5 例の件
私は応接室に呼び出されていた。
ソファーに座ると目の前に両親がいる、
いつになく重い空気だ。
「例の件、結論は出たかね」
(出たな例の件、ここでうまいこと立ち回り内容を引き出す必要があるな)
「結論よりもまず状況の再確認をした方が良いかと思います」
(交渉や計画でよく使う手だ、再確認させることで相手の考えや、決めている事柄を左右させることができる)
「そうだな、その通りだ、まず我が家はガリル家に借金がある、額も大きく返せるものではない、次に借金の代わりに領地を半分差し出すこと、これは当家が没落することを意味する、最後にお前がガリル家に嫁ぐこと、先方はお前を気に入ったようでな、婚姻が決まれば全ての話しは無かったことになる」
「あなたの未来がかかっているのよ、嫁ぐのが嫌なら、領地の半分ぐらいは差し出しても良いの」
両親はユーリスのことを一番に考えているようだ。
これが「例のこと」なのだろ、引きこもりになった理由の一つだろうか。
私はもう少し情報を引き出すことにした。
「他の選択肢があるんじゃありませんこと?」
話しを進めて行くと、両親はうろたえ出した。
(うむ、まだ何かあるようだな、なんだか知らぬがそれにかけてみるか)
「お前も知っている通り、当事者同士の決闘で、話しをご破算にすることが出来る、つまりお前が戦う、理解しているだろう」
「お前は魔法適性が無いから、先方の御子息に勝てるわけもないわよ」
(なるほどこれは八歩塞がりにおもえるな、しかし私にもやりようがある)
「お父様、お母さま、ユーリスは決闘で臨みたいと思います、これがすべてを解決する方法です」
「おい、ユーリス無茶を言うでない、領地などくれてやってもいいのだぞ」
「そうよ、あなたの幸せのためにも借金を返し続けるのもいとわないわ」
(両親は人間が出来ているな、良い人々の様だ、余計に何とかしたくなってくる」
「まず決闘、これにかけてだめだったら領地か借金、可能性はすべて試してもよろしいかと」
「あなたがそう望むなら、私たちはもう何も言いません、好きになさい可能性はゼロではないわ」
「ありがとうございます、お父様、お母さま」
私はそう言って応接室を後にした。
「シップの付属機能を使う時が早々に来るとは思いませんでしたわ」
私は首から下げた縮小した宇宙船を撫でて、存在を確認した。