表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新種発見

「国内で、新しい人種が発見された」


 そういうよくわからない報告が、我が研究所に持ち込まれた。その他に、とくに情報がないので精査できない。


 しかしまぁ、真偽不明の情報だとしても、それは確かめる必要がある。とっとと行ってこい、とのありがたいお言葉をちょうだいし、『加山』という話をしたことのない研究員と私でバディを組まされ、放り出された。


 移動中の車内。重苦しい雰囲気が漂い、非常に居心地が悪い。私は免許を持っていないので、運転は加山に任せっきりなのも、非常に後ろめたい。


 おなじ研究対象を探す仲間なのだし、ここは打ち解けておかないと、後々やりづらい。なにより静かすぎて発狂しそうなので、積極的に話しかけてみることにした。


「はじめましてですね。今日はよろしくお願いします、加山さん」

「ん」


 会話が終わった。


 会話というのはキャッチボール。私がボールを投げて相手が受け取って「ナイピ☆」とか言って、投げ返してくることで成立するものである。


 しかも私は括弧や句読点を入れたら三十文字も喋っているのに、加山は三文字である。これは許されない。到底許されることではない。


「加山さんはなぜ、この仕事を引き受けたのですか? 私はもう、主任のお願い攻勢にあっちゃって、断りにくくなっ—」

「いつの間にか」


 会話が終わった。


 なんだこれは。なんだここは。なんだこの人は。許されざる。許されざる人ではないか。もはや会話することが罰ゲームだ。しかし、残念ながら私は沈黙に耐えられない。


 耐えられないなら、抗えば良い。


「そういえば、あの研究ってどうなったんでしょうね? 所内でも噂になった—」

「知らない」

「そうそう。所長の奥さんがまたおめでたらしいですよ。子沢山で良いこと—」

「わからない」

「粉塵爆はt」

「小麦粉か何かだ」


 ラーメンズかよ。


 そんなこんなで件の土地に着いた。ここで新種の人類? 新人類? を見かけたと報告があったのだが、見た限り、普通の山裾ののどかな村にしか見えない。


「ここで『新しい人種』が発見されたんですか?」

「ここは俺の生まれ故郷だが、そんな話は聞いたことがない」


 初めて私よりも長いセリフを言った。私は勝ったのだ。いやいや、勝ち負けではないし、ここが生まれ故郷?


「ここが加山さんの生まれ故郷なんですか。良いところじゃないですか」

「単なる田舎だよ」


 無愛想にボソッと吐き捨てる加山。


「あ。私、新種の人類、目星がついちゃいました。名称も」

「なんだそれは」

「ぼくねんじん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