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剣をふると花火があがるレイラ

作者: 北大路京介

レイラは、剣を振るたびに小さな花火が上がってしまう女性騎士だった。

ぱち、ぱち、と控えめな音。夜ならきれいだが、昼間だと少し間抜けに見える光。


そのせいで、彼女は戦場を嫌っていた。

敵に居場所を知らせてしまうし、何より「戦いが祝われているみたいで」好きになれなかった。


男の騎士たちはよく言った。

「勝てばいいだろ」

レイラはその言葉が苦手だった。勝ったあとに何が残るのか、誰も見ていない気がして。


だから彼女は、なるべく人と組まず、町はずれや森の見張りを引き受けていた。


ある日、夜の森で魔物が現れた。

逃げ遅れた子どもたちがいると聞き、レイラは迷わず走った。


剣を抜き、振る。

ぱち、と一つ。

ぱちぱち、と二つ。


小さな花火が、暗い森に灯る。


レイラは歯を食いしばった。

「見えるな……ごめんね」


けれど次の瞬間、子どもたちの声が聞こえた。

「空が光ってる!」

「こっちだよ、こっち!」


花火は、怖さを追い払う合図になっていた。


レイラは何度も剣を振った。

花火は道のようにつながり、森の奥まで続いていく。


魔物はやがて逃げ、子どもたちは無事に助かった。


帰り道、ひとりの子が言った。

「さっきの光、きれいだった」

レイラは少し困って、肩をすくめた。

「ただの失敗だよ」


でもその夜、誰もいない丘の上で、彼女はそっと剣を振った。

小さな花火が、静かな空に咲く。


レイラは思った。

この光は、勝つためじゃない。

終わったことを、ちゃんと終わったと知らせるためのものだ。


それなら――悪くない。


彼女は剣をおさめ、空を見上げた。

花火の残り香が、少しだけあたたかかった。


それ以来、人々は知っている。

夜の森で小さな光が瞬いたら、

そこには、ちゃんと誰かを守ろうとする騎士がいるのだと。

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― 新着の感想 ―
 目眩ましや威嚇にならずとも、子供たちを過度に怖がらせずに安全地帯に逃がすのには一役かいましたか。  誤爆で味方に火傷おわせてもいませんし、チートとまではいかずとも素敵な形での人助けだと思いました。 …
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