第4話 想定外の来客たち
店主さんの足元に転がる、一目で修復不可能と分かるテーブルと、ついさっきまでテーブルだった無数の木片。刃物を落とし、腰を抜かして放心してるお客さん。立ち尽くすあたしと紗蘭さんと、いつの間にか静まり返っていた店内。
そんな中、店主さんは元々鋭い眼光を殊更に尖らせる。何なら少し瞳孔開いてるし、眉間の皺も深くなって、ただでさえ三白眼のせいで悪めな人相が5割増しくらいで悪人寄りになっている。
あんな何人か殺してそうな顔をするくらいだ、かなり苛立っているはず。あれじゃ近くにいない方が吉だ。
紗蘭さんもそう判断したようで、あたしの手を引いて店主さんから少し距離を取った。
「エル先輩、お怪我はありませんか⁉ 申し訳ありません、すぐに気づけず……」
「怪我はないよ。それより、迷惑かけちゃってごめん」
「謝らないでください! 迷惑なんて思ってません。良かったです、怪我がないことは……」
「ありがとう。……あとは店主さんに任せた方がいいよね」
「任せたら任せたで、備品への被害が拡大しそうですが……そうしましょう。蔵市郎さんが能力を使うくらい怒ってる時は、最悪私たちが巻き添え食らいますし。すぐ備品壊すのやめてくださいって何度も言ってるのに……はぁ……」
……霊憑である店主さんが憑依させているのは、オオハヤブサの霊。脚力が大幅に上がる能力で、大概の物はその気になれば脚力だけで破壊できる。人体も例外じゃないから、巻き込まれたら大怪我の可能性もある。
このテーブルも、店主さんが割って入った時に蹴り壊したんだろう。この前だって難癖つけて代金を踏み倒そうとした迷惑な一見さんにキレて、こんな風にテーブルを壊したばかりだ。
あたしたちや常連さんたちは店主さんの能力を知っているから平静でいられるけど、そんなこと知らないあのお客さんはそうもいかない。
「なっ、何だお前……何の異憑だ⁉ ってか、あいつ客のこと蹴っ飛ばしたぞ! こんなことして許されると思ってんのか⁉」
放心状態から復活したお客さんは、紗蘭さんを指差しながら店主さんに食ってかかる。余程動揺しているのか、店主さんの左腕にある霊憑の憑印には気づいてない様子。
紗蘭さんは「私ですか?」みたいな感じで自分を指差して首傾げているけど、ついさっきまで元気にお客さんを蹴り飛ばしていた人がやることじゃないと思う。
そのどさくさに紛れて、お客さんは刃物を拾おうと手を伸ばす……が、先に刃物を足で押さえた店主さんによって阻止された。
「すんませんねェ、ウチのおてんば娘が。あいつァどうも手……じゃねェや、脚が出んのが早くて早くて。あんな血の気多くなっちまって、一体誰に似たんやら……」
煙を吐きながらやれやれと言いたげな店主さんに対し、当のおてんば娘さんは「そう育ててくれたのは蔵市郎さんですよ」とぼやきながら頬を膨らませている。
あたしからしても、その通りなわけで。紗蘭さんの蹴りだって、能力を活かした脚技が得意な店主さん直伝のものだし。
店主さんはテーブルを蹴り壊して、紗蘭さんに至ってはお客さん自身を蹴り飛ばして。血は繋がってないとしても、どう考えたって似た者親子だ。
「まァともかく……あいつのことは、あんま叱んないでやってくれませんかね。どうしても腹の虫が治まらねェってんなら、俺が相手しますよ。その代わり……」
そこで言葉を切った次の瞬間、店主さんはバキバキッと刃物を踏んで潰した。押さえていただけの足の力だけで。
能力とはいえ簡単にそんなことできるんだから、怒った店主さんはやっぱり怖い。普段は人相と口が悪いだけの、ただのおじさんなのに。
「次はお客さんがこうなっても責任取れませんが」
