我らにできることならばなんでも致します!勇者様が事を成してくださったあかつきにはしっかりと謝礼をし、皆様がいた時間にお帰しすることもできます!どうかっ!」
謝礼、もといた時間に戻れる。そして勇者という立場。
ちらりと他の顔を見れば目が輝いていた。
「あの!やります、この世界の人が苦しんでいるんだから!俺は須藤佑都です」
ヒーローに憧れた夢見がちな子供
「私もやるわ!謝礼はたっぷりもらうからねっ!私は梶原鞠よ」
目の前のエサにつられた強欲な子供
「うん。面白そうだ。まあ見たところテクノロジーという観点に置いては僕達の世界のほうが進んでいるようですし、此方にない知識を使えばそう難しくないでしょう。僕も乗りますよ。胡凪彰太です」
自らの力を信じて疑わない傲慢な子供
「わ、わたしも。皆がやるなら・・・えっと、篠目胡桃、です。」
自分の意思さえない優柔不断な子供
こんなメンバーで何を救うというのか
さて、ずっと黙っていた俺に全ての目が向いた
あちらで培った虚弱優等生モードへときりかえる
「華紅夜翡翠といいます。すいませんが、わたしは体があまり強くありませんし皆さんとは別行動を取ろうとおもいます。足を引っ張ってしまってはもともこもありません。わたしはどうにか市井で療養しながら知識をつけようとおもいます。戦えないのに王様の元でお世話になるのも申し訳ないですから」
ここで伏し目がちに微笑むのがポイントだ。
あちらではよくつまらない授業を抜け出すために使っていたので、同じクラスである四人も疑わないだろうし、城に滞在するわけではないので王もうるさく言えないだろう
「ユウト様。マリ様。ショータ様。クルミ様そしてヒスイ様ですね。ヒスイ様は無理をなさらないでください。幸い四人の方は戦ってくださる。体が強くないのでしたらしょうがないですから」
そういって笑った王の目にはやくたたずへの侮蔑と嘲笑が写っており、そのあとはまるでおいやられるかのように騎士に促され城をおいだされたのである