11・アイドルの初恋
「あのさ、これ何回目?」
荒い息づかいで愁様は怒ったように尋ねた。
優愛は、目の前に立ちはだかるジェットコースターを見上げた。
さっきは確か、10回目のジェットコースターに乗ったと思う。
優愛は後5回は乗りたかったが、彼の青ざめた顔を見て、少し焦った。
「大丈夫?少し休みますか?」
心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
途端に彼はニッと笑うと、優愛の手を引っ張る。
そして、ベンチに連れて行き、優愛にヒザ枕をさせた。
「あーこれなら、すぐに癒されるかも」
さらさらの髪の感触に胸が飛び跳ねる。
文句を言おうとしたけれど、彼があんまり心地良さそうにするので、優愛は何も言えなかった。
優愛の手を握りしめながら、彼は続けた。
「ねえ、優愛と僕が初めて会った日の事、覚えてる?実はね、僕らもっと昔に会ってたんだ」
…10年前…
「ねえ…遊ぼっ!!」
そう話しかけた彼女はきらきらした瞳を持った幼い女の子。
「君…誰?」
「私は紀藤優愛。君は?」
「ぼ…僕は多田愁…です」
名前を告げるだけで僕は真っ赤になる。そんな僕に彼女は笑いかける。
そして、一輪の花を差し出す。
「これはね、カーネーションって言うんだよ。花言葉は純粋な愛。おばあちゃんが言ってたんだ。あげる」
「あ…ありがとう」
おずおずと手を差し出す僕に彼女は頬にキスをした。
それが僕の初恋だった。
ねえ、知ってる?あの時は私の初恋でもあるんだよ。
そう思ったのはずっと後のことである。