「ひぃ……!」
「何せウチの大事な従業員に、タチ悪く絡んでくれたんだからなァ。しかも女1人に、大の男が2人がかりでよ。ドスなんて大層なブツまで持ち込みやがって……てめェらこそ、こんなことして許されると思ってんのか? あァ?」
「す、す、すんませ……ひぃっ……」
刃物の破片をぐりぐりと踏みにじる足が、鉄の塊を砕いていく。まるで霜柱を踏んで壊すように、呆気なく。
そんな様を目の当たりにしてすっかり戦意喪失したお客さんは、店主さんから逃げようと尻餅ついた体勢で後ずさる。けど、激怒している店主さんがそれを許すはずもなく、後ずさった分だけ距離を詰めていく。
それを繰り返す内に、お客さんは壁際に追い詰められてしまった。その隣には、気絶した方のお客さんが倒れている。
「で? どうします? お望みなら、俺ァ気が済むまで付き合いますよ。……その気がねェってんなら、そこで伸びてるてめェのツレ引っ張って出て行きやがれ。今だったら初犯ってことで大目に見てやらァ」
「は、はぃ……ありがとうござ──」
「ただし」
その一言が言い終わるかどうかの内に、店主さんは壁を蹴り飛ばした。店に風穴開ける気なんじゃってくらいの勢いで、しかもお客さんの頭めがけて。
一瞬焦ったけど、実際に蹴ったのはお客さんの顔の真横だった。お客さんはガクガク震えているだけで怪我はないっぽいけど、壁は大きくヒビ入って、その破片がパラパラと床に落ちてきている。
「次にそのツラ見せた日にゃァ、五体満足でいられると思うなよ。いいな?」
「すんませんでしたぁっ‼」
悲鳴に近い声でそう叫んだお客さんは、気絶しているお客さんを半分引きずるように抱えつつダッシュで退店していった。成人男性を抱えている割には随分足速かったな。
お客さんたちが出て行った瞬間、店内はまた騒がしさを取り戻した。さっきまでの談笑を楽しむ騒がしさじゃなくて、店主さんと紗蘭さんに向けた歓声や拍手など……まるでスポーツの観客だ。
お酒の席で刃物……ドスって言ってたっけ。そんな物まで出てくる騒ぎになったっていうのに……アウトローな見た目の人たちだからか、それすら酒の肴になるらしい。
「はっ……俺の店を荒らそうなんざ100年早ェよ、害鳥共」
「何カッコつけてるんです。そんなことより、どうするんですか! このテーブルと壁のヒビ!」
「あ? んなモン買い替えるなり直すなりすりゃいいだろうが」
「そもそも壊さないでっていう話なんですけど?」
「あァあァ、煩ェなピヨピヨと。斬られそうなトコ助けてやったんだ、素直に礼の一つでも言ったらどうだ?」
「私だけでも対処できましたよ、あの程度! ……でも、ありがとうございました」
「おう。……で、そっちは怪我は?」
「あ、はい、あたしも無事です。ありがとうございます」
「ならいいが……毎度言ってんだろ、こうなる前に俺か紗蘭を呼べって。この客やべェって思ったら対応すんな。お前の観察眼なら見分けぐらいつくだろ? 文句言われたら俺が対応してやっから。分かったな?」
「はい……ありがとうございます」
「んじゃ、面倒だが俺ァこの片付け──」
「あーーー‼」
店主さんがドスの残骸に手を伸ばした瞬間、紗蘭さんが突然店中の人が振り向くレベルの大声を張り上げる。
ちょうど緊張の糸が解れたところだったあたしは驚いてひっくり返りかけたし、店主さんは顔を顰めながらタバコを噛み潰した。
ウエストポーチから取り出した携帯灰皿にタバコを突っ込みながら、店主さんは紗蘭さんへと振り返る。
「うるっせェな! 今度は何だってんだ!」
「お金! あの人たち、お会計してません!」
「あ? ……あァ、忘れてたわ」
