第12話 侯爵令嬢クラウディア ④
と言っても、この世界に、高吸水性ポリマーや不織布なんてない。当然、便利な使い捨てオムツなんてない。
とすると……。油紙で防水紙を作って、布でオムツカバーを作って、それを組み合わせて作る……なら、できそう?
幸いにして、この世界、手紙や契約書、本なんかの紙製品はある。
だったら、油紙くらいすぐできそう。
だって、和紙に薄く亜麻仁油を塗って、乾燥させる程度でできるはずだし。耐久性はどうかなー。さすがに洗濯はできまい。
と、すると……。サンドイッチ的に、重ねる……のがいいかな。
えーと、まず、赤ちゃんのお尻とか足の間に、折りたたんだ布をあてる。
で、その布の外側には防水紙。
更に、その外側のオムツカバーで、オムツの布と防水紙を押さえる感じ。
できそうね。
ちょっと作ってみよう。試作、試作っと!
えーと、とりあえず赤ちゃん用の柔らかい布っていったら、ガーゼなんだけど。
ガーゼって、縫うの、難しいんだよね。水に晒して、乾燥させて、それからアイロンで形を整えてからじゃないと、型崩れするし。
ま、試作、試作!
ガーゼ、木綿、麻、シルク。いろんな布素材で作ってみましょ。
よし、まず今日は、使用人たちに言って、布を洗って、干してもらおう。
乾いたら、アイロンもかけてもらおう!
あ、アイロンはね、この世界にもあるのよ。
といっても、電気アイロンではなくて、小さい鉄製の鍋……フライパンみたいなやつね……の中に、熱した石炭を入れる。で、温まったら、その鍋の底を布に当てるっていう感じのだけどね。
扱いが、ちょっと大変。
侯爵令嬢が行う作業じゃないので、ここまでは使用人にお任せする。
で、アイロンをかけた布を、まずTの字的な感じに裁断する。
布の端の処理をして、Tシャツで言ったら腕が入る部分、両サイドにリボンをつける。
あー……、Tシャツというよりも、ニホンのふんどしに近いかしらこれ。
ま、いいか。
カボチャパンツタイプのおむつカバーも作ろうかな。
リボンの太さとか、布の長さとか、いろいろ工夫して、かわいい刺繍も施して、できたオムツを兄の赤ちゃんに使ってもらった。
で……。
「あ、あの、クラウディアお嬢様。このオムツ……、大人用も作れませんか……?」
ウチの侯爵家の女性使用人の皆さんが!
あ、あー! そっか!
女の人にはもちろん月のものがある。一日目とか、二日目とか、量が多いときは布をあてて、ベッドで寝るようにしているけど……。
四日目、五日目とか、出血量が少なくなったら、侍女もメイドも働いちゃうもんなー。
お仕着せのドレス、色は濃紺だから、万が一、出血でスカートが濡れても目立ちはしないけど……。
あれば、便利よね。
というか、わたくしが欲しいわ!
で、作りました!
コットンで作りました!
布ナプキン!
快適!
使い捨ての生理用紙ナプキンと違って、洗って何度も繰り返し使うことがメリットなんだけど、それよりも、下着につけて使えるように形や大きさに工夫したわ! ズレや漏れを気にせず昼のお仕事ができるし、寝ている間も安心……と、女性使用人の皆さんにも大好評!
……こうなると、更に一層、クオリティを追求したくなる。
……綿花の栽培から、したらどうかしら?
オーガニックコットン、作れるんじゃないかしら?
とすると、コットン栽培に適した土地を探して、専属の農夫を雇って……。
その辺は下の兄に任せるとして……。
はっ!
オーガニックコットンと言えば、化粧水を顔に叩く用のコットン!
化粧水を含ませて、肌に当てて……。
これがあれば、顔の保湿パックができる!
ほ、欲しい!
作れば売れる! はず!
これは儲かるわ!
金脈掘り当てた?
ひゃっほーいと、わたくしは瞳を欲で光らせて、下の兄と共に事業計画書を練っていった……。
……なのに。
「ねえ、クラウディア。健康を取り戻したようだし、貴族学院に通ってみたらどうかしら?」
お、お母様あああああああ!
「おお、そうだな! 学院に通えるだけの体力もすでにあるのではないか?」
お父様もおおおおおおおお!
「今から通うとしても……クラウディアは間もなく十八歳。半年かそこら程度しか通えないのでは?」
上の兄! ありがとううううう!
ええ、半年程度、通っても、学業的には無意味だから、通わなくてもいいよねー!
「学業は別に家庭教師でも問題はないでしょうけど。それよりも、同世代のご令嬢と交流して、お友達が出来たら楽しいのでは?」
義理姉えええええええ!
「そうだねえ、事業のほうも、しばらく新しい商品を開発しなくても十分なくらいだし。半年くらいなら、見聞を広めて、ついでにウチの商品の宣伝に、クラウディア、学院に通ってみたら?」
下の兄いいいいいい!
……ということで、この期に及んで貴族学院に通うことになってしまいました。
ああ。これも、物語の強制力ってやつ?
あああ、嫌だああああああ!




