9 数学
ユーリスが復学する日、両親は涙目で馬車を見送った。
(さてこれからこの惑星の、いやこの国の状況を学びに行くわけだが、周囲に溶け込まないといかんな)
馬車は半日ほどで学校に到着し、私は校長室を目指した。
(彼女がもっていた学校案内に地図が出ていて助かった、復学したとはいえ、校長室はどこですの?などと聞くのはいかにもおかしい)
私は地図を片手に校長室に向かったが、周囲からジロジロと見られている感触があった。
それどころかクスクスと笑い声をあげるものまでいた。
「校長先生、入ります」
「おぉユーリス君、復学してくれて嬉しいよ、さっそく部屋に荷物を預けてフーリエ先生の授業に出たまえ」
そう言われて部屋の鍵を渡され、宿舎に向かう部屋番号の前で自室かどうか確認して中に入る。
「これは・・・どういいうことですの?」
自室には水がぶち撒かれ、ベッドまで水びたしである。
(なるほどな、これはイジメってやつだな、どういう理由化は知らんが、ユーリスはイジメにあっていた、それが嫌で休学し、引きこもりになった、両親も知っていたというわけだ)
「こざかしい真似をなさって、こういう場合は目立ちすぎること、他人とは違うことを目の敵にして行われるもの、やった方は器が小さくてらっしゃるわ」
(まずはこのずぶぬれをどうにかしないといけないな、ふむ)
私は首から下げたシップを使い、濡れていた部屋をきれいに乾燥させた。
「これでよしですわ、ええと、次はフーリエ先生の授業でしたわね、時間割は・・・」
私は時間割を見て教室へ向かった。
中に入ると授業中だった。
フーリエ先生らしき人物が声をかけてくる。
「ユーリスさん、復学喜ばしいですわ、席について探求を深めましょう。
帳面と筆記用具を取り出して授業に臨む。
(なんだこりゃあ、低レベルの数学だぞ、我が惑星では中学級初頭で卒業する内容だ、しかも方程式が使われていない)
私はそのようなことを考えて頭を痛めていると、先生からユーリスが名指しされた。
「ユーリスさん、お休みの間勉学を怠らなかったことを確かめます、この問題を解いてください」
教壇までおりて黒板に向かう。
(ふむ、やはり稚拙だな、ここはこう書き換えられる、で、こうと)
「先生、出来ました」
「何ですかこの呪文めいた回答は、教えたとおりにおやりなさい」
「先生、回答はあってますわよね、これはつまりより簡易で確実性の高い計算式が使えると言うことです」
私が指さすとフーリエ先生は教室を飛び出して行った、教室内はざわついている。
しばらくすると老齢の男性を連れて戻ってきた。
二人でユーリスの書いた計算式をみて何事か黒板に書きつけたり、相談している。
しばらくするとフーリエ先生が振り向きこう言った。
「正解です、しかもこれまでにない方程式での回答です」
教室にざわめきが起こった。