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婚約披露

 戴冠から数日後、王宮は再び大きな祝宴の準備に沸き立っていた。


 今回は王国の未来を揺るがす発表――「星光の継承者」アリシアと、王国最強の魔導士レオンとの婚約披露である。


 広間の扉が開かれると同時に、アリシアとレオンは人々の前に姿を現した。


 アリシアは雪のように白いドレスに身を包み、その髪には戴冠の時に与えられた星光のティアラが輝いている。隣に立つレオンは漆黒の礼装に金糸を織り込み、その姿は凛々しくも威厳に満ちていた。


 会場は一瞬の静寂を経て、歓声に包まれる。

「……お似合いだ!」

「まさか夢のような組み合わせが現実になるとは!」

「国の未来は安泰だ!」


 その熱狂は、王宮の外で待つ群衆にまで響き渡っていた。


 ◇ ◇ ◇


 この瞬間に至るまでの道のりは決して容易ではなかった。


 レオンはもともと小領地を持つ伯爵家の嫡男にすぎなかった。幼少期から比類なき魔力と才覚を示し、王都の魔導学院に入学すると、その名は瞬く間に知れ渡った。


 戦術、魔法理論、実技――全てにおいて首席を譲らず、卒業時には「史上最年少の最高位魔導士」として王宮に仕えることになる。


 王国の要職を担い、幾度も国境の防衛や大規模な魔物討伐を成功させた功績が認められ、ついには国王から「公爵位」を賜り、若くして公爵家の当主へと押し上げられたのだ。


「……つまり、レオン様はずっと前から“王国の柱”であったということですね」


 アリシアがその経緯を知ったのは、戴冠から間もない日のことだった。彼女は驚愕のあまり言葉を失い、ただレオンを見つめた。


 レオンは柔らかく微笑み、彼女の手を取る。

「公爵の座など、どうでもよかった。ただ……何があっても守れる力が欲しかった。だからどんな高みでも登り詰めてやろうと思った」


 アリシアの胸が熱くなる。彼がどれほどの努力と覚悟を積み重ねてきたのか、痛いほど伝わってきた。


「……これからは私も一緒に戦い守ります。……どんなことがあっても」

「アリシア……ありがとう。」


 ◇ ◇ ◇


 国王が壇上に立ち、盛大に告げる。

「ここに宣言する! アリシア・フローレンスは、レオン・ヴァルト公爵と正式に婚約する!」


 その瞬間、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

「星光の継承者と最強の魔導士――まさに黄金の組み合わせだ!」

「これこそ王国の未来!」

「お二人に祝福を!」


 アリシアは頬を赤らめながらも、はっきりと胸を張る。


 隣ではレオンが誇らしげに彼女を見つめていた。

「アリシア……君は、世界で一番幸福な令嬢になるべき人だ。俺はそのために存在している」


 甘く真摯な言葉に、アリシアの瞳は潤む。

「……私、本当に……幸福です」


 こうして二人の婚約は国中の熱狂の中で発表され、アリシアはまさに「世界一幸福な令嬢」として、その名を刻むこととなった。


 ◇ ◇ ◇


 祝宴の夜、月明かりに照らされたバルコニーに二人は並んで立っていた。広間からは音楽と笑い声が漏れ、国中の人々の歓喜が夜空に響いている。


 アリシアは星々を仰ぎながら、静かに囁いた。

 「こんな日が来るなんて……夢みたいです」


 レオンは彼女の肩を抱き寄せる。

 「夢じゃない。これからも君の隣にいて、現実を幸せで満たしていく」


 その言葉に微笑み返し、アリシアは彼の胸に寄り添った。


 ――だが。


 その幸福の裏で、大陸の遥か彼方では不穏な影が動き出していた。

 古代の封印が揺らぎ、各地で未曾有の魔物が出没し始める。

 王国を超えた規模で、世界そのものを脅かす脅威が忍び寄っていたのだ。


 まだ誰も、その真実を知らない。

 ただ静かに、運命の歯車は回り始めていた。

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