「忘れてたじゃないですよ! ちょっと今から追いかけて代金貰ってきます。よく考えたら、メリケンサック使い損ねましたし」
「待てコラ馬鹿ヒヨコ。金のついでに命まで獲る気か、てめェは」
ポケットからメリケンサックを取り出しながら、店の入り口へ大股で向かいだす紗蘭さん。本当に飛び出して行きそうなその勢いに、あたしは紗蘭さんの腕にしがみつき、店主さんは軽く羽交い締めにして止めた。
店主さんはともかく、あたしは止めるには力及ばず引きずられそうになっているけど。
「でも、1発蹴っただけじゃ割に合いません! エル先輩にもあれだけ迷惑かけたのに!」
「どうせ大した額じゃねェんだ。元から金稼ぐためにやってる店じゃねェし、ウチのヒヨコ共は無事だったんだから今回はそれでいいんだよ。……それに、近頃この辺のサツがピリついてんの、知らねェわきゃねェだろ。こんな路地裏のド真ん中だろうが、でけェ騒ぎになりゃ嗅ぎつかれてもおかしくねェ。そうなったら、しょっぴかれんのはお前だぞ、紗蘭」
「そうだよ。あたしは大丈夫だから落ち着いて、ね?」
「……………………」
「分かったら、しばらく接客と提供代わってくれや。俺ァこれの片付けすっから」
「…………はい」
明らかに不承不承といった様子の紗蘭さんを、あたしたちは開放した。黒縁眼鏡の奥の金眼はまだ不満の色を孕んでいるけど、メリケンサックはしまってくれたから、納得はしてくれたはずだ。
ほんの少し荒い足音を立てながらカウンターに戻った紗蘭さんを見届けた店主さんは、新しいタバコを咥えて火を点けた。
その後、ドスだった物に再び手を伸ばし、持ち手の部分を拾い上げてまじまじと見つめだす。
(……そういえば、ゴリラの霊憑だって言ってたあのお客さん、何でこんなの持ってたんだろう……)
あたしの手首を締め上げた時のことを考えるに、店主さんと同じような身体能力が上昇するタイプの能力だろうけど、だったら護身用ってわけじゃないよね。能力で十分なわけだから。……それ以前に護身用だとしても物騒すぎるし、銃刀法知ってますかって話だけど。
ドスを持ち出したのって、前回もだっけ? よく思い出せないな……。あとで日記の確認しよう。
「……この辺じゃ見ねェ顔だから心配してなかったが、ドスに組の紋はねェな。どっかから流れてきたチンピラ……いってても半グレってトコか。ったく、どこでこんなん手に入れたんだか……」
「……店主さん、組の紋って?」
「あ? あァー……こっちの話だ、気にすんな」
「……にしても、あの人……刃物なんて必要だったのかな」
「ん?」
「いや、それ持ってた人、ゴリラの霊憑だって言ってたんです。実際、さっき手首を握られた時もかなり痛かったから、わざわざそんな物使う必要あったのかなって」
「お前……本当に怪我ねェんだろうな?」
「な、ないですってば」
「ならいいけどよォ。……異憑の能力ってよ、使った場所や物に能力の痕跡が残っちまうのは、お前も知ってんだろ?」
「はい、よくニュースで見かけます」
「そういう痕跡は憑渡師が嗅ぎつけるわけだが、サツだって当然それが分かってっから、何人も憑渡師抱えてやがる。下手に能力乱用して事件起こせば、簡単に身元割れてお縄になっちまうってわけだ。だからこういう凶器使って、せめて能力から身元バレねェようにしてんだとよ。んなことしたって結局指紋だの何だので突き止められるっつーのに、ああいうチンピラはそこまで頭回んねェんだろうなァ」
異憑の能力の痕跡に関しては、主に事件のニュースで聞く。現場そのものや遺留品から痕跡が見つかって、そこから容疑者が特定され逮捕に至った……という感じに。今だと指紋やDNA鑑定も捜査に利用されるけど、昔は憑渡師による能力の痕跡鑑定でしか犯人を特定できなかった。
