ロク
人間は、自分勝手で強欲で自分達に都合の悪いものは見てみぬふりのできる生き物。これは身に染みて解っている
その中でも他人を踏みつけ真実をねじ曲げ全てを自分の思うがままにしたいという強欲な思想をもつ輩がいる
そんな輩は大概時間がたつにつれて力が足りなく実現不可だと気付いたならばそのままその欲望を何かに変えて発散したりそこそこの悪事をはたらいて終わるかだろう
だが厄介なのはそんな性根でその欲望を奮うだけの力や権力を持っている者だ
その類いの者は持ち得る全てを、時には他人を自分の欲望を満たすために利用する
そしてこの目の前の男もその類いの者だろうと己のカンが告げた
「おお!我が国を救って下さる勇者殿!あの言い伝えは真であった!」
まるで舞台上にでもいるかのように大袈裟に男は腕を広げ感動にうち震えて見せた
「ええっ!本当にようございましたな、
王よ!これで我がエラム王国は救われることでしょう!」
神官服の男もまた、強く同調した
「あ、あの・・・ここはいったい?」
そんな様子におずおずと一人が声をかけた。流石に急に見知らぬ場所にいるという訳のわからない状況に疑問を覚えたらしい。
「この倒れてる人たちはなんなんだ!?勇者ってなんのことだよ!」
「それに私達は学校にいたはずよ!なんなのよここは!」
「そもそもどうやってこんな場所に?日本・・・ではなさそうですが」
一人が声をかけたことで他の奴等も我にかえったのか疑問を投げ掛けた
「ああ、申し訳ありません。勇者様がたに説明するのが先でしたな。私の名はエピマネース・エクルルマン。このエラム王国の王であり、貴殿方を呼んだのは他でもない私なのです。」
目尻にシワをよせ人のよさそうな顔で笑う王に他の子供は少し方の力を抜いたように見えた
「と、説明の前にこの者らを別室へ。彼らは勇者様を喚ぶのに大層尽力した。しっかりと休ませよ。」
足元にぴくりともせず倒れるものを一瞥し、王は不安げな顔をした子供に声をかけた
「心配いりませぬ勇者様。あのものらは力を使い疲れ気をうしなったのです。国を守るためにこの儀式に自ら志願した言わば英雄。手厚く看病致しますゆえ」
エクルルマンの声に脇にまるで銅像のように微動だにせず控えていた騎士達がローブのものを連れていく。
そしてその言葉に俺以外はほっとしたような顔をした。それを疑わないのはやはり安全で平和ボケした国の生まれ故の弊害かもしれない
(やはり、信用ならないな)
そんな子供達、といっても今は同い年か・・・のものを横目にそっとため息をついた
人間でもなんでも命あるものには少なからず力がある。魔力といってもいいかもしれないそれは、身体中を巡り絶えず循環する血液のようなもの
あのローブのものには力の流れを感じなかった。力の流れは生命力。それがないということは命そのものが失われているということだ。
(おそらく、このコードをつかったことで力を枯渇したんだろう。そしてあいつがそれに気が付かない筈がない。騎士もそれを指摘しないということは全て予定通りのシナリオか)
一連のやり取りは自分達は優しく、害はないというポーズだろう
放課後最後まで残っていた人間がたまたま喚ばれた。クラスが一緒なだけで馴れ合った記憶もない。おそらくランダムに同じ空間にいたものが喚ばれたのだろう
そして、王による説明が始まったのである