4・アイドルのおねだり
「お弁当渡しに来た」
手にはお弁当をぶらぶらさせている。口にはマスクをしている。変装のつもりだろうか?整った顔だちは隠せていないが…。
「ちょっと、何やってるんですか!?こんなとこに居たら人にばれる…」
そういった優愛の口を大きな手で塞いだ。
「声でかいよ。これじゃ、本当にばれるよ」
そんな彼の手を優愛は急いで振りのけた。
「す…すみません。えっと、お弁当…」
そんな優愛の言葉を彼は遮りながら言った。
「やだね。渡さないよ」
彼はお弁当を高く持ち上げた。背の高い彼に、背が低く短足の優愛が届く高さではない。
「何なんですか!?渡しに来たんじゃないんですか?」
意味が分からず、優愛は腹が立った。
「キスして」
「はっ!?」
言葉の意味がすぐには理解できなかった。
「キスしなきゃ、渡さない」
彼は目を閉じたまま、顔を優愛のほうに突き出した。
迷ったすえに、優愛は彼の頬にそっとキスをした。
途端に彼の頬が赤くなったのを見て、優愛はつぶやいた。
「な…しろって言ったじゃないですか!」
「本当にすると思ってなかったんだよ…バカ」
そんな意外な反応に、優愛もつられて赤くなってしまう。
「じゃあ、俺は行くからな!じゃ…じゃあな!」
甘酸っぱい空気を残したまま、彼は立ち去ってしまった。
読んでいただいて、ありがとうございます。
続きも書くので、読んでね^^