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第8話

 「魔物化した子供の名前ってなんだっけ?」

 

 人の名前を覚えるのは何歳になっても苦手だ。

 学生の頃歴史の偉人を覚えるのが僕は苦手だった。暗記科目は常に赤点すれすれの学生時代だった気がする。


 「デフィズ君とヘルラージュちゃんだったような気がします」

 「ああ。そうだったね」


 流石は僕の後輩だ。 

 僕には備わっていない暗記能力を持っているようである。


 「じゃあ一括検索するなりして、この子達が一体どこに売られたのか調べようぜ」

 「今やってます」


 セルはそう言いながら獣人用の大きなキーボードを叩いていた。

 因みに僕の予想だと、この子達が売られたのは人体改造が大好きなマッドサイエンティストの元だ。

 これで犯人の手がかりが分かればいいのだが…。


 シアノは相変わらず無表情で虚空を見つめ、ルフォは緊張した面持ちでモニターを見つめるなか、セルの大きな指がキーボードのエンターキーを勢いよく叩いた。


 次の瞬間、数々の人名がリストから除外されていく。


 悠長にセルの検索する姿を眺めてると、僕たちの方へ振り返ってきた。


 「分かりましたよ」

 

 得意げなのか、少しばかりどや顔をしている僕の後輩。これは褒めて欲しいのだろうか?


 「すごいじゃん。で、一体何者だったの?」

 「ラノマイザーという人物ですね」

 「誰それ?」

 

 パソコンを弄っているセルに向かって僕は疑問を口にしたところ、彼女はげんなりとした表情で「知るわけないじゃないですか!私に聞かないでくださいよ!」といった。


 「ラノマイザーという人物は過去に何度も人身売買に関わっている形跡がありますね…」


 セルはそういいながらモニターに映ったリストをスクロールしていった。


 「どうやら今回が初めてじゃないみたいですし、警察の方に聞いてみたらどうですか?」


 確かにそうだな。

 警察のほうで話題になっているかもしれないし、もしかしたら貴重な手がかりをもっているかもしれない。


 「じゃあ、あいつに聞いてみるか…」 

 「あいつ…?」

 「僕、警察の方に何人か知り合いがいるんだよ。電話で今聞いてみるわ」

 「はぇ…そうなんですねぇ…」

 

 ルフォは感心したようにゆっくりと頷いた。

 大きな狐耳が緩慢な動きで上下に揺れていた。


 「あいつに借り作るの嫌なんだけどなぁ…」

 「つべこべ言わずに早く電話してください」


 僕の知り合いはがめつい奴らばっかりなのだ。

 

 スマートフォンを取り出した僕は、電話を起動し目的の番号をおした。

 数コールほど経過したのち、電話の向こう側からノイズ音が聞こえてきた。


 『なんの用だよエリアル?今仕事に追われてて忙しいんだ』


 僕の予想通り、不機嫌そうな声色の男が通話に出てきたではないか。

 よくわからないが、僕は同期の人間に嫌われる節がある。


 「すまんネア。少しだけ時間良いかな?聞きたいことがあるんだけど」

 『はぁ?面倒くせーな…』


 電話先の相手はいかにも不機嫌そうな態度であったが、僕は気にすることなく要件を伝える。


 「ラノマイザーっていう犯罪者の名前聞いたことある?」

 『ちょっとまってろ、今調べてる』

 

 キーボードの打鍵音数秒間聞こえてきたかと思いきや、ネアは驚いた声を上げた。


 『なんでこの男のことを調べてんだ?』

 「子供の人身売買に関わってて、それを僕らが調査してんの」

 『驚いたなぁ、こいつはその子供を買って闇オークションに出品してるみたいだぜ?しかもちょうど俺たちが調べてる組織の下っ端らしい。すごい偶然だな』

 

 なんということだ。

 あのチンピラたちが闇オークションと繋がっているのか?クソ皆殺しなんてしないで一人ぐらい残しておけばよかった…。

 そうすればいろいろ聞き出せたっていうのに…。


 後悔しても後の祭りである。


 「ネア!それはどこまで調べがついたんだ?というかお前たちは何を調べているんだ!!」

 『ぶ、部外者に事件の内容を教えるのはちょっと…』


 警察は頭がお堅い連中ばかりだがネアはチョロい。


 「バカ言え。僕もお前と同じ国に使えている組織なんだから言っても大丈夫だ」

 『そもそも部署が違うだろ!!』

 「今度なんかおごってやるから!」


 僕の一言によって電話越しの刑事ネアは逡巡しているようであった。


 『条件がある』

 「言ってみ」

 『近いうちに、闇オークションへ捜査が行われることになっている。多分「対魔特殊行動課」も呼ばれるだろう』

 「僕たちも行くなら話しても良いって言いたいわけだね?」

 『まぁそういうことだ。お前がいると戦闘面ではだいぶ楽になるからな』


 提案を受けた僕は、返答に迷ってしまう。

 

 「多分招集されるのは僕じゃないと思うよ?評議会の連中は【遊び人】の僕を行かせたがらないだろうし」

 『俺が直々に推薦すれば大丈夫だ。こう見えて俺は警察内部でもかなり顔が利くんだぜ?』 


 僕は後輩のセルに視線を送る。

 

 「まぁ良いんじゃないですか?私たちも着いていきますし」

 

 セルは予想通り乗り気みたいだった。


 「分かった。じゃあ僕たちも行くよ。その代わりネアが特課に申請しておけよ。僕を名指しするのも忘れずに」

 『分かってるって、それじゃあな、忙しいからそろそろ切るぜ』


 ネアはそういうと、一方的に通話を切ったのだった。


 とりあえず、今後の方針が決まったことだし良しとするべきだろう。

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