……そういう背景もあって、その頃は「異憑の能力の痕跡がない=無憑が犯人」と断定されて、無憑の冤罪被害が多かったらしい。当時の警察も憑渡師たちも、異憑が能力を使わずに事件を起こすって考えはなかったんだろうし、陥れられる無憑のことなんてもっと考えなかったんだと思う。
異憑が何をしても無憑に罪をなすりつけ放題で、誰もそれを問題とすら思わない時代があったんだ、実際に。今じゃそんなことしたと発覚したら、ネットやニュースで大バッシングされて社会的に殺されすらするけど。
……それはそれとして。
「詳しいですね、店主さん。憑渡師じゃないのに」
「あァ、常連の中に憑渡師いるからな。よく聞かせてくれんだよ、その手の話」
「憑渡師……いましたっけ? それらしい人、見たことない気が……」
「パッと見じゃ憑渡師って分かんねェからなァ、あの人は。……さ、無駄話はここまでだ。……テーブルと椅子は端に寄せとくとして、ドスとガラス類片付けて……。はァー、かったりィことさせやがって、あんの害鳥共……」
「……あの、代わりに掃除やりましょうか?」
「気にすんな、危ねェモンあんだから。それよか紗蘭の方手伝ってくれや」
「……分かりました」
ぺこっと会釈だけしてカウンターに戻って、紗蘭さんに手伝いに来た旨を伝えると、お酒作りを頼まれた。
店主さんが戻るまで、接客も提供も紗蘭さんが引き受けてくれるという。……あの人たちに怖い思いさせられたこと、気にかけてくれているみたい。
2人が助けてくれたからもう平気だけど、すぐ気づなかったことを気に病んでいる顔色だったから、紗蘭さんの罪悪感を軽くするためにもお言葉に甘えることに。
あたしは接客が苦手な分、お酒作りをやることは多い。注文自体あまり多くないし、多分すぐに捌けるだろう。
(……そういえば、あんな風に助けてくれたこと、高校時代もあったな)
今みたいな一人暮らしは許されず、実家から逃げるにはなるべく遠い高校に通うしかなかった、あの時代。紗蘭さんと打ち解けてからは、実家に帰りたくないあまりブルームに通い詰めていた。
店主さんは「酒も飲めねェヒヨコが入り浸っていい店じゃねェ」と言いつつ時間が許す限りいさせてくれたし、ありがたいことに毎回タダでジュースをくれた。
あまりにも通いすぎて、一度だけ兄様が店に怒鳴り込んできたことがあった。無理やりあたしを連れ帰ろうとしたところ、紗蘭さんに何発も蹴り飛ばされていた気がする。途中から紗蘭さんを止めるのに必死だったから、よく見てなかったけど。
そんなこんなで今こうしてブルームで働いているけど、不思議と兄様はそれを知っているのに何も言ってこないし、店にも現れない。紗蘭さんに蹴られたことも大事にしなかったし。
実家の人間は全員プライドが高くて、当然というべきか兄様も例外じゃない。霊憑の女性にボコボコにされたと知られたくないとか、どうせ理由はそんなところだろう。
「……あ、終わっちゃった」
考え事しながらやってたら、溜まっていた注文はいつの間にか全て作り終えていた。
接客も紗蘭さんで事足りてるし、店主さんは……まだ掃除中みたい。
手持ち無沙汰になっちゃったし、今からでも店主さんのお手伝いしようかな……。
「しっかし、さっきの客バカだな〜。この店で揉め事起こすとか、雅瀾組が怖くないのかよ」
「雅瀾組ぃ? 何よそれ?」
「は⁉ お前、この町で夜職やってんのに雅瀾組知らないの⁉」
店主さんのところに行こうとした時、ふとそんな会話が耳に入る。近くのカウンター席で飲んでいる2人組の会話だ。
