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どうして『悪役令嬢』が登場しないんだ⁉  作者: 藍銅 紅(らんどう こう)@『前向き令嬢』2巻 電子書籍2月配信


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第26話 侯爵令嬢クラウディア⑫

 あ、あらあら~。

 わたくしが、ガツン! という前にミゲル殿下が叫びを上げてくださいましたわ!


 まあ、なんということでしょう。

 すばらしいですわね、ミゲル殿下!

 惚れるわ!

 なーんて、冗談ですけどね。


 まあ、本気で惚れたとしても、オルランド王太子殿下と義理の兄妹になるのは嫌ですし、わたくし健康上の理由で王太子妃は無理といっておりますからね。


 恋には落ちないですけど。

 頼りになりますわー、ミゲル殿下! もっとやれ~!


 もう、オルランド王太子殿下なんて廃嫡で、ミゲル殿下を王太子にしちゃえばいいんじゃない?

 それが、この国のためじゃない?


 この場にいる皆様の総意を聞いてみたいものですわね。

 絶対に、満場一致でミゲル殿下を選びますわよ。


 ええ、我がフェルナンデス侯爵家の全財産を賭けてもよろしくてよ!

 なーんて。


 さあ、せっかくミゲル殿下が声を上げてくださったのだから、わたくしも援護射撃をしなければなりませんわね、ふっふっふ。


「ああ、妄想……なのですね」


 ぼそっとした感を装いつつ、会場に声が響くように告げる。


「婚約をお断りした逆恨み……と思っておりましたけれど。そうですか、妄想なのですか……。どうりでこちらが誠実に対応をしても、話が通じないと……。妄想……。そうだったのですね……」


 妄想、妄想と繰り返してやる。

 一応ね、念のため。担ぐ神輿は軽いほうがいいっていう感じで、阿呆王子……失礼、オルランド殿下をそのまま王太子に据えて、操って……とか、考える野心家の高位貴族がでないように。

 単に阿呆なら担ぎ上げるのもいいかもだけど、妄想狂を御すのは大変よ、とね!

 さりげなーく言葉に含めておくの。

 ふふふ。

 ミゲル殿下、ナイスアシスト、ありがとうございます!


 ミゲル殿下も盛大に頷いた。


「ええ。おかしいのは兄です」


 素晴らしいわ、ミゲル殿下! おかしいと言い切った!


「何だとミゲル!」

「では、先日。父王と母にオルランド兄上が訴えた言葉をそのまま申し上げましょう」


 ミゲル殿下は、オルランド王太子殿下を睨みながら言った。


「『私とクラウディアの婚約が成り立たなければ、クラウディアを悪役令嬢として排することもできないんです! あいつを排除すれば、この私は愛があるしあわせな人生を約束されているというのに!』です」


 会場内がきょとんとした空気に包まれる。


「発言の意味が分からず、考えた末に、尋ねました。『……まず、フェルナンデス侯爵令嬢と婚約は結びたい。けれど、それは、一度、フェルナンデス侯爵令嬢を兄上の婚約者とした上で、彼女をなんらかの方法を持って排するため。そうすれば、兄上がしあわせな人生を送れると……いうことでしょうか?』と」


 うわあ……、ミゲル殿下。『原作』の知識なんてお持ちでないのに、よくもまあ、ここまでご理解したわねえ……。すごいわ。


「そうだっ! クラウディアを排せば、私とソニアはしあわせになる! 聖女のように可憐で麗しいソニアを、嫉妬心から苛め抜く、悪辣な女! そんなクラウディアからソニアを守り、そして、私たちは皆に祝福される! 素晴らしい展開だろう!」


『原作』の結末はおっしゃる通り。

 でも『原作』と『現実』を混同しないでいただきたいわ~。


 聖女のように可憐で麗しいソニアなのは『原作』です。

 今、目の前にいる現実のソニア嬢を聖女だなんて思っているのは王太子殿下だけ!


 そ・れ・に、わたくし、嫉妬もしてませんし、苛めもしてませんよ? なーんにもしていないわたくしを排除する。正当性など皆無よ。


 呆れて、誰も何も言えないのをいいことに、オルランド王太子殿下はブイブイ飛ばす。


「わたしとソニアの愛で我が国が発展する! 愛が世界に満ちる! 故に、クラウディアの追放は正当な権利の行使なのだ!」


 舞台の上でスポットライトをあてられた役者のごとく。

 堂々と、朗々と、語り遊ばしておりますし。

 その横では夢見る乙女のように、両手を組んでオルランド王太子殿下をキラキラした瞳で見つめるソニア嬢がいるけど。


 うわあ……。ドン引き。


 ミゲル殿下なんてすごーく苦々しいお顔ですよ……。

 会場の皆様も、完全に「ぽかーん」です。


「……妄想と思っておりましたが、それどころではない。狂人だったのですね」


 ミゲル殿下がぐっと拳を握りましたわよ! その拳が震えております。

 殴りたくとも殴れない……と言ったところでしょうか。


「これほどまでに愚かな者が、我が兄、我が国の王太子とは……」


 あー、身内が阿呆だと恥ずかしいですよねえ。わかります。うんうん。


 わたくしが頷きかけた瞬間。会場に国王陛下と王妃様が現れました。ナイスタイミングー!


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