始まりは罰ゲーム!?
「浪川由紀さん、俺と付き合ってくれませんか?」
目の前のイケメンは何をいっているのだろうか...。
由紀はいまの状況が理解できなかった。
***
ことの始まりは朝。
いつも通りの時間に登校した由紀は慣れた手つきで下駄箱の扉を開けた。
シューズを取ろうとした時、いつもとは違う物が手に触れた。
手に取ってみるとどうやら二つに折られたルーズリーフのようだ。
昨日落としたっけ?なんて思い開いてみる。
『話したいことがある。
放課後に裏庭の桜の木まで来てほしい。』
少し力のある、でも見苦しくはない男の字で書かれていた。
裏庭の桜の木とは我が校にて密かに人気な告白の聖地である。
そんなところへの呼び出しと言えば答えはひとつしかないだろう。
鈍いわけではない由紀は冷静にそう判断したあとどうすべきか考えた。
__よし、断ろう。
現在付き合っている人はいない。
そして好きな人もいない。
友人の中には告白されたらとりあえず付き合ってみればいいなんて子もいるが好きでもない人に自分の時間を使うのは面倒だ。
名前は書かれておらず相手はわからなかったがだれであろうと問題はないだろう。
そう思いルーズリーフを近くのゴミ箱へ捨て、さっさと自分の教室へ向かった。
いつも通り友人たちとあいさつを交わし自分の席に着く。
つまらない授業を受け、友人たちとくだらない会話をする。
変わらない日常ではあるが嫌いではない。
__授業を終え、友人達を見送る。
あたしは朝の手紙に答えるため残った。
一瞬すっぽかそうかと悩んだが流石に可哀想になったので向かうことにした。
桜の木の前にはだれもいない。
どうやら早く来てしまったらしい。
地面に腰を下ろし、携帯を弄る。
ふと目の前に影が差し、顔を上げた。
・・・そして冒頭に至る。
明るい茶髪にあたしも羨むような白い肌、甘いそのマスクをもつ彼は確か学校でもかなり人気な男子の1人だったような?
そんな彼がなぜあたしに告白を・・・
接点があったかなんて考えてみたがクラスも離れていて体育も合同ではなかったはずだ。
もう一度彼をよく見てみた。
...目が笑ってない?
一見穏やかな、少し恥じらった感じで彼のファンなんかイチコロなんじゃないかと思うのだが目だけが違う。
さりげなく周りを見てみると壁からチラチラと除く黒と金の2つの。友人だろうか?
......あぁ、罰ゲームか。
どういう基準で選ばれたのかはわからないが好きな人に告白というわけではなさそうだ。
ようやく納得したあたしは返事を考える。
罰ゲームとなれば告白するのが目的なのか交際することが目的なのか・・・。
また、交際が目的なら期間はどのくらいなのか。
YESをもらわなければいけないと駄目だったら断ったら彼はどうなるのか。
そんなことを悶々と考え、そしてなぜ本来なら被害者であるはずのあたしが悩まなければいけないのかということを思いだした。
「ごめんなさい。」
彼と付き合った場合に発するデメリットの方が多く付き合っていられないと判断した。
「そもそも名前も知らないし......。」
ポツリと溢した本音に目の前の男は穏やかな表情を崩し、目を見開いている。
後ろの頭も驚いたのか顔まで出ている。
・・・そこは最後まで隠れとけよ。
心の中で突っ込みつつそんな2人を見つめていると...
「へぇ、俺のこと知らないんだ?」
見たこともない笑顔でこちらを見ている。
・・・あれ?こんな笑い方してたっけ?
背中を汗が伝う
嫌な予感しかしない
「お前のこと気に入ったよ。絶対惚れさせてやる。覚悟しておけよ?」
・・・間違った返答をしてしまったらしい。
なぜか宣戦布告をされてしまった。
後ろの友人たちもポカンとしている。
「とりあえず、お前今日から彼女な?
あと俺の名前は一ノ瀬秀悟覚えとけよ。」
そう言って抱きしめられた。
拒否権はないらしい。
キャラが違うとか言いたいことはたくさんあるが言葉にならない。
・・・とりあえず、どうしてこうなった!!
こういう王道な恋愛物が結構好きです。