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スケープゴート  作者: 時雨瑠奈
悲月殺人事件
4/15

第三幕 ~容疑者は恋人~

 木更津一樹きさらづかずきは、警察関係者の

大江川大五郎の尋問を受けていた。

 質問ではない。尋問だ。

明らかに、お前が犯人だろ、っていう顔だった。

 ギロリと冷たく睨んできて、正直一樹は怖かった。

「オレ、殺してません!!」

 一樹は思わず叫んだ。本当に犯人ではないのだから、

叫ばずにはいられなかった。一樹がやったという証拠は

一つもない。ただアリバイがなかっただけで、疑われる

のは彼としても不本意だった。

それに何より、容疑をかけられているのが、愛しい恋人、

神無月桃香かんなづきももかの殺人事件なのだから、

不本意というしかない。

「桃香はオレの恋人です!! 恋人を殺す訳がないでしょう!?」




 その頃、他の人達は。

「一樹さんが、桃香さんを殺す訳ありません。

あの人、ひどいです……」

 泣きじゃくる八乙女瑠美奈やおとめるみなを、

斎藤千鶴さいとうちづると北原大地がなぐさめていた。

 睦咲莉子むつさきりこは、何も言わないが、

同情を感じているらしいのは、しかめた眉でわかった。

 他の二人は、席を外している。

 一樹がいるであろう部屋をながめやり、

千鶴は一人、ためいきをつくのだったーー。




「恋人と仲たがいしたのかもしれないだろう? 仮定だが、君は彼女に

一方的に別れを告げられた。それで腹を立て、君は彼女を殺した」

 あくまで警官は彼を疑っていた。違うっ! と一樹が吼える。

 だが、それでも警官は考えを曲げなかった。

 俺は、ただ桃香たちと遊びに行っただけなのに。

ただ、楽しく過ごしたかっただけなのに。

 ようやく解放された一樹は、用意された部屋の

ベッドに倒れ込んだ。また明日も取り調べはあるらしい。

 地獄のようだった。殺してなんていないのに、

殺した殺したと言われると、本当に殺したと思いこみそうだった。

 そのくらい辛かった。もう、嘘でも殺しました、と

言ってしまいそうなくらい辛い。

「一樹さん……」

 気がつくと、瑠美奈がそこに立っていた。水の入ったグラスを

持っている。隣には、大地と千鶴もいた。

「ありがとう、瑠美奈ちゃん……」

 一樹は困ったように笑いながら、起き上って水を受け取った。

 一口飲んで、はあっ、と息をつく。

「大変でしたね、一樹さん。あの人はどうでも、私は

信じてますから!! 一樹さんのこと、信じています!!」

「俺も信じてるぜ!! 一樹が桃ちゃんを殺す訳ないからな!」

「あたしもだよっ!! 許せないよ、あの警官!!」

 一樹は心が和らいだ。信じてくれる人がいる。

 こんなに心強いことはなかった。

「ありがとう……皆……ありがとう……」

 一樹は嬉しくなり、安心して涙をこぼしたーー。



 それでも、次の日も、尋問は開始された。

 さすがに瑠美奈たちも怒ってしまい、

文句を言いに行ったけれど、言い負かされてしまった。

 さすがは警察関係者である。

 三人は文句を言いながらその部屋を離れた。

 尋問は五時間にわたっていた。

 一樹は水も食料も取ることは許されていない。

 メイドの葉月がやってきたが、今はいらないからと

追い出されてしまい、何も出すことはできなかった。

 六時間を切った頃だった。

「いい加減白状したらどうだね」

「やってもいないことを、白状なんてできません」

「今白状すれば、罪が軽減できるようにしてやってもいい。

 もう質問もしないぞ」

 一樹は黙り込んだ。この男は、取引を持ちかけている。

 一樹は考えさせてほしい、と言った。もう精神は極限状態

だった。いつもの彼なら即座に断っただろうが、何度も

尋問を繰り返すうちに、このまま罪を認めた方が楽に

なるかもしれない、そう思い始めていたーー。


仲間だけは一樹を信じています

ですが、一樹はだんだん尋問

されるうちに心に闇が巣くってしまいます。

一樹は取引に応じるのか!?

次回も楽しみにしてください。

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