5・アイドルはクラスメート
なんであんなに赤くなるのよ…。
晩御飯を作っていた優愛はぼうっと考えていた。
「何、作ってんの?」
愁様がいきなり抱きついてきたので、優愛の頭の中はまたパニックになる。
「いきなり、抱きつかないでください!ドキドキするでしょ!」
「ドキドキする?なんで?」
いきおい余って本音を漏らしてしまった自分を、優愛は憎んだ。
「そ…そんな事…言ってませんから!」
「いや、確かに言った。なんで?」
彼の口元に微かな笑みが浮かぶ。優愛はこんなときでもドキドキしてしまった。
愁様のペースに巻き込まれちゃだめだ。そう思った優愛は彼の手を振り払いながら言った。
「何でもありません。私、行きますから」
そんな風に言い放つ優愛を、彼は後ろからギュっと抱きしめた。
「今はこのままがいいなぁ…」
彼のすねた顔に赤みがさす。優愛の胸は破裂しそうなほどに高鳴っていた。
はっと我に返り、彼の腕をすり抜けた。
「も…ういいでしょ。本当に行きますから」
そういい、優愛は自分の部屋に戻った。
その時、彼の顔がちらりと見えた。その表情には余裕の笑みが浮かんでいた。
その顔が頭から離れて、優愛は一晩中眠りにつくことができなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日、優愛が登校すると、クラスがざわめいているの気が付いた。
「おはよう。どうしたの?」
「おはよう!実はね、このクラスに転校生が来るんだって」
その時、優愛は嫌な予感がした。
その予感は見事に的中した。
「新しくこのクラスに入る、多田愁君だ。仲良くしてあげてくれ」
「よろしくお願いします。多田愁です」
その時優愛は、あの彼の笑みの意味に気づいたのだった。
読んでくれてありがとうございます。
続きもまだまだ書きます!