第15話 王太子オルランド ⑤
ふはははは! 貴族学院を卒業する約半年間前、ようやくのことで『悪役令嬢』クラウディアが登場した!
しかも貴族学院にも通うだと!
ならば……。
私のすることは決まっている。
クラウディアと婚約を結び、そして、卒業パーティでの婚約破棄に断罪。
これで、途中経過がどうであれ、結果的に『原作』の通りになるはずだ!
早速、私は「フェルナンデス侯爵へクラウディアとの婚約を打診してほしいのです」と、父王と母に願いでた。
だが……。
父王も母も、全く乗り気ではない。
「以前から、オルランドはフェルナンデス侯爵令嬢のことを気にしていたようだが。二年もの長きにわたって、赤子のようになっていて、ベッドの上から離れられなかったご令嬢だ。学院に通えるようになったところで、健康上の問題は残っている。体調、体力を鑑みれば、王子妃教育を施すもの難しいであろうし、何よりも後継を得られるかどうかという点、はなはだ疑問だ」
後継などどうでもいい。
ソニアと子を成せばいいのだから!
「そうですよオルランド。あなたが気にしているようだったので、以前、フェルナンデス侯爵にはクラウディア嬢との婚約を打診はしました。ですが既にお断りをされていますし、断る理由も納得がいきます。王太子であるあなたの婚約者が病弱では後の王妃としての務めも果たすことができないでしょう。彼女は無理です」
だから、それもソニアで事足りる!
……ああもう、理解のない父王にも母にも、だんだんとイライラしてきた。
「クラウディアと婚約を結ばなければ、話が進まないんですよ!」
私がイライラとすればするほど、父王たちは困惑顔だ。
「……以前にもそのようなことを申していたな」
「だから! 私とクラウディアの婚約が成り立たなければ、クラウディアを悪役令嬢として排することもできないんです! あいつを排除すれば、この私は愛があるしあわせな人生を約束されているというのに!」
「あー……つまり兄上は」
訝しげな顔をしつつ、それまで黙ってわたしの話を聞いていた弟のミゲルが口を挟んできた。
「……まず、フェルナンデス侯爵令嬢と婚約は結びたい。けれど、それは、一度、フェルナンデス侯爵令嬢を兄上の婚約者とした上で、彼女をなんらかの方法を以て排するため。そうすれば、兄上がしあわせな人生を送れると……いうことでしょうか?」
おお! 素晴らしいなミゲル! 百点満点の解答ではないが、及第点だ。
「概ねその通りだ! 私は私の婚約者となったクラウディアを排し、愛する者としあわせになる!」
それが『原作』通りのストーリーだ。改変など許されない。
「……ええと、兄上の愛する者というのは、元平民で、なんとかという男爵家の庶子であるソニアとかいう娘のことでしょうか?」
「おお、よく知っているな!」
「学院では、兄上たちの様子は有名ですから……」
なんと! 貴族学院ではすでに、私とソニアの愛が生徒たちに知られているということか!
「ああ、そうだ! 私とソニアの美しい愛が更に素晴らしいものとなるために、必要なのは『悪役令嬢』を排することなのだ! 聖女のように可憐で麗しいソニアを、嫉妬心から苛め抜く、悪辣な女! そんなクラウディアからソニアを守り、そして、私たちは皆に祝福されるのだ……!」
『原作』のストーリーを思い浮かべて、その素晴らしさを私はこれでもかというほどに、父王と母とミゲルに話していった。




