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この世界に産まれてから17年


どうやらここは、あの世界とは違う世界らしい。パラレルワールドか、そもそも異なった軸なのかここには妖精もいなければ亜人そのものが実在せず、夢物語や空想としてあるだけだ


小さな島国に産まれ、世界規模でみれば戦争もあるが武力そのものを捨てたこの国には正直遠い話だ


しかし、人間のいう神は信仰する人間を余程想っているのか


処刑時に聞いた己に罰を与える。そんな言葉をしっかりと護ったらしい


人間に生まれる。


それは己にとっては最も屈辱的な罰であった


光の加減で緑がかったような髪。まあこれは本当にじっくり見なくてはわからない程度で親も正直気付いていない


しかし、問題だったのは左の瞳が前と同じ深緑だったことだ


俺は親に疎まれている


この瞳が気味が悪いから、というわけではなく


この左目が祖父の色を受け継いだと思っているからだ


両親はなかなか良い家の生まれだったらしく、お互いに許嫁がいたらしい


しかし幼馴染みだった二人は幼い頃から意識しあっていてどうにか結ばれようとしていたが、箱入り娘だった母と家の為に決められたように生きてきた父ではどうにかできるわけもなく


そんな二人を嘲笑うかのように引きはなそうと最も動いていたのは父方の祖父であったらしい


母の家に手を回したり、半ば軟禁状態にしてお互いを会わせないようにしたり外堀からじわじと埋めていくように暗躍していたとあっては憎むのもわからなくはない



祖父は北ヨーロッパのある国の血筋の人間だったらしく祖母とも政略結婚で、酷くしきたりに煩い人だったと聞いた


入婿だという負い目があったのかもしれない


ハーフであった父は黒目黒髪で、顔立ちが多少祖父に似ていたがそれでも日本人よりの顔立ちをしている。


結局最後まで関係を認めない両家に二人は駆け落ちをし、慎ましく家のことを忘れ幸せに暮らしていた


しかしそこで産まれたのが、俺だ


愛する我が子に憎い祖父の瞳


まだ未熟な愛情が、祖父への憎しみに塗り替えられるのに時間はかからなかった


もしかしたら、苦労しながらの生活にどこかであったのかもしれない。祖父のせいで、という行き場のない感情が俺に向いたのだ


父はちょっとしたことで手を上げ、母は素知らぬ顔。父と母は相変わらず仲がよくとても歪な生活だった


これも罰の一つなら人間の神とやらは余程暇なのかと笑えてくる


しかし、俺はこの目がただ祖父の遺伝ではないとなんとなく感じていた。


何故ならば俺の瞳はあまりにも前と同じ色を宿していたから


そして、器がかわっても一族の魂は変わらない。


この世界の森はあちらと違い、造られたような人間に支配されているような、意思そのものが気薄に感じられた。それでも小さくか細い悲鳴が聞こえていたから


だから、ただあるがまま生きてこの人の身に堕ちた己を憎みながら人に期待などせず朽ちるのを待つばかりと思っていきていたのに


そうもさせてはくれないらしい。



見覚えのある神官服と周りに倒れたローブを羽織った人間。無駄に豪華な玉座に偉そうに座りこちらを見下ろす男


目に優しくない黄金を使った調度品は光を反射し迷惑以外のなにものでもない


足元をみれば、未だ淡く光る魔方陣


ー・・・これはたしかハイマカム・コードといわれるものではなかっただろうか


もう、随分前に見た本の記憶を引っ張り出す


異なる地より異なる者を喚ぶ為の陣


大きな陣を描けば描く程に喚べる人数を増やすことができる


今描かれているのは部屋いっぱいの大きさ。周りには俺を含め5人


しかも次元を歪めるのだから魔力も必要。これが限界ギリギリの大きさだろう


そして、眉をひそめる。


ハイマカム・コード。血肉の陣ともよばれるこれは、生け贄が必要な名前の通り血生臭い魔法陣だ


生きたものの心の臓からあたたかいうちに血を抜き、その血で陣を描かれなければならない


此だけのものを描くのにどれ程のものを犠牲にしたのか


とりあえず何を言われても信用はできないと心の中で思い、目の前の人間が口を開くのを待った









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