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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
悲月殺人事件
7/15

第六幕 ~屈する心~

 木更津一樹きさらづかずきは部屋にこもっていた。

体がひどくだるい。目は泣き腫らして真っ赤だった。

 何かを食べたいとも思わなかった。

ただこのままずっとここにいて、死んでしまいたいとさえ

思っていた。飢えて死んだって構わない。

 いや、むしろ死にたい。

こんな目にあわされるくらいならこのまま死んでしまいたい。

 一樹には友人たちに対する気持ちさえもうなかった。

と、ノックの音がその場に響いた。

 一樹はのろのろと頭を上げ、暗い気持ちで立ち上がる。

ノックの相手が誰なのかということは分かっていた。

 出たくないけれど、出るしかないのだろう。

しかし、一樹が開ける前に、扉は向こうから開いた。

 鍵をかけておいたはずだが、莉子か葉月にでも

合鍵を借りたのだろう。

 そこにいたのは、やっぱりあの警官、

大江川大五郎だったーー。


 連れて行かれる一樹を、仲間たちが痛ましげに

見ていた。止めたいけれど、止められないと分かっているので

何もできない。力がないことを心から悔やんでいた。

「大丈夫かしら、一樹……」

「一樹さん……」

(ごめん、桃ちゃん。俺たちじゃ、一樹に

何もできないよ。本当にごめん……)



 一樹は再び大五郎に詰問されていた。

一樹は一応はあそこにいた理由や、

何故血まみれの刃物を握っていた

のかの理由も話したのだけれど、

彼は案の定話を聞いてはくれず、

「お前がやったんだろう」の一点張りだった。

 一樹はすっかり落ち込んでいたので、

つい彼の口車に乗ってしまった。

「やったって言えば、俺の罪、本当に

軽減してくれるんですか?」

 桃香の泣きそうな顔が浮かんだが、

一樹はそれを打ち消して彼を見つめた。

 にやりと口元に笑みが浮かび、

大五郎はいいだろうと請け負った。

「俺がやりました。桃香も、

弥生さんも俺が殺しました……」

「いい子だ」

 大五郎がにやにやと小馬鹿にしたように笑う。

一樹は氷のような無表情で彼を睨むと、

何も言わずに部屋を退出した。

 大五郎もついてくる。

「一樹!! もう終わったの!?」

「この子が認めたよ。桃香ちゃんも、

弥生さんもこの子が殺したらしい」

「そんな!! 嘘だよね、一樹!!」

 千鶴が彼の胸元を掴んで揺さぶる。

一樹は黙って手を振り払うと、仲間たちから

逃げるかのようにそのまま歩き去ったーー。

すっかり諦めてしまった

一樹。彼は仲間たちとも

もはや話しません。

 次回は第三の殺人が

おきますので、

次のお話もよろしくお願いします。

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