1人は常連の男性で、もう1人はかなり派手な見た目の女性。夜の仕事の人とそのお客さん……の態度じゃないな、どっちも。友人か恋人同士ってところか。
……それよりも、気になる単語が聞こえた。
(……そういえば、さっき店主さんが「組の紋」って言ってたな。雅瀾組……何かの組織の名前だよね、多分。組ってついてるけど、関係あるのかな……)
水切りしていたグラスと布巾を手に取って、グラスを拭いているように見せつつ、2人組の会話に耳をそばだてる。
店主さんには申し訳ないけど、どうしてもこのお客さんたちの話が気になってしまった。
「知らないわよ〜、そんなの。何かの会社?」
「ヤクザだよ、ヤクザ! ここら一帯をシマにしてる! だから、この店で騒ぎ起こして雅瀾組の耳に入ったらタダじゃ済まないぞ。あそこは構成員多くないけど、怒らせたら命はないって有名なんだぜ? 雅瀾組に頼らず問題片付けてるだけ、マスターはまだ慈悲ある方だよ。あ、雅瀾組といえば、ここってたまに雅瀾の組員が飲みに来るらしいぞ」
「やだ〜! そんな店で飲むの、怖いんだけど〜」
「大丈夫だって、店に迷惑かけなきゃいいんだし。確か……雅瀾組と仲良かった別の組がここらシマにしてた頃からの縁だかで、マスターは雅瀾の連中に気に入られてんだって。その組はもう壊滅したけど。それに雅瀾組のシマだからこそ、この辺りは治安いい方なんだよ。みんな雅瀾組が怖くて悪さできねぇから。でも最近その雅瀾組がピリついてるらしくて、そのせいで警察までピリついてきてるって──」
「あ〜はいはい、あんたそーゆー話好きよね〜。とにかく私はそんな危ない店なんかお断りよ。別のとこで飲み直したいから、支払いよろしく〜」
「え、俺奢るなんて言ってないけど⁉ ……あークソ! 先輩ごめん、お会計お願い!」
「へっ……⁉ あ、はい!」
出入口へ直行する女性に悪態つきながらレジへ小走りする常連さんを追って、あたしもグラスと布巾を置いてレジへ。常連さんはお会計を済ませて「ごちそうさまー!」と手を振りながら店を出て行った。
ドアが閉じるまで会釈で見送ったあと、さっきの会話を思い返してみる。
(雅瀾組……初めて聞いたな、そんな組織。ブルームってヤクザと付き合いあったんだ)
3年もバイトしてるのに教えてもらってないし、それらしい人なんて見かけたことない。ヤクザなんてすぐ分かりそうだけど……。いや、むしろ見分けつかないかも。アウトローな見た目の常連さんばっかりだから。
それはそれとして……前回もあった、警察のピリピリした雰囲気。雅瀾組というヤクザが、あれに関与していることが分かった。
手帳にメモしたいけど、バイト終わるまで我慢しなきゃ。記憶力には自信あるから、それまでに忘れたりはしない。
(えっと、この辺をシマ……縄張りみたいな意味だっけ。それにしてる雅瀾組っていうヤクザがいて、ブルームも付き合いがあって、そこが警察のピリピリに関係してるっぽくて……)
忘れないように頭の中で反芻していた時、カランカランとドアベルの音が店内に響く。
新しい来店客の気配に、考え事している内に手元に落ちていた視線をドアの方へ上げた。
「いらっしゃ──」
反射レベルまで染みついた来店時の挨拶だったけど、今回はそれを言い切ることなく息ごと止まってしまった。
入ってきたお客さんが、予想外の人たちだったから。
「…………は? え? エル、ちゃん……?」
「おや、エル。こんなところで会うとは、驚いたよ」
「エルさん、さっきぶり~! また会えたわね!」
鱓野さんと海老原さん、その後ろの真璃愛さん。
ブルームに一度も来たことないはずの3人を前に、あたしは完全に固まりきっていた。




