【第1話】夏休み、昼下がりの公園にて
うだるような暑さ。
けだるいセミの鳴き声。
熱気により蜃気楼のように歪む町の風景。
そんな中、公園の木陰に座り込む子どもたち。
大和
「あっつい! オレたち以外、誰も公園にいねーじゃん!」
蓮弥
「地面で目玉焼きが作れそうだもんな。みんな家の中に避難してるのさ」
咲良
「でも子供は外で元気に遊べって、ママが言うから…」
大和
「親が子供の時代とは違うんだよ。今は令和だぜ? 昔より地球は熱くなったんだ!温暖化ってやつ?」
真澄
「そうよね。家にこもってないで外で遊びなさいって言うのも分かるけど、この暑さじゃ参っちゃうわ」
大和
「まったく、子供は外で遊べって、”大人の都合”だよなー」
容赦の無い陽光が地表に降り注ぐ。
公園の遊具は熱を帯び、触ったら焼けてしまいそうなほど高温になっていた。
じっとりとした空気が木陰で休む子供たちの肌にまとわりつき、何もしてなくても体力を奪う。
真夏の昼下がり、時間はゆっくりと溶けていく。
何かを待っているようで、でも何も起こらない。
そんな夏休みの情景だった。
大和
「あ〜!それにしてもヒマだなー!夏休みって長いのにやることなさすぎ〜!」
蓮弥
「確かに退屈だ。夏休みの始めは嬉しかったが、休みがこうも長いと暇だな」
真澄
「そういや夏休みの宿題みんなやった?」
シーン
真澄
「自由研究やった人?」
シーン
蓮弥
「ふっ、夏休みが終わる直前にササッと片付ければいいのさ」
大和
「あ〜つまんねぇ! 何か起きね〜かな〜!」
真澄
「何かって?」
大和
「そうだな〜、たとえば、バトルとか?」
咲良
「おとこのこって、戦い好きだよね…」
蓮弥
「そういえばみんなは知ってるか?うちらの国、昔バトルで滅びかけたんだってな」
大和
「何それマジ? やべー!激アツ!映画みたいじゃん!」
真澄
「知ってる。昨日テレビで日本の戦争の特集やってたわ」
蓮弥
「なんだ、真澄も見てたのか」
咲良
「アジア太平洋戦争…」
大和
「それだ!それをテーマにしよう! みんなで調べて、夏休みの自由研究にしようぜ? 超インパクトあるもん!」
蓮弥
「ふっ、”共同研究”ってやつだな」
真澄
「良いわね! 日本が滅びかけた戦争を題材にするなんて研究のしがいがあるわ!」
咲良
「発表会の時、クラスのみんなビックリするかも…」
大和
「決まりだな! 自由研究のテーマは日本が滅びかけた戦争の話!早速、どうやって滅びかけたのか、今から図書館に行って調べようぜ!」
そうして大和たち一行は市営図書館に向かって歩き出した。
その頭上には巨大な夏の入道雲が空いっぱいに広がっている。
美しさよりも迫力を感じさせるその模様は、まるで何かを予感させるようだった。