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32 乙女心は複雑


 音芽が戻ったようですわ。さすが銀河様。とても安堵しました。けれどすぐに目も当てられない程イチャイチャし始めた二人に呆れました。


 初めて銀河様のお家にお邪魔した際は銀河様と蒼様の秘密を知って大変驚きましたけど、彼の望みが叶ってよかったですわ。


 あの日、銀河様に打ち明けられました。




「オレの正体は蒼だよ。蒼は銀河で銀河は蒼なんだ」


 後頭部に手を回され頬の横で告げられました。内容がよく理解できなくて聞き返しました。


「えっ……?」


 彼は何を言っているの?


「だから……ね?」


 同意を求められました。どこか陰のある優しい笑顔で。



 突然リビングのドアが開いて入ってきた人物が声を上げました。


「兄貴! また?」


 金髪でダボッとしたカーキ色のズボン、白いTシャツ姿の男の子で手に荷物の入ったレジ袋を持っています。


「銀河様が……二人?」


 思わず呟いて二人を見比べていました。


 私の側にいる銀河様は片手で後頭部を掻いています。彼はにこやかに説明を始めました。


「あー。実は……ごめん。蒼とオレは双子じゃないんだ」


「は?」


 疑念が強くなり声が漏れてしまいました。いよいよよく分からなくなってきましたわ。


 銀河様は続けて言いました。


「双子なのはこいつ、奏多」


「奏多です。こんにちは」


 ドアの側に立つ銀河様そっくりの男の子に明るく挨拶され、釣られて会釈しました。確かに話し方が銀河様とは違いますわね。


「オレの本名は『蒼』。今更だけど騙しててごめん。最初は親の目を欺く為の変装だったんだ。この髪もウィッグだし、この耳にしてるやつもピアス風イヤリング。息抜きに外出する時、奏多の振りをしてた。色々面倒だったから」


「はい?」


 聞き返してしまいました。銀河様が真相を話してくれているのに、わたくしの理解はまだ追いついていません。銀河様は実は蒼様で……双子だったのは蒼様と奏多様という事ですの?


 考えを巡らせている間も銀河様の話を聞いていました。


「そうやって外に出て一時でも親の呪縛から解放された気分を味わった。君たちに会えて欲張ってしまった。親に従っている自分も欺いている自分も、どっちの自分も許してほしかったのかもしれない」


 やはり蒼様が銀河様を装っていた……という事のようですわね。…………。


「はいいいい? マジですの?」


 了承しがたくてつい荒ぶった声を出してしまいました。銀河様の皮を被った蒼様が笑いました。


「マジです。だから安心して?」


「~っ」


 飄々としている彼が憎らしくてこぶしを握りました。


「何で叩くの?」


 腕の中で暴れている私に彼は笑って聞いてきます。


「騙すなんて酷いですわっ!」


「ごめん。……オレはどっちの君も好きだよ」


 驚いて相手を凝視しました。


「私はっ……教えません!」


 言い切って勢いよく横を向きました。「狡いですわ!」と大げさにむくれて見せました。



「オレ、君の全部を知りたいと思ってる」


 神妙な声が気になって、ちらりと視線を戻しました。彼がニヤリと笑ってきます。


「己花さんも付き合ってもいない奴とイチャイチャするのは嫌だろう?」


「うっ」


 確かに、蒼様と銀河様が同じ人ならばわたくしたちの抱える問題にとっては朗報のように思えます。


「どっちもオレだから。安心して」


 にこやかに言ってのける彼に、いいように丸め込まれた気がしていました。




 そうして紆余曲折あった後、現在に至ります。


 イチャイチャしている銀河様と音芽を眺めながら思いました。ちょっとムカついていますけど、音芽が幸せそうなのでひとまず安堵しましたわ。